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誰も知らない彼女の話

※クロスオーバー



テスト期間中に友人から荷物が届いた。
梱包材に沈んでいたそれを慎重に掬い上げ、まじまじと観察する。
添えられていた可愛らしい手紙に目を通した私は、素敵なプレゼントをくれた友達へありがとうとメールを返し、にんまりとほくそ笑んだ。



【暇をもて余した彼女の遊び】


眼前で鋭い双眸をうろうろとさ迷わせる弦一郎へ湯飲みを差し出し、にっこりと笑む。
厚い唇を無理にひん曲げた弦一郎は、冷や汗をだらだらと流しながらありがとうと呟くと失敗作の笑顔を返してくれた。


他人に厳しく、自分にもっと厳しい。
ストイックが服を着ているような、真っ向勝負の皇帝、真田弦一郎が、こんなにも挙動不審に、内心で自問自答を繰り返している。
弦一郎の頭を悩ませている問題が私であると言う事実が、やけに心を擽った。


低く耳心地のよい弦一郎の声が私の名を呼ぶ。
なあに、と。
わざとらしく小首を傾げれば、弦一郎はぐっと唇を噛み、いや…、だの、そのだな…、だのと口ごもってしまった。
頭を抱え項垂れる弦一郎の横に座り、何を言うわけでもなく期待を込めた瞳で、鼻筋の通った端正な顔を見つめる。


「その、今日は、だな」
「うん」
「少し…いつもと、違うのだな」
「良かったー。弦一郎ならきっとわかってくれるって思ってたよ」
「む!?あ…、ああ。当たり前ではないか!…そうだな、違う、な…うむ」
「どう…かな?」
「どっ!?どう…とは…、あー、いや…き、気合いが入っている…のではないか?俺は良いと思うが…」


探り探り小出しに尋ねて来る眼が可愛らしくて、つい作り笑顔が崩れそうになった。


「あ、二人とも来たみたい」
「ま、待て!俺が出る!」
「いいよ弦一郎、座ってて」


ブザー音が響き、聞きなれた声がお邪魔しますと二つ上がる。
焦る弦一郎の制止をあしらい、私は玄関へ足を向けた。


「いらっしゃい幸村くん、柳くん」
「今日はお招きありが…」
「すまないな、世話にな…」


ぴしりと固まった幸村くんと、開眼して固まった柳くんにふふふと挑発的な表情を向けた。

遅くなったが、私の頭には一枚のパネルが装着されている。
とある出来事で得た友人から贈られた、冒頭の品である。
達筆な文字で、力強く、たった一言『イメチェンしました』と書かれたシンプルなパネルに釘付けされた視線。
私の背後では、追い掛けてきた弦一郎がすがるような眼差しを二人へ向けていた。


「…ふむ、髪を3ミリ切ったのか。良く似合っている。しかし欲を言えば、2.48ミリに押さえた方が今日の服装には合っていただろうな」
「ああ、コンタクトの色を変えたんだね。前より自然なブラウンだけど、俺はもう少し黒に近い方が好みだよ」


してやったりと言わんばかりの二人に溜め息を吐いて諸手を挙げる。
参りましたの降参ポーズに、幸村くんと柳くんは顔を見合わせて頷き合った。



(いたずら完了!)

「弦一郎、拗ねないでよ」
「拗ねてなどおらんわ!」
「私が悪かったって」
「…悪いのはお前ではない。些細な変化に気づくことができなかった、己の未熟さを悔いているだけだ」
「毎日顔を合わせていれば、気付かなくとも無理はないさ」
「そうそう。真田の前ではコンタクトしないんだから、判らなくても仕方ないよ」
「それでもだ!!許嫁なのだぞ!?俺が一番に判らねば…、誰でもない、夫となる俺がわかってやらねばならんだろう!」
「弦一郎…」

「ときめいてるとこ悪いんだけど、おかわり」
「すまないが、此方にもおかわりをいただけるかな」

因幡では

BLはあんまり妄想しないんですが、あえて推すならソウメイ×ジョージが好きです。



気付いたら佐助と小十郎が揃ってた件について。
荻さんの「撫でて」が心臓をぶち抜いていきやがった。

ゆーたくんに説教する荻さんにもきゅんきゅんした。
ソウメイin荻さんはアブ恋の小野瀬さんっぽかった。

とどのつまり、森川さんが大好きです。
小十郎が恋しくなってきたな…

誰も知らない彼女の話

ぎゅっサバ
※時間軸が迷子





弦一郎と幸村くんに合宿の手伝いを任された私は、なぜか今、尋常じゃない揺れに目を回しながら船室のベッドへしがみついていた。

きゃあと可愛い声を上げたのは小日向つぐみちゃんで、つぐみちゃんを宥めて落ち着かせているのは辻本彩夏ちゃんだ。
二人はこれから南の島にバカンスへ行く途中だったらしい。

船長さんの娘さんであるつぐみちゃん達と話が弾み、女の子同士でお泊まりしようと二人の部屋にお邪魔して、一時間もしないうちに船が揺れ出した。
窓の外は黒い雲に覆われ、遠くにも近くにも蒼白い光が閃き、雷鳴が轟く。

これはちょっとヤバイかもしれない、と。
三半規管が不味いことになり始めた私の耳に、聞きなれた声と破壊音が同時に響く。


「無事か!!」
「わ、私は大丈夫!」


蹴破られたドアは再起不能だろうけれども。
空気を読んで口を噤んだ私を片手で抱え上げる弦一郎の横から、二人の男の子がつぐみちゃんと彩夏ちゃんへ手を差し伸べた。


「お前らも早く来い!!」
「グズグズするんじゃねえ!!」
「急げお前達!甲板まで走れ!!」


うっすと返事をした二人に引き摺られるように、つぐみちゃんと彩夏ちゃんは最小限の荷物を手にして部屋を後にする。


「げん、いち、ろ!」
「黙っていろ、舌を噛むぞ!」


私と荷物と言うハンデを物ともせず、弦一郎は長い廊下をひた走る。
ゆさゆさと揺さぶられ、私は堪らず弦一郎の首筋へしがみついた。

弦一郎から静電気のようなエフェクトが見えるのは、彼が【雷】を使っているからだろうか。

救命ボートへ辿り着き、沈没だけは免れたものの、大きな波に飲まれて私は意識を手放した。




【えまーじぇんしー!】

(…まぁ班分けはこんなもんで良いだろう。…そいつはどうするんだ?)
(彼女は真田の私物…生活必需品だから山側で良いんじゃないかな)
(アーン?)



誰も知らない彼女の話

※会話


「弦一郎お風呂空いたよ」
「ああ、今いこう…む」
「どうしたの?」
「…いや、甘い匂いだな。香でも使ったのか?」
「ちょ、近い、近いよ弦一郎」
「あ、ああ、すまん」


「これはトリートメントだよ」
「?」
「髪の手入れをする椿油」
「ほう…しかし、お前は手入れなど必要無いだろう」
「冬場は乾燥するからパサパサになって大変なんだよ。弦一郎も使ってみる?」
「俺が、か」
「お風呂上がったらつけてあげるよ」
「ふむ、では、一つ頼もうか」



「じゃあ座って」
「うむ」
「タオルドライした髪に馴染ませて、ドライヤーで乾かすだけ」
「む…ああ、この匂いだ。お前の髪の香りより濃いな」
「原液だから。では、始めます」
「うむ、来い!」


「弦一郎、げんいちろー」
「……っ!す、すまん、つい微睡んでしまった!」
「ドライヤー、気持ちよかった?」
「ああ、心地よかったぞ。俺は普段ドライヤーなど使わぬからな」
「髪の毛触ってみて、ベタベタしないでしょ」
「おお…油を塗ったにも関わらず、指通りがいい。お前と同じ香りもする」
「喜んでもらえてよかった」
「また、頼んでもいいだろうか?」
「もちろん!」
「今度は俺がお前の髪を乾かしてやろう」
「え、無理しなくていいよ」
「たわけ、髪を乾かすぐらい造作もないわ」
「じゃあ、お願いしようかな」
「楽しみにしていろ」
「はいはい」



【甘やかな世界のなかで】
(これが、日常)

誰も知らない彼女の話



配られたばかりの新しい教科書に自らの名を記しつつ、真田弦一郎はふと昔の出来事を思い出した。


真田がまだ小学生だった頃の話である。
いとしい少女が己の嘆願により許嫁となったばかりの時、真田は舞い上がっていた。
これより先の人生を、心から求めた相手と歩むことができる幸せ。
手に入れたそれを逃さぬよう、幼い真田は少ない知恵を絞って考えた。
考えて、考えて、思い付いた。
至極簡単な話である。
少女が真田の許嫁であると、周りに示せばよいのだ。


真田は早速少女の元へと向かった。
その手に彼の有名なマッキーを持って。



「弦一郎、そう怖い顔をするな」


赤也が怯えている。
そう苦笑した柳へ、真田は小さく唸り声を返した。
部室の隅でかたかたと震える後輩にすまんと謝り、教科書を鞄へとしまう。


「…昔の失態を思い出していたのだ」
「もしかしてあの子関連なんじゃない?」
「む、幸村、何故判った」
「真田が馬鹿をやらかすの、あの子の事以外に無いじゃないか」


からからと笑う幸村に眉間の皺を深め、真田は腕を組む。
聞きの体勢に入った部活仲間へ居心地の悪そうな視線を流すが、無言のまま先を促され、真田は観念したように重い口を開いた。


「あれが許嫁になった当初、俺は浮かれていてな」
「真田は今も浮かれてるじゃないか」
「む」
「話の腰を折るな精市。弦一郎、続けてくれ」
「……俺の名前を、な。書いたのだ」


涼しげな風がカーテンを揺らし、新緑の匂いがリビングを満たす。
真田は口内に溜まった唾液を飲み下し、大きなソファの上で小さな体を丸めて眠る少女を起こさぬよう、そっと近寄った。
すやすやと寝息を立てる少女の頬へ、真田はマジックで己の名を確りと書き記していく。
力加減を探るように真を書き、少女に傷をつけぬよう慎重な手付きで田を書いた。
弦、一、郎、と続ければ、小さな胸に幸福感が染み渡る。
全ての文字を書き終えた真田は、神事を終えた神官のごとく厳かに頷き、少女へと囁きかける。


「…お前は、俺の妻になるのだぞ。誰にも渡さん、何処にもやらん。俺の、俺だけのものだ」


許嫁の頬を飾る黒々とした文字を満足げに眺め、真田は少女の唇へゆっくりと己のそれを重ねた。


「真田副部長キスしたことあるんスか!?」
「…許嫁に接吻して何が悪い」
「…ぶっは、もうだめ!!頬っぺたに油性マジックで自分の名前とか…!子供だ!あはははは!!!」
「っ、そ、それでっ…ふふ、どう、したんだ?」
「どうもこうもあるか。母に散々叱られただけだ」


目を覚ました少女と共に、帰宅した母を迎えた真田は、呆れたように溜め息を吐いた母親から盛大な拳骨を賜る事となる。
大事な相手を物として扱うとは何事か、と。


「そっちか!!ひっ…くふ、ふっ…も、だめっ!!」
「くっ…ま、マジックで落書きしたことは不問なのか弦一郎…!!」
「いや、それは彼女に叱られた」
「結局怒られてる……っ!!」


腹を抱え笑い転がる幸村に唇を引き結び、真田は目を閉じた。
喋るつもりの無い話の続きを思い返し、唇の端を緩める。
頬の名前が消えて行く様を心底惜しんだ真田に、少女は困ったような笑顔で腕を出したのだ。
うっすらと傷跡の残る、真っ白な細い腕を。


「おい真田、彼女が来てるぞ」
「そうか、すぐに行く」


マジックをポケットへ捩じ込み、真田は腰を上げる。
笑いすぎた為流れた生理的な涙を拭う幸村と、一心に文字を綴る柳、羨ましげな視線を向ける赤也を残し扉を開ければ、そこには一人の少女が真田を待っていた。



「今日もお疲れさま、弦一郎」
「ああ」


真田は少女の手を握り、指を絡めて固く繋いだ。
力を込めれば簡単に壊れてしまうだろう、小さな手である。
羞恥に顔を赤らめる少女を眺め、真田はその長袖に覆われた腕を夢想する。

家についたら、久方ぶりに証を残そう。

無言でマジックを手にする真田に、少女は困ったような笑顔で笑ってくれるだろう。
制服の長袖を捲り、白い腕を出して、しょうがないなぁ、と柳眉を下げて。



【彼しか知らない彼女の話】
(持ち者には名前を書きましょう)
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