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庭球ss誰も知らない彼女の話


仲睦まじく寄り添う二つの影を眺め、柳蓮二は唇で薄らと笑んだ。
仲間内には決して見せない柔らかな雰囲気を纏う男の横で、少女が笑っている。
焼け焦げた心が燻り、黒い靄となって身体の隅々に溜まって行くような不快感に苛まれた。


「ではな蓮二、」
「ああ弦一郎、また明日」
「さようなら柳くん」
「ああ、さようなら」


また、と。
口に仕掛けた言葉は、音にならず夕焼けの空へ霧散する。
振り返りもしない二つの影に恨めしげな目線を投げ、柳は小さく息を漏らす。

また、明日。
君に会えるだろうか。


【測定不能】
(勝ち目の無い戦いに、足掻く術すら見付からない)

なんだかすごく

よくわからないが真田弦一郎副武将がだんだん愛しくなってきた。
愛情が沸き上がる内に全部出しちゃおう。
と言うわけで、blog内で【春の一人真田副武将祭】開催。

主に女主で、【誰も知らない彼女の話】を基本にネタが枯れるまでワッショイしていきます。

真田ワッショイ!

庭球ss誰も知らない彼女の話



うめく声に足を止め、耳を澄ませた。
トイレに起きた、午前零時頃の事だ。
隣の部屋から漏れ聞こえる、圧し殺すような小さな悲鳴に眉を垂らし、私は自室からキッチンへと進路を変える。

ミルクパンに牛乳を入れ、弱火で暖め、刻んだチョコレート入りのカップへ注ぐ。
マシュマロを添えたらレンジで温め、簡易ホットチョコレートの完成である。


お盆にスプーンとマグカップを乗せ、暗い廊下を進む。
襖に手をかけ、音がたたないよう室内へ滑り込む。
甘い匂いに気付いたのだろう、布団虫から頭が生えた。

何の用だ、と。
幾分涙声で素っ気なく言った弦一郎の枕元にお盆を置き、近くに腰を下ろす。
のたうつ内に乱れた硬質な髪を手櫛で梳けば、弦一郎は耐えるように目蓋を閉じて身体を丸める。


「ひざ、痛い?」
「痛くなど、ない」


背が伸びる証だぞ、と。
眉値を寄せたまま誇らしげに笑った弦一郎の眦に光る雫を、私は見なかったことにした。


「はい、これ」
「…もう歯磨きした」
「またすればいいよ。よく眠れるから、飲んで」


あったかいよ、と。
手渡したカップへ恐る恐る唇を付けた弦一郎は、一口飲んで小さく安堵の息を漏らす。


「甘いな」
「そうかな」
「む」


だが、美味い。
そう呟いた彼に微笑み、私は沸き上がる欠伸を噛み殺した。


空っぽになったカップを退かし、弦一郎へ布団をかける。
お腹がふくれて眠くなったのか、とろりと溶けた瞳が私を見る。


「おやすみなさい弦一郎」
「む、」


チョコレートとホットミルクの効果は抜群だなと思いながら立ち上がろうとした私の手首を掴み、弦一郎は「お前もここで寝ろ」と拗ねたような顔で言った。


「お布団、無いよ」
「一緒に入ればいい」


どうせ夫婦になるんだから、と弦一郎の布団へ引きずり込まれ、抱き枕にされる。
いかにも解ったような台詞だが、たぶん本人は意味を理解していないに違いない。
愛され体質な末っ子め、と軽く溜め息を吐いた。

彼はこれから、どんどん成長するだろう。
心も、身体も立派になって、大人になって行くのだろう。
寝息を立て始めた弦一郎の背を撫でる。


おおきくなあれと、願いを込めて



【彼女と彼の−5】
(…成長しすぎです)
(…何の話だ)
(弦一郎が私を私を無理矢理布団へ引きずり込んだ夜を思い出むぐっ)
(ばっ馬鹿者!いつの話をしているのだ、いつの!!)
(んー!!ん、んんー!!)
(真田、鼻と口一緒に塞いじゃダメだよ)
(手荒な真似は止せ弦一郎。…大丈夫か?)
(し、死ぬかと…)
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