※会話


「弦一郎お風呂空いたよ」
「ああ、今いこう…む」
「どうしたの?」
「…いや、甘い匂いだな。香でも使ったのか?」
「ちょ、近い、近いよ弦一郎」
「あ、ああ、すまん」


「これはトリートメントだよ」
「?」
「髪の手入れをする椿油」
「ほう…しかし、お前は手入れなど必要無いだろう」
「冬場は乾燥するからパサパサになって大変なんだよ。弦一郎も使ってみる?」
「俺が、か」
「お風呂上がったらつけてあげるよ」
「ふむ、では、一つ頼もうか」



「じゃあ座って」
「うむ」
「タオルドライした髪に馴染ませて、ドライヤーで乾かすだけ」
「む…ああ、この匂いだ。お前の髪の香りより濃いな」
「原液だから。では、始めます」
「うむ、来い!」


「弦一郎、げんいちろー」
「……っ!す、すまん、つい微睡んでしまった!」
「ドライヤー、気持ちよかった?」
「ああ、心地よかったぞ。俺は普段ドライヤーなど使わぬからな」
「髪の毛触ってみて、ベタベタしないでしょ」
「おお…油を塗ったにも関わらず、指通りがいい。お前と同じ香りもする」
「喜んでもらえてよかった」
「また、頼んでもいいだろうか?」
「もちろん!」
「今度は俺がお前の髪を乾かしてやろう」
「え、無理しなくていいよ」
「たわけ、髪を乾かすぐらい造作もないわ」
「じゃあ、お願いしようかな」
「楽しみにしていろ」
「はいはい」



【甘やかな世界のなかで】
(これが、日常)