割り開いた襟の中へ手を差し入れる。
古傷の凹凸を指先で擦るように撫で、時折肉の盛り上がりに爪を引っ掛けた。
こそばゆいのだろうか、右目の肢体が微かに戦慄き、男は唇の端を吊り上げる。
「っ…久しく乗り気じゃねえか」
「欲情した」
「少しは暈せ馬鹿」
右目に息の整う間を与えず、男は剥き出された胸へと唇を落とし、じゅるりと吸う。
口唇を窄め、拡げ、唾液を塗りたくるよう食んだ。
固い筋をやわやわと前歯で扱き、わざと頂へは触れずに周りを揉みしだく。
それこそ執拗に、雄々しい乳房の形を変えるほど力を込めれば、右目と畏れられる男の鼻から甘さを孕む吐息が抜けた。
「好きだ小十郎」
「は…御託は良い。さっさと…入ってこい」
「まだ駄目、まだ、未だ」
「焦らすんじゃねえ…!」
急かす声音に右目の帯を抜き去り、丸太のような太股を押し開く。
仄かに湿る下帯が淫らである。
色欲に染まった喘ぎを唾液ごと共有し、男はふと明かり取りの窓を見上げた。
白む気配のない宵の会瀬は、始まったばかりだ。
【視線だけでなく魂さえも】
(奪われて囚われて身動きすらとれなくなるの)