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sss忍たま



唐突だが、潮江 文次郎は九十九 苦手であった。
忍術学園一ギンギンに忍者していると自他共に認める潮江には、忍術学園一諦めの早い忍たまとも学園一忍者してない忍たまとも呼ばれる九十九がどうしても受け入れられなかった。
そう、三年前までは。


組を混ぜての実習で出くわした盗賊と対峙したあの日。
賊退治は任せろと一人張り切った挙げ句に足を挫いた潮江とペアを組んでいたのが九十九だった。
悪い意味で諦めの早さが知れ渡っていた九十九に、潮江は己の命を諦めた。

こいつは俺を諦めて逃げるだろう、と。

ほぼ確信だったその考えが覆されたのは、刃こぼれの目立つ刀を振り上げた盗賊の首が転げた時だった。
吹き上がる血飛沫に仕様が無いなと独りごち、九十九は次々と族の首を刈って行った。
四方八方に延びる糸に絡め捕られた首の数々が、其処彼処をぬらりと伝う紅い血が、朝露に濡れる蜘蛛の巣の様で。

不謹慎ながら、美しいと思ってしまったのだ。

何故逃げなかったと問うた潮江に、九十九はこう語った。
使わないことを諦めたのだ、と。
残念ながらなんの事だかは理解できなかったが、それ以来、九十九が上級生と共に御使いへ出ることが増えた。
同時に、潮江が九十九を目で追うことが増えた。


ぱさりと眼前へ置かれた予算案に、潮江は顔を上げる。
眠たげに瞼を擦る九十九は、寝起きなのか、少し掠れた声で潮江を呼んだ。


「文次郎、遅くなって悪かった」
「構わねえ、帰ってたのか」


おう、と応えた九十九の眉間には珍しく皺が寄っている。
落としきれなかったのか、微かな血臭が鼻先を擽る。
慣れきった生臭さに目を細め、潮江は九十九を茶に誘った。
饅頭もあるぞと素気なく言う潮江に、九十九は表情を和らげ、有り難いなと笑い潮江の前に腰を下ろす。


「腹が空いていたんだ」


頂きますと言い饅頭へかぶりついた九十九を気にしつつ、持ち込まれた予算案に目を通した潮江の太い眉が八の字に歪む。
この額、少な過ぎやしねぇか。
呆れ混じりにそう尋ねると、九十九は栗鼠のように膨らませた頬の中身を飲み込みながら答えた。
最終的にそんなもんだろ、と微笑む九十九に、潮江は苦虫を噛み潰したような顔で低く唸る。


「まぁ、仕様が無いさ」


予算だって限りがある、お前も頭が痛いだろうが俺も出来る限り協力するから今期もなんとか凌いでくれ。


「だからそんな顔するな」


御馳走様でしたと呟き、九十九は潮江の前でひらひらと掌を振る。
怪訝の色を浮かべる潮江に、九十九は日溜まりのような暖かい笑みを浮かべた。


「俺は難しい顔より、笑ってる顔のが好きだよ」


ぽんと現れた白く小さな花を手渡し、九十九は潮江に背を向け歩き出す。

気障な野郎め。
こぼれ落ちた苦言が内に孕むどうしようもない甘さに、潮江は己の手にある華を潰さぬよう頭を抱えた。



sss忍たま


生物委員会委員長の九十九十八先輩は忍術学園一諦めの早い忍たまと呼ばれている。
一か零、善か悪、有か無、美か醜、中庸という概念が抜け落ちてしまったような先輩の思考は、三年ろ組の二人組並みに迷子だ。


後輩にじゃれつかれれば物の数秒で逃げ出すことを諦め、同級生におかずを取られれば瞬きの間にどんな好物も諦める。
予算会議では戦う前に踵を返し山へ動物達の餌を狩りに行き、安藤先生の部屋に放ったカメムシの幸せを祈りながら達者でなと捕獲を断念した。


二者択一を常に直走る先輩の姿勢は、いつか自己保身の為裏切りを犯すのではないかと先生方に危惧されている。らしい。
忍者にとってどうなんだ、なんて言われる先輩だが、おれは絶対にそんなことはないと言い切る自信がある。
なぜなら先輩は、忍術学園が大好きで、おれ達を愛しているからだ。

愛しているなんて、大袈裟だなぁ。
困ったような笑みをこぼす雷蔵に唇を尖らせる。
信じてないなと怨めしげに呟くと、雷蔵の隣で春画の頁を捲っていた三郎が面倒くささを全面に押し出しながら溜息を吐いた。


「面と向かって言われた訳じゃないだろう」


愛してるなんて、と。
欠伸をかみ殺して春画を放り投げ(ばか、それはおれの秘蔵なんだぞ!!)、三郎の言葉をドヤ顔の兵助が継ぐ。


「つまり九十九先輩にとってのハチは、おれにとっての豆腐…こういうことだな」
「違うでしょ」


兵助はホント少し豆腐から離れなよ。
まったくもうと言いながらお茶を飲む勧右衛門に同意しつつ、内心ソレも良いなと思ってしまった。
兵助にとっての豆腐が、先輩にとってのおれ。
思わず熱くなった頬を冷ますためぱたぱたと手を振れば、そういえば、と三郎が切り出した。


「九十九先輩が戦ってる所、見たこと無いな」


そういえばおれも、おれも、と声があがる。
武道大会も欠席だし、強いのかな、そりゃ強いだろ、そうそう六年生だもの。
わいわいと花を咲かせる四人が、ぱっと此方を見る。

な、なんだよ。

余りの剣幕にどもりつつ答えると、九十九先輩と組んだこと有るの八だけじゃないかと三郎に詰め寄られた。


「強いのか」
「強いよ。凄く」
「そんなに凄いの?」
「どんな風に?」
「得物は?」


一遍に喋るなよ!
にじり寄ってくる四人から後退り、思いを巡らせる。
五年の始めに一度だけ組んだ実習は、何が何なのか理解する前に全てが終わっていた。
辺りに転がる人だった肉塊、鼻を突く生臭い異臭。
その日先輩がおれの命と引き替えに諦めたのは、その他大勢の命と任務達成だった。
何も持たず血の池に立ち尽くす先輩は、聞き慣れた口癖を言っておれを慰めた。


『まぁ、仕様が無いさ』


口布を引き下げた先輩は、頬に着く血糊もそのままにうっそりと笑った。


「見えなかった」
「は?」
「だーかーら、見えなかったんだよ」


そう、見えなかった。
周りをあっという間に囲まれ、品のない悪態を吐いた次の瞬間には既に生きている人間はおれと先輩の二人だけだった。


「と言うわけで、解らなかった」
「なにそれこわい」


うわぁと震える勧右衛門に、三郎がにやりと笑う。
雷蔵の顔なのに、全く違う人間に見えるから不思議だ。


「じゃあさ、今度の武道大会。九十九先輩引っ張り出そう」
「え…本気なの三郎」
「私はいつでも無敵に素敵で本気だよ雷蔵」
「無理だろ」
「乗り気じゃないな八」
「だって、」


半身ほど障子が開いて、渦中の九十九先輩が悪いなと言い、顔を覗かせる。
今までの会話も恐らく聞かれていたんだろうなぁ。
気配に気付けず悔しがる四人を余所に、気まずい気持ちで先輩を見る。
先輩は、まぁ仕様が無いさと困ったように眉を下げながら笑った。


「ジュンコとジュンイチが、揃って散歩に行ってしまったんだ。皆で集まって居たところ悪いのだけれど、捜すのを手伝ってくれ八左」
「はい!」


背筋を伸ばし、部屋の隅に立てかけた網を手に取る。
行きましょうと九十九先輩に声を掛けると、先輩は顎に手を当て何か考える仕草をして、好奇心いっぱいな眼をした四人へ握った拳を差し出した。
まさか殴られる…!?と肩を震わせた五年生に、先輩はふわりと微笑み拳を開いた。


「俺は、あまり稽古向きじゃないんだ」


だから武道大会には出られない、これで勘弁しておくれ。
もう一度微笑んだ先輩の掌には、先程開いた時には無かった色とりどりの飴玉が乗っていた。
簡単な奇術にきゃあきゃあと喜ぶ四人が憎らしい。
畜生あいつら狡いぞ。
おれだって先輩から飴を貰いたいのに。

流石に頬を膨らませることはしないが、悔しがっていると先輩が口へ一粒放り入れてくれた。
八左はいちごが好きだったよな。
そう笑んだ先輩に後光が見えた。


ああダメだ、好き過ぎて困る。


sss???



産まれたときからの死亡フラグって皆さん信じますか?

そりゃ人は死ぬ、いつかは必ず、早い遅いの差はあれど、絶対に死ぬ。
だがコレはそういう哲学的な意味を含んだものじゃない。
言葉通りに死亡フラグが目に見える形で現れているのだ。
昔は別にそんなもんこれっぽっちも信じてなかったけど、今は物凄く切実に実感している。

俺は死ぬ。

短くて十歳前後、長くても三十路前に、必ず、死ぬ。

何故かって?
そんなの決まっているだろう、俺の苗字が彩紋だからだ。
アカシックレコードに逆らっているのか組み込まれているのかすら不明だが、とにかく俺は彩紋に生まれ、しかも長男で、弟が双子だった。
間違いない、この世界はあの小説の中、もしくはあの小説の出来事が実在する世界だ。
ミステリの枠に辛うじて引っかかる、二十×世紀の科学がトリックですと言っちゃうような、天文学的な数値の確率によって生首が密封された鎧をすり抜け頭部にぴったり収まったとか、古代文明のオリハルコンで出来た髑髏やクローン人間が普通に出てきちゃうような、世界規模で探偵組織とと悪の軍団が居る、そんな世界だ。

信じられるか?
大阪ドームが持ち上がってドーム部分で大量虐殺後元の位置に戻ったり、エッフェル塔がミサイルの如くぶっ飛んだり、生きている人間は皆誰かしら何かの組織に入っていたり。


生き残れる自信が微塵もねぇ。


そんな大事件の前に家族殆どが殺されるんだが、取り敢えず死亡フラグ回避の方向へ進むため弟へ引っ付こうと思う。
末の弟も助けたいので存分に足掻こうと思う。
よろしく十九。
十八兄ちゃんはまだ死にたくないんだ。





―――――――――――
彩紋 十八(九十九 十八)
・大いなる存在による手違いか、ちょっとしたおちゃっぴいで流水世界に転生した。
・小説を全巻読破したばかり
・享年26、極普通の会社員だったが、歩道橋から足を滑らせて死亡
・奇術の才能はそこそこだが、華がない&群衆恐怖症のため舞台には出ていない
・何だかんだで生き残り、言葉の魔術師と良い仲に。
・手先が器用、職業はマジシャン
・宝物は十九と条景の遺髪が入ったペンダント
・結局二人とも助けられず、人の生死について色々諦めた


見ていて歯痒くなるほどに諦めの早い人物
選択肢が非常に少なく、有か無かのほぼ二択

sss死神

※トリップ少女と隊長
※ぐだぐだ


「あんたが傍観主なんでしょ!?あんたの好きになんてさせないんだから!!」


私がお姫様なの!私は愛されるためにここに来たの!!

真新しい死覇装に身を包んだ頭何分個も小さい女に睨まれ、男は唖然と目を見開く。
息巻く少女に馬鹿以外の何が当てはまるのか、頭を抱えた。


「おま…俺の名を知っているか?」
「雪代來海でしょ」
「おい恋次コレ何」
「かくかくしかじかで…」
「へえ、」


呆れのあまり、若干どこぞの世紀末に出てくる御方のような問いになってしまった。
隣で殺気立った同僚を宥め、男は引きつる頬もそのままに少女を眺めた。

晴れた空の色を紡いだような髪、深紅の左目と深緑の右目。
チビた身体ながら出るとこは出て、引っ込むところは引っ込んでいる。
合法ロリってこんなんかと脳内で締めくくり、現在己が居る場所に想いを馳せた。

部隊の頂点である隊長が十三人に加え、零番隊長が珍しく姿を現したとある日の定例集会にて、少女は大いに吼えていた。
曰わくその男は逆ハーを狙う毒婦で皆を堕落させる云々、媚びを売り美形を侍らし逆ハー補正でメロメロ云々。
甲高くきゃんきゃんと直訴する少女に、周りの殺気が否応なく高まり、少女の三方を固めて居た三六九の副隊長が力無く項垂れる。

きっと少女を必死こいて止めたんだろうな。
男なのに毒婦って何だ、のツッコミはさておき、男…零番隊長雪代來海は少女へ視線を向けた。


「…で?」
「え…?でって…何よ」
「まぁ仮に俺がその逆ハー主だとして、だから何なんだ?」
「認めたわね!」
「話聞けよ、仮にって言ったろ。仮にそうだとしたら俺の周りには美男美女が侍ってくれるそうなんだが…」

「ボクがおるで!」
「乱菊にチクるぞ」

「僕は勘弁だなぁ、先生はちょっと…」
「お呼びじゃねぇんだよ体毛剃ってから出直してこい」

「此方を見ないで頂こう、迷惑だ」
「良いだろうお前の目の前で全力でルキアといちゃいちゃしてやろう、無論泣くまでだ」

「儂は…」
「黙れ口開くな酸素吸うな勝ち組がお前の嫁さんに言いつけるから一月ほど惨めに一人暮らししろ冷えたネコマンマ食って涙を流せ勝ち組が曾孫の誕生日プレゼント送ったからな後で渡してくれ」

「……」
「駒ちゃんはあとでモフる」

「気色わりぃ」
「そのままそっくり返すぞ剣八覚えてろ…全力で困るな二番四番九番十三番!!頼まれたって手ぇ出すか実験に利用するつもりだろ十二番、五番は…生理的に無理」


ほらみろ侍ってねーだろ侍らせられるもんならとっくにやってらー酒池肉林なんて所詮は夢だ空想だ妄想だー!!

うわぁぁんとわざとらしく泣き声を上げ窓を突き破り逃走した男に、その場に残された面々は揃ってやられたと溜息を吐いた。
会合嫌いの男を四番隊長の尽力で、やっとこさ引きずり出したのが数刻前。
長々続く話し合いに飽いた男は怪しい少女にかこつけ、まんまと逃げおおせたのだ。
きっと今頃ほくそ笑んでいることだろう。


「何なのよあの男…」
「お前…口の聞き方に気をつけろ。あの人はな、総隊長と同い年かそれより年上で、とんでもなく偉いんだぞ」
「俺、來海さんになら侍りてぇ…」
「阿散井君!?」

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