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drrr静雄、死主

いくら頑丈だってこれはないと思うんだ。


久々に休暇を取り、可愛い可愛い可愛い可愛い未来の義妹へ日頃の感謝を込め何か渡そうかと思った俺は、当の義妹、朽木ルキアの手を取り、二人で現世へ降り立った。
遠慮するルキアに、ぬいぐるみやらキーホルダーやらストラップやら、可愛いんだかそうでないんだか判断の付かないキャラクター小物を思う存分プレゼントし、さて帰ろうかと店の扉を潜った刹那。

迫り来る鉄の箱、冷えたり暖かかったりする飲み物がぎっしりと詰まった俗に言う自動販売機が物凄いスピードで俺たちを襲った。

ルキアを抱きかかえ自販機を蹴り飛ばす。
進路を変えた自販機は隣の電柱へとめり込み、ようやく動きを止める。


「兄様、頬に傷が!!」


買い物袋を取り落としたルキアが、白くて華奢な指を俺の頬にそっとあてがう。
ぴりっとした痛みとルキアの指先を汚す赤に嗚呼怪我をしたのかと考えたが、それよりも先に妹のふくらはぎへと目が行った。
飛び散った破片で切ったのだろう、小さな切り傷から血が滲んでいる。


「ルキア、足」

「ああ…何ともありません、…兄様?」

「あんの餓鬼共っ…許さねぇ!!」


沸々と怒りに血が煮えたぎる。
周囲の喧噪を辿れば、通りの向こうで過激に言い争う二人組が見えた。
黒髪の軽薄そうな男と、柄の悪い金髪だ。
黒髪が嫌な笑顔で何か告げると、額に青筋を浮かべた金髪がいとも簡単に道路に刺さっていた標識を抜いた。


「あの金髪だな」

「兄様、お顔が凶悪になっています」

「ルキア、ここで待ってろ。今あの餓鬼引っ張ってくっから」


ぶんぶんと標識を振り回す金髪に近付き声を掛けるも、そちらの頭にも血が上っているようで反応がない。


「いぃいざぁあやぁあ!!!殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すめらっと殺す!!!!」

「アハハハハハハ!静ちゃんってばそれしか言わないんだから!ボキャブラリー少なすぎじゃない?」

「おい餓鬼」

「うるせぇノミ虫黙って殺されろ!!!!ちょこまかと動くんじゃねぇええええ!!!」


無視なのか。
そうか無視なのか、解ったよ。
ナイフ片手に跳ね回る黒髪の襟首をひっ捕らえ、ポストを引き千切ろうとした金髪の頭を鷲掴み、両者の頭部を力の限りぶつけ合わせる。
鈍く重い音の後、声にならない悲鳴が二つ響いた。


「まずは餓鬼共、テメェらが黙れ」


うつ伏せでびくびく痙攣する黒髪と、額を押さえ悶絶しゴロゴロ転がり回る金髪の片足をそれぞれ掴む。
こぢんまりとしたファンシーショップに、死にかけた男二人を引き摺る俺はまるで似付かわしくない。
近年稀に見るシュールな光景に青ざめながら苦笑するルキアへ、俺は未だ痛みに呻く黒髪金髪を蹴り転がした。





―何か言うことがあるんじゃねーの?―
(ぶつくさと文句を垂らす金髪の腹を踏みつけて体重をかけながら笑顔で謝罪を要求してやった)(素直にごめんなさいと言ったので根は良いやつなんだと思う)
(黒髪は即座に正座してニヤニヤと謝った)(が、なんかムカついたので一発蹴ってやった)(気持ち悪い男だった)


「現世は物騒だな、」

「兄様の方が余程物騒だと思います」




―――――――――――
義妹ラブの隊長には静雄の暴力も臨也の思惑も通用しません、
ガチで喧嘩出来る。

sss会話のみ



「片倉くんの義兄弟なんて…君も大変だね雪代くん」

「何の話だよ」

「別に他意はないよ、ただあの蹴りに肘鉄、おまけに頭突き…さぞや痣の絶えない暮らしなのかなと邪推しただけさ」

「余計なお世話だよコンチクショウ、たまに焦げるだけです」

「焦げてるじゃないか」



「余計な事をべらべらと喋るんじゃねぇ!」

「今頸椎ゴリッて言った!!流石の俺も死んじゃうからね!?」

「テメェが死んだ所なんざ見た事ねぇから安心しろ」

「そりゃそうだけど、それなりに痛いんだよ」

「…痛ぇ…のか?」

「何その意外そうな顔。そりゃ…死なないだけで痛覚はあるんだぞ、首折れれば直るまで痛みは続くし。此処に来る前胸に穴開けられて切り刻まれたときは本当に心から死にたくなったな、痛いの何のって次元の話じゃない」

「……そうか、痛みはあるんだな」

「ねえ小十郎何その滅多に見せない申し訳なさそうな顔…何で目そらすの」





―――――――――――
手加減したことのない片倉さん。
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