後何度体を重ねれば己が気持ちを正確に伝えられるのだろう。
両手だけでは足りない、抱えるほどでもまだ足りない。
道の端から端まで線を描いてみても到底足りず、ならば宙に瞬く星の数と同じだ等と言ったところで、そんなもの部屋の隅に転がる埃と大差はない。
汗ばんだ身体に手のひらを這わせ、厚い胸へ頬を付けた。
雪国人特有なのか、きめ細かい肌の吸い付くような感触が愛おしい。
どくどくと四肢を巡る血潮の動き、乱れた息づかい、離すまじと背に回された腕の力強さ。
髪の先から足の先まで、全てが全て掛け替えのない、一等大切な宝物である。
愛してる、と。
言いかけて、止めた。
両手から溢れ、際限なく零れては膨らみ続けるこの感情が、たった数文字で伝わるわけがない。
言葉にする代わりに、至る所に残る古傷へと唇を寄せた。
擽ってえなと身を捩る男を緩く押さえたまま、この思いが伝わりますようにと願いを込めて、何度も何度も口付けを落とす。
「なぁ小十郎、覚えてるか」
「何をだ」
「小十郎の頭の先から足の先まで、命も含めて『竜の右目』は全て政宗の物だって話」
「…それがどうした」
「恋慕…心は俺にくれるって、言ったろ」
怪訝そうな眉間の皺へ唇をあてて、笑った。
撫でつけた髪を下ろすと年相応の雰囲気に近付く男に目線を合わせる。
「俺の心とお前の心、くっつけて溶かしてぐちゃぐちゃに混ぜて二つに分けたら、同じ想いになるのかな」
強い光を放つ焦げ茶の瞳がとても綺麗だ。
頬傷へ手を伸ばし、恐る恐る唇を重ねた。
(同じ以外の何がある)
(…小十郎ってばおっとこまえなんだから)