グズクチさんへのお題はただいまとぺトリコールです。
二次創作お題素材ガチャ
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ヒョコヒョコヒョコ。
「こら、ひとりで先にいっちゃダメだよ」
テコテコと交番の出口に進み始めた、まだ幼い小猫に声をかけるも、返ってくるのはあいまいな「ニャー」という小さな鳴き声のみ。
兄弟のなかで一番ヤンチャなこのニャースは、他の子たちが昼寝しているさなか、ひとり冒険する気まんまんのようだ。
「仕方ない、か」
ここの所、大雨つづきの日々だった。めずらしく今日はそれも収まって、自分も散歩に行こうかな、なんて考えてもいたところだ。
早くついてこい、といわんばかりにカリカリとかべに爪を立てるイタズラ坊主に苦笑して、靴を履きかえた。
「さぁ、ぼっちゃん。今日はどこへパトロールするかい?」
薄日のさす外へ出れば、待ってましたといわんばかりに、ニャースはトテテッと走り出す。
「やれやれ、わんぱくだねぇ」
まっすぐに木々の合間に飛び込んでいった後姿に、ハハ、と苦笑した。
「まさかグズマのあんちゃんが、あーいう恰好をするなんてね」
甲冑を身に着けバトルする姿を、建物の二階から見下ろした。
場所は、パシオ島内町中のカフェ。ひと気のないそのテラス席にて、のんびりと頬杖をつく。
「意外だろ? 案外、イベントごとが好きなんだよ」
真向いの席でその様子を眺めるのは、元スカル団かつグズマの友人であるプルメリだ。
「いらっしゃい」
荒れたポータウンの中心地。
その屋敷内へ入れば、軽いあいさつが投げかけられる。
「プルメリのねえちゃんか。まだここに来てるんだねぇ」
「世話しなきゃなんないヤツらが、まだまだ多いモンでね。あんたが用があるのはグズマかい?」
「ああ。ま……もうそんな問題視もしてねぇんだが。一応、定期報告を上げないとだからさ」
グズクチへのお題は足元とサイレンサーです。
#お題ガチャ
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ゴトッ
重い音を立てて、テーブルから物体が落ちた。
「オイ、なんか落ち……て、あぁ?」
交番のソファを占領していたグズマの足元に滑るように落下したもの。
黒い手のひらサイズの銃火器が、にぶい光を反射していた。
「なんっ……これ、あんたのか?」
「……あ」
開け放たれたままの交番の入口から、ゆっくりと光が射しこんでくる。なんとなく目を向けて、ハッと立ちあがった。常にくもりか雨ばかりのこの島では、日が射すのはひどくめずらしい。
報告書をまとめる手をとめて、外に出て空を見上げた。濃い灰色のくもの隙間から、おだやかな黄色の光が降りそそいでいる。
「賢いねぇ」
感心したような呟きが、思わず口からこぼれ落ちた。
「……あぁ?」
「あ、いや。よくあんちゃんになついてると思ってね」
三匹現れたビードルをであいがしらで一匹はたきおとした後、ミサイルばりで残り二匹を見る間に駆逐。
流れるような見事なさばきだ。
「クチナシさん、おれ、あんたのこと好きだぜ」
朝だ。めずらしく雨が止み、うっすらと日差しの入ったポー交番の室内。
ニャースとのんびり遊びながら、彼、グズマは唐突にそううそぶいた。
「……えっ?」
こちらといえば、アセロラが持ってきたどこかの野花をガラス瓶に放りこんでいるまっ最中だ。
ザアァー……
飽くほど耳にした雨音が、パシオの大地を濡らしていく。
まだ見慣れぬアスファルトの道路が、ジクジクと染みを広げていった。
「いやァ……傘、持ってくるんだったねぇ」
古びた家の軒先で雨宿りしつつ、まっ黒い空を見上げる。
「…………」
「…………」
「そんなにみられると、穴が開きそうなんだけど」
午後三時、交番内。
いつもは騒がしいニャースたちも、昼寝ですっかり静かになった室内だ。
大の大人が二人、向い合せにソファに座っている。
パソコンに向かってダラダラと仕事を続けている自分。それに、この島を拠点として活動していたスカル団の元ボスの青年の二人だ。
「なかなかの絶景だねぇ」
眼下に広がった一面の冬景色に、感嘆の声がもれた。
終の棲家と決めたアローラでは、けっして目にできないような氷のかたまりが目前には広がっている。
白く厚く連ねられた白峰は、自然のものとそん色ないほどに荘厳だった。