スポンサーサイト




この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

憧れのガール(キョウハチ)


「……むう」
「そう拗ねるな、キョウヘイ」
 楽屋の休憩室でぶすくれた自分に、彼は穏やかな声をかけてくる。
「君の方が先輩だし、演技だって板についたものだ。たった一回、彼女が演技したものがウケただけで、君の今までの努力が無に帰したわけではない」
「そう……そう、なんです、けど」
 今まで、この人の傍で、ポケウッドで必死に努力してきた。憧れていた俳優である彼が復帰して初めての作品で、なんと主役という立場で共に演じた。
続きを読む

君の恋愛(ギマレン)


「……君って、武道一筋だよねぇ」
 ストイックに訓練を続けるレンブの姿を眺めながら、ポツリと感想をつぶやいた。
「なにをいまさら。そういうお前とて、ギャンブル一筋じゃないのか」
「まぁ、否定はしないけれど。でも、君ほどに一直線じゃない、かな」
 確かに、生きる術としてギャンブルの腕を磨き、イカサマを身に着け、またそれを見抜く技術を身に着けた。
 周囲にあるのは悪意と殺意、そして欲望渦巻く金銭の世界。それが当たり前で、なんの疑問も持ち合わせいなかったのに。
続きを読む

ボクの嫌いな春の雨(Nゲー)


色あせない感情を教えてくれ」にまつわるN視点のお話。


 雨は嫌いだ。叩きつけるような水しぶきの音、ぬかるんだ土の色、そこに倒れ伏すあの人の姿を思い出すから。肌寒さの残る低い気温の中、水辺に転がる見知った人。慌てて駆け寄って、息がないことに気付いた瞬間の絶望といったら。
 足元がガラガラと崩れ去る、なんていうけれど、あれは比喩でもなんでもなかった。世界が一瞬にして足場を失った。彼はボクの全てではなかったけれど、心の奥底にずっと存在していた、特別な礎を築いた人だった。
続きを読む

それいけ悪意(Nゲー)


「あなたのことが嫌いです」
 寝台の横に座した青年に、真っ向から挑みかかる。大樹の葉を思わせる生き生きとした若葉色の髪、光源によって色合いを変化させる豊かな水のような瞳、すらりと長い健康的な肢体。
 自分が望み、結局最後まで手に入れられることのなかった全て。それを持つこの義息のことを、ずっと嫌悪していた。ズブズブと光の差さぬ底なし沼に引きずり込まれるように、ずっと、ずっと昔から。
続きを読む

不幸な蟻(Nゲー)


 足りない。まだまだ、全然足りないのだ。
 Nの城の執務室で、積み上げられた書類を前に、親指の爪をかじる。何度も苛立ちをぶつけられたそこは、血すらにじんでいる有様だ。
 プラズマ団は、巨大組織となった。一介の冒険者では太刀打ちできないほどの、一大教団。ゼクロムの召喚も成功し、傀儡であるNが名実ともに王となった。
続きを読む

あいつと心(グズクチ)


※グズクチと、ちょこっとマープル要素有り。
 しかしクチナシさんとマーレインさんは出てこない。

「……」
 頬杖をついた指先に、グッと力をこめられる。
「グズマの兄貴ィ、どうしたんスか」
「……別に、どうもしねぇよ」
 団員が、気づかわし気なまなざしを向けてくるのを、すげなくあしらう。
 そう、別にどうもしない。このポータウンに雨音がやまぬように。このウラウラの海がいつも穏やかなように。あの白い頭髪の警察官が、この島から出ることができないように。
続きを読む

前の記事へ 次の記事へ
カレンダー
<< 2020年04月 >>
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30