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sss八雲



何も見えない。
力が入らない。
自分の身体が自分の物でないかのような異様な感覚に支配されている。
規則的に響く電子音がとても耳障りだ。
何もかもが白いこの部屋で両手に握り締めた大きな手だけが私の世界の全てだった。


ベットに横たわる姿はまるで眠っているようだ。
左胸に耳を付けた。
鼓動がある。
体温がある。
けれどもう起きあがらない。
微笑んで貰えない。
頭を撫でて貰うことも、もう二度と無い。
なんだか凄く息苦しかった。


「ありがとうって言いたかったんです」


引き取ってくれてありがとう。
育ててくれてありがとう。
紛れ込んだ異分子を、分け隔てなく愛してくれてありがとう。


時間だと声を掛けられた。
背に立つ青年へぼんやりと微笑み、私は世界を手放した。



【lost my …】
(世界が色を亡くした日)
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