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探Qsss


隠れ家へと戻った白い女の報告を耳にし、ソファへ身を沈めていた知識は口内の紅茶をお高そうなテーブルへとぶちまけた。
せき込む背をさする女の華奢な手を余所に、気管へ流れた水分はなかなか外へと出てくれない。


「あらあら、」
「ユリエさんすいません、ありがとうございます…」


喰えない笑みを浮かべるユリエに眉を垂らし、知識は此処に来られなかった黒尽くめの男へと思いを馳せる。
人一倍自分の仕事にプライドを持っている癖に、変なところで野心があり、Qクラスの面々と相性が悪く、リュウどころかユリエにも蔑ろにされていて、依頼人にすら気持ち悪いと定評があり、サラリーマンに変装した際には乗り合う交通機関全てで痴漢と間違われ、オールバックがとにかく似合わない、男。
後継ぎの己を心底慕い、敬うあまり間違った方向にどんどん爆走する地獄の番犬、ケルベロス。


――オヤジ、孫大好きだからなー


自分の跡をリュウに継がせてその補佐を任せたいと告げられたとき、知識は特に何の感慨もなく頷いていた。
冥王星はトップ一人で犯罪計画を立てているわけではないし、誰がトップになろうと仕事は変わらない。
正直ハデスめんどくさいと思っている知識には渡りに船の話だったのだが、ケルベロスには納得がいかなかったらしい。
何となく可哀想に見える顔をくにゃりと歪ませて、オヤジをじっと睨むケルベロスは側から見ていて少し気持ち悪かったとは、その時の知識の言葉である。


「ヘマやってリュウ刺して殴られて捕まったのかあの馬鹿犬」
「どうしようもないですわね」
「そだねー…、リュウは大丈夫なのか?」
「リュウ様の命に別状は有りません」
「オヤジ様もなぁ…放っとけばいいのにリュウに構うから、益々意固地に突っぱねるんだって…」
「複雑な年頃なのですね」
「あの位の時はしょうがないよ。ま、俺にはQクラスみたいな友達居なかったからこんなんなっちゃったけどな」
「貴方様は十分魅力的ですよ」
「ありがとユリエさん。あのお馬鹿はその内脱獄するだろ…取り敢えず最低限だけ支援したら放置して計画を進めてくれ」
「畏まりました」


退室したユリエを視線で送り出し、知識はぐったりと横たわった。
犯罪の種を育て美しい芸術の花〜云々と常々口にする存外ロマンチストなケルベロスは、実力も伴った立派な大人なので心配は要らないのだろうが、やはり少しは気に掛かる。
リュウでは無く己をキングハデスへ祭り上げたいのか、それとも単に個としてリュウが気に入らないだけなのか。
知識は暗がりの中ケルベロスの意図が解らず数分ほど頭を抱えていたが、やがて考えても無駄なことだと立ち上がり、ぐっと背を伸ばした。
数日中に己の元へのこのこと…否、情けない顔でひょこひょこと現れるであろう番犬の、伸びたヒゲぐらいは整えてやろう。
オヤジ様にはこっぴどく叱られるだろうから、出来うる限り庇ってやろう。
襲い来る眠気に従い、少々の寂しさを覚えつつ知識はゆるりと瞼を閉じた。


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ケルベロス、可愛いよケルベロス!


主:黒王知識
・ハデスの実子、リュウの叔父。
・183cm
・三十代
・幼少期より冥王星の教育を受けたため、善悪の概念がない。人の生き死にもビジネスだと割り切っている。なんだかんだでケルベロスが好き。
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