「この枷が取れなきゃぁなあ…もう小生に縋れる物は愛しか残ってないんじゃあああああああ!!!!!」
うおおお愛をくれぇ!!!と吼える大男に來海は首を傾げた。
聞けば、手首を戒める枷の鍵の行方が絶望的になったらしいのだが。
何もそんな極端にならなくても…怪しげな宗教なんかに走らなくても良いのになぁとか何とか思いながら、來海は官兵衛に出逢った当初から口にすべきか否かずっと迷っていたことを思い切って訪ねることにした。
「ねえ官兵衛さん」
「……何じゃ」
いつも前向きな官兵衛も流石に参っているようで、鉄球に腰掛け頭を抱える様子が大層痛々しい。
「それ、木でしょ。切っちゃ駄目なの?」
それともあの鍵でないと開けちゃ駄目って言われてるの?
「……………………………………………………………………………………………………あ、」
ああああぁあああああああああああああぁああああああああぁあ!!!!!
気付かんかったぁああ!!
材質が木で出来ている以上、鋸の刃を入れれば切れるのだし、見た限り繋ぎ目に鉄が仕込まれている様子も無い。
鍵にも特別な仕掛けを施したようには感じられなかったので多分いけるかなと思っては居たのだが……
ごつごつと額を鉄球に打ち付ける官兵衛に、やっぱり気付いてなかったのか、と。
結構な慧眼と頭脳を持ちながら何処かしら大事な部分が取り返しのつかないぐらい抜けている自称知将に、來海はうっそりと溜め息を吐いた。
(來海、來海!お前さんなら一発だろ、早速コイツを斬って小生に自由をくれ!!)
((あーもう、ウキウキわくわくしちゃってさー、そんな期待の籠もった目で見られると)…虐めてみたくなるんだよなー…っつーわけで、断る。外して欲しけりゃ俺を捕まえてみろ、バ官兵衛!!:瞬歩)
(なぜじゃぁあああああああ!!!!)
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これから官兵衛は、他の人でも枷を切れる事実を忘れ、ひたすら來海を探して全国駆けずり回ると良い。
ご当地訪ねて不在だと判るや否やぐすぐすと涙混じりに悔しがる官兵衛を、後ろからご当地のお土産品食べながら観察してると良い。
來海ちゃんは基本的にいじめっ子。