※キョウハチ、と銘打ちつつ、実際は
BW2ポケウッドのリオルキッド×ハチクマンです※
「くっ……また貴様か、リオルキッド!!」
「そうだ! いい加減あきらめろ、ハチクマン!!」
とある、高層ビルの屋上にて。
吹きさらす強い風が、対面する二人のマントをバサバサと激しくはためかせる。
珍しく誰も観客のいない、静かなそのビルの頂上。そこで、彼らはにらみ合っていた。
「カット! そこまで!」
晴れわたった青空の下に、監督の声が響きわたった。夏の暑い空気のなか、カチンコの音がいっそう遠くこだまする。
場所は、イッシュ地方のすでに廃駅となった田舎町だ。観客も少なく、役者数名と撮影人員だけでひとは少ない。
「今日はここまでね。明日のスケジュールは打ち合わせの通りだから、またよろしく」
「はいっ」
電柱とパイプが入り組む路地裏だ。躍動する二つの影が、一つの姿を追いかけている。
ヒィヒィとかすれ声を上げながら逃げる人影。壁にはりつくベトベターが逃走劇をうっとうしそうに見つめている。
視界すべてが灰色で彩られたその狭い空間に、不意にはつらつとした声が響き渡った。
「そこだ! ニューラニンジャ!」
ビル風にあおられ、コロリと転がる空き缶。
それに足を取られた逃走犯が、グラっと体勢を崩したその時――、
「OK! バッチリ!」
チャンピオンフェスタ。各地方から訪れたチャンピオンたちが結集してバトルする、一大イベント。
盛大な閉幕式も終わり、観客席もだいぶ空きが見える。
すでに出場者にも解散の指示が伝えられており、アイリスはトウヤたちと町へ買い物に行くのだと、そそくさと出て行った。
自分もまた、同じ役者であるカルネとの会話を、ちょうど終えようとしていた時だった。
「ハチクさん!」
「……キョウヘイか」
観客席から走って来たであろう、見知った少年の姿が現れたのは。
墨絵のような景色だった。白い空の下、色を失った枝にとまる、三羽の小鳥。
ただの静止画でしかないような、静かな映像だ。時折、淋しい風がヒュルリと空気を動かして、乾いた葉っぱがさらわれていく。その真下に佇む、一人の男性の手元へと。
「あ」
スッと手のひらでそれを受ける人の姿に、思わず小さな声がもれる。
気配にさとい彼は、即座に振り返り目を見開いた。
※BW2ポケウッド
ニューラニンジャ×メカポリス
「なぁなぁ、メカポリス」
「……なんだ?」
共に警察署で勤務する同僚となったニューラニンジャが、ちょいちょいと片手でこちらを呼んできた。
「あんた、サイボーグなんだよな? こういうの得意?」
そんな声とともに目前に差し出されたのは、携帯用ゲーム機だ。
「……むう」
「そう拗ねるな、キョウヘイ」
楽屋の休憩室でぶすくれた自分に、彼は穏やかな声をかけてくる。
「君の方が先輩だし、演技だって板についたものだ。たった一回、彼女が演技したものがウケただけで、君の今までの努力が無に帰したわけではない」
「そう……そう、なんです、けど」
今まで、この人の傍で、ポケウッドで必死に努力してきた。憧れていた俳優である彼が復帰して初めての作品で、なんと主役という立場で共に演じた。