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※小太→主→政小






主の滑らかな声に錆が混じる。小太郎はふと視線を投げた。麗らかな陽気の先にいるのは奥州の竜だ。つがいのように寄り添う二人から主へと目を向けた小太郎は、亡くしたはずの心がずきりと波打つのを感じた。

嗚呼この御方は、何という眼をするのだ。

独眼竜の右目を見る群青には、黒々とした激情が確かに燃え上がっている。身を裂くような悋気に焦がされ、喉を枯らし咽び泣いているのであろう主を影から見詰める度、小太郎は仄暗い悦びを知った。
いくら願おうと望もうと主の願いは叶わない。
主と右目の間にどんな経緯があったのか、小太郎は知らない。ただ一つ解るのは、昔に出来た亀裂は埋められなかったということだ。右目は鬼を捨て竜に還った。主の願いは叶わない。主の望みは叶わない。


傷ついたように伏せられた群青に愛おしさを覚え、小太郎は固く握り締められていた拳へそっと己の手を乗せる。手甲を取り払った小太郎の白い指が浮き上がった血管をなぞると、主の美麗なかんばせが幼子のようにくしゃりと歪んだ。黒絹のような髪がさらりと流れ、小太郎は己へと縋る主の背に腕を回した。赤い唇から零れる名前に腕の力を強くする。己ではない男の名を発する主に、小太郎もまた己の願いが叶うことはないのだと改めて思った。

貴方が此方を向いてくれれば、全てが丸く収まるのだ。忘れてしまえ。忘れてしまえ。右目のことなど、忘れてしまえ。

ぎちぎちと腕を絞める。
肺が圧迫され苦しいのは主であるはずなのに、小太郎は何故か己が首を絞められているような心地に捕らわれた。


【ひかげにちるさくら】
(結局、忘れることなどできないのだ)(己も、主も)

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深い水の中へ落ちて行くようだった。



ちらちらと光る水面がゆっくりと遠ざかる。
温かく柔らかい水は暗い色をして身体へ絡み付き、逆らえぬ重さとなって己を抱きしめる。奥底から次々と細かい泡が弾けながら浮かんでゆく。
苦しくはなかった。ただただ穏やかであった。付け加えるなら、泣きたくなるほどに切なく幸せだった。


暗い暗い水が呼んでいる。はやくこちらに来いと、低い声が耳を舐める。


白い腕が己を捉えた。
見覚えがあるような、無いような、武骨で美しい腕だ。背を向けている己の目に、どうしてだか蠱惑な笑みが焼き付いた。
何時の間にか底に着いたようだ。白い腕は腹へと絡みつき、己を底へと縫い止めた。

『もう此処からは動けない』

愛おしげに背に擦り付けられた額。己の身体はさぞかし重かろうな、と。申し訳ない心地になった。





        ごぽり


大きな泡が水面へと消えた。







「締まりのねえ面で寝てやがったな」


目覚めると其処にあの心地よい水はなかった。
とろける瞳で上を見る。きらきらした水面の代わりにあったのは、穏やかな男の顔だった。武骨な指が頬を撫でる。何度も、何度も。それから逃げるように体勢を変える。固い着物と厚い身体に鼻をぶつけた。

何でこっちに転がったんだ馬鹿野郎。

焦ったような照れたような、そんな声が降ってきて、ようやく己は男の腹に気道を押し付けているのだと気付く。息をする度に男の着物が口を塞ぎ、むっとした独特の匂いが鼻を突く。日向を背に己を庇うよう膝枕をしていた男の、汗の匂い。逃げる腰を引いて犬のようにくんくんと嗅いだ。腹から顔を放さず半眼で見上げた男は、ぎくりと背を震わせ唇を引き締め真っ赤な顔で困ったように己を睨む。


「おぼれる夢を見た」
「そのままくたばりゃ良かったんだ」


くぐもる声音、湿る吐息。嗚呼、水の気配がする。男の腕が頭を撫でると、水の気配がひたりひたりと近付いてきた。あの水の中は大層心地が良い。死んでしまっても良いと思えるほどに。いっそ死にたいと願うほどに。

すう、と息を吸った。

水がとぷりとナカへ満ちる。あの夢は本当だ、もう何処へも行けやしない。


「お前に溺れる夢を見たよ」
「…なら、尚更死にやがれ」


もっとずっと溺れて死ねよ。
愛と乞いをはらんだ呟きに悪くないなと囁き眼を閉じる。けど、どうせなら。溺れて死んでしまうよりお前で泳ぐ魚になりたい、と。


馬鹿みたいな事を考えた。

【ひだまりにおよぐさかな】
(小十郎も俺に溺れる夢を見ろよ)(拗ねたような言葉に、男はくつりと笑みをこぼした)


衝撃を受けた

農耕用トラクタの車検証を見る機会がありました。
発行された日を確認すると


発行日:明治33年1月1日


明治33年
め い じ



そのときの私の衝撃を誰か理解して下さい。
リアルでΣ(゚Д゜;)←こんな顔になりました。
だって明治33年です。
30年前には江戸だった明治です。
侍も今ほど遠くない…というかめちゃくちゃ近しい時期ですよ。
第二次世界大戦もまだ起きていないのに、トラクター。

パニックでした。
だいぶガクブルしながら上司に言えども取り合ってくれません。
だからどうした…の態度に私の方が可笑しいのかとぐるぐる思考していると、代わりに上司がお客さんの対応に回りました。
そして聞こえる疑問に満ちた声。


だから言ったじゃないか、ばかあぁあ!!


人の話を聞いていなかったのか、はたまた明治と昭和勘違いしてたのか。
結局、単に市役所の人が間違えていただけでした。
直し方が解らなくて放置されているんだとか。


でも、るろうに剣心の時代に車あったから可笑しくないのかもなぁトラクター。
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