「……温泉、ですか?」
 冬の、とある一日のことだった。
 まだ、本格的に雪に埋もれる前の、肌寒くなりかけの季節。セッカの外れにある小さな屋敷に、ふとNがそんな話を持ってきた。
「イッシュではあまり馴染みがないけど、カントーだとかジョウト、シンオウか、あっちでは一般的なんだって。ほら、湯治って言葉もあって、病気の治癒にもいいとか」
 全国各地を回っているNは、時折こうして、いろいろな情報を仕入れてやってくる。