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レプリカの太陽(ビトロズ)


「ネオチャンピオン……なかなか、面白い試みですね」
 スタジアムの中央で取材に応じる若い少年の姿を眺めつつ、観客席で頬杖をついた。
 ここパシオで用意されている様々なイベントのうちの一つである、次代のチャンピオンを決めるバトルトーナメント。
 せっかく来たのだからと参加したものの、くしくも初戦敗退という結果で今回は終わってしまった。
 その後は、気持ちを切り替えてイベントシステムや集客方法、メディアへの広告宣伝などをチェックしていたものの、なかなか色々工夫してある良いイベントだった。
 ダンデが開催に一役買ったらしい、というのも納得の、未来を見据えた催しといえる。
(こうして、参加者のひとりとしてのんびりできたのなんて……いつぶりかな)
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推定無罪(ビトロズ)


 パシオ島内、商店街。
 明るい日差しの差し込む中、休日のどこかのんびりした空気を吸い込むように、レンガ道を歩いている時だった。
「えっ……ろ、ローズ委員長……!?」
「んん?」
 後ろから突然呼ばれて、思わず振り返る。
 この場所にやってきて少し経ち、かつての知り合いや新しい相手との関係を築き始めてきたものの、今の声は、その誰でもなかったから。
「きみは……ビートくんじゃありませんか」
「や、やっぱりローズ委員長……どうして、このパシオに」
「うん? そういうキミこそ、ジムチャレンジの途中じゃないのかい?」
「え……ジム……チャレンジ……??」
 問いかけ返すと、ビートはぽかんと大口を開けて固まった。
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待てば海路(ビトロズ)


「おーっ、モーターボートだ!!」
「速ぇーっ! 水しぶきすっげーっ!!」
「みっともないからはしゃぐんじゃありませんよ!」
 ギャアギャアと船にのって騒ぐ二人の頭を順番にひっぱたきながら、半眼でフッと周囲を見回した。
 日差しがサンサンと降りそそぐまばゆい海原の上に、軽快に走行するモーターボート。観光用のその船は、自分たちをのせて勢いよく飛沫を上げている。
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あるいは必然3(ビトロズ)




「なんとも、君とはよく会うものですねぇ」
 傷薬をシュッと患部に吹き付けて、その上から丁寧に包帯をくるくる巻きながら、彼はのんびりと笑った。
「この間温泉で出会ったときもビックリしたけれど、今日はまた……こんなシチュエーションで出くわすなんてね」
「……みっともないところを、お見せしました」
「いやいや、不意打ちされたんでしょう? ギャロップもきみのことを気づかっているしね」
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やきもち(ビトロズ)


「いやー、本当に助かったぜ、ローズ委員長……じゃない、ローズさん」
「いいえ。お役に立てたようでなによりですよ」
 ガラル地方南東部。エネルギー開発工場の管理室にて、これからの事業拡大についての打ち合わせを終えたところだ。
 工場を管轄する工場長は、野生児をそのまま大人にしたようなたくましい男性で、わしゃわしゃと生えたひげを揺らしつつ、豪快な笑い声を上げた。
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「他に好きな人ができた、と言われた時(ビトロズ編)」


「ビートくん。……別れましょう」
「……はい?」
「実は、好きな方ができたんです。……ですので、別れましょう」
「別れ……え??」
 ローズに真正面からそう言われたビートは、ピキッと全身を硬直させた。
「今までありがとう、ビートくん。楽しい時間を過ごさせてもらったよ」
「え……え……?」
「これからは、お互い友人として仲良くしましょうね」
 ローズはビートの動揺をスルーして、スパッと言い切ると一歩その場から退いた。
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あるいは必然(ビトロズ)




「腰痛に効く薬草……ですか?」
「ああ、そうだよ。なんでもかなり山頂に植わっているらしくてねぇ……生半可な実力のトレーナーじゃ、とても手に入れられないんだとか」
「……とってこい、と?」
「自信もっていってきな!!」
 否、ということは許されない。ポプラのそんな雰囲気に押されて、ガラル北東の山脈へとやってきていた。
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捕まえられて恋(ビトロズ)


※ローズさんが同性愛者という設定です※


 それはいたってなにごともない平凡な、とある一日のはずだった。朝、アラベスクジムに出勤し、ポケモンたちとのウォームアップをひと通り済ませた後のことだ。
 ユニフォーム姿のままイスに座り、タオルを片手にスマホロトムのニュース画面を立ち上げる。
 ここアラベスクに籍を置いてからは、元ジムリーダーに世間話をふられることも多く「世情を知っておけ」という叱咤もあり、習慣となっている。
 だから。だから画面を立ち上げてすぐ現れた文字――『元ガラル委員長ローズ氏の隠し子発見!?』という一文に、文字通りひっくり返ったのだった。
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君と世界とファンファーレ(ビトロズ)


※ローズさんが外見だけ子ども化する、という話の導入です※


 眼前にそびえたつ建造物を見上げ、ふ、と息を吐き出した。
 真っ先に目に入るのは、正面にそびえたつ十字の形。白亜の壁は、年月という襲撃を受けてすっかりススけ、植物の苗どころという憂き目にあっている。
「ここが……終の棲家となるのかな」
 スーツケースをひっさげて、自分はそう、一人小さくつぶやいた。
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一口頂戴、なんて簡単に言わないで(ビトロズ)


ビトロズへのお題は『一口頂戴、なんて簡単に言わないで』です。
shindanmaker.com


 それは、ある日の午後だった。
 ブラックナイトの首謀者として、地方から与えられる公共奉仕活動を行いつつ、ひと気のない山奥でひっそりと暮らす毎日。
 そんな自分の元へ、ちょくちょくかつての知り合いたちは訪れた。軽い挨拶、なぐさめ、叱咤激励。目的は様々だ。
 静かな日々。その中で彼らと言葉を交わすのはちょっとした楽しみのひとつとなっている。そのメンバーにひとり混ざる、ふわふわの綿毛の少年――いや、青年。
「いつも手土産を持ってきてもらって悪いね、ビートくん」
「いいえ。アラベスク自慢のパティシエが作ったケーキです。まちがいなくお口には合うはずですよ」
 と、ちょっとした土産を持って、自信満々にやってきてくれる。
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