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sss病-続




新しい部屋が見つかったとメールが来たので御祝い兼貢ぎ物の缶ビール片手に小十郎のマンションを訪ねる。


ストーカーの空き巣騒ぎから少し経ち、小十郎の忠告通りストーカーを無視していたら身体にまとわりつく露骨な視線が目に見えて減った。
誰が入ったのか判らない杜撰な管理の部屋に住むよりルームシェアしないかとの誘いに食らいつき、部屋選びを小十郎に任せて一週間も経たないが、コネなのか何なのか、何にせよ良い部屋が見つかって良かった。

週末のデートと同棲の事実に気を良くし口笛を吹きながらエレベーターを待つ。
強面の昔なじみはインテリの癖に見た目そのままの仕事をしているため稼ぎは良い。
おすすめ物件であるマンションのガラス張りのエレベーターから見える地上は、みるみるうちに遠ざかっていった。
果たして俺の稼ぎでこの部屋をシェアできるのだろうか。
取り敢えず月幾らなのかは聞かなければなるまい。

開かれた扉の向こうで、黒いシャツの小十郎が目許をゆるりと滲ませた。
ふだんきっちりと後ろへ流されている髪は軽く乱れていて色っぽい。
シャワー入ってきて良かったと思いながらビールを掲げ部屋へ足を踏み入れた。


「高そうな部屋だな、俺の給料で足りんのかよ」
「前の所とそうそう変わらねえだろ」
「いいや絶対高い。…越したばっかりなんだなぁ、テレビとか無いのかよ」
「ああ、要らねえからな」


腕を引かれてたたらを踏んだ。
少し目線を下げ小十郎を見ると、奴は缶ビールに埋もれていた際どい本を片手に笑っていた。
笑みを形作る顔の中、焦げ茶の瞳だけが妖しく輝いている。


「もう要らねえだろ、こんなもん」


雑誌の中の金髪の女が、誘うような目つきで此方を睨む。
ゴミを扱うような仕草で放られた美女達は無造作に置かれていた燃えるゴミの袋へとダイビングした。


「何すんだよ!」
「まだ解ってねえようだな」
「や、意味が解らない」


まだお世話になってないんですけど、と。
おどけてゴミ袋へ足を向けるが、腹に巻き付いた太い腕によって歩みは阻まれてしまう。


「お前は俺以外の何が見てえんだ」
「は、」


艶やかな低い声が耳朶をくすぐる。
あやすような声音に背筋が震えた。


「お前は、俺の声以外の何が聞きてえんだ?」
「ちょ、小十郎…」
「要らねえよな。だから全部捨ててやったんだ」

首裏が寒気を拾う。
ぞくぞくとした感覚に血の気が引いた。


「お、まえが捨てたのか、本も、CDも、全部?」
「ああ?当たり前だろうが。アルバムだってあんなモン、俺の居ない思い出だぞ。んなもん要らねえだろ…そうだよな?」
「視線、とか、無言電話も…」
「そりゃ始めのは俺じゃねぇ。お前の尻追っかけてたストーカー野郎は始末したから安心しろ」


礼は身体で良いぜ。
にたりと笑った男に胸を強く突かれ、俺は真新しいフローリングへ尻餅を着いた。
嗚呼この遣り取りがもどかしくて仕方ない。
色々と待ってやったんだ、さっさと手を出して来いよ。
膝に跨る大柄の男は身じろぐ俺を見て頬に走る傷をにやりと歪ませる。
本当になんて最高なシチュエーションなんだ。
小十郎、俺は優しいから手助けに月並みな台詞でも吐いてやるよ。


「何でこんな事するんだよ小十郎」
「何で、だと」


雑誌なんかは別に良いけどテレビはリサイクルショップにでも持って行けば良かったのに。
勿体無い。
最新式の液晶からにじみ出た何かの液体が地面に染み込んでいた光景は一生忘れられないだろう。


小十郎は狂気の浮かぶ瞳をそらさず俺の襟元を掴むと噛みつくような口付けをした。
むにむにと齧られる唇がくすぐったい。
薄く瞼を開き小十郎の整った顔を舐めるように眺める俺の表情は、緩みきっていて見せられたものじゃないだろう。



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あうあうあ

マトリョシカいいなマトリョシカ!!
沈んでた気分がサッとさらわれました。
だめだ負けた。
歌ってみたと原曲合わせてDLだよちくしょう!

パンダヒーローも他の曲も素敵だ…皆さんありがとうございます。
午後からも頑張れそうだ


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