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姿を見れば嬉しい
声を聞けば嬉しい
触れられたいと思う
触れたいと思う
困った顔が好きだ
怒った顔も、笑った顔も、悲しむ顔も、喜ぶ顔も、照れる顔も、その強面に浮かぶ些細な表情全てが愛おしい


名を呼ばれ振り返る。
足音や気配でとっくの昔に気付いていたが、己を呼ばう声が聞きたくて、わざと知らぬふりをした。
当たり障りのない挨拶に、四方山話。
他愛もない事で微笑む眼前の男に、ふと胸がぎしりと軋んだ。


どうした、
なんでもない、
嘘を吐け
嘘じゃないよ


だんだんと吊り上がる相手の眉に、じわりと視界が滲む。
悲しいわけでもないのにどうしてこうも苦しくなるのか、いまだに上手く理解できない。
何故、どうして、なんで。
そんな言葉ばかりがぐるぐるとはらわたに溜まり、行き場のない痛みは緩やかに、けれど些かの容赦もなく目頭を苛む。
ころりと落ちた涙に、男の広く厚い肩が揺れた。



「來海、」
「小十郎、」



伝えたい、言葉にしたい。
胸の内すべてをさらけ出して、叫んで、抱きしめて、口付けて、


――あいしてる


気が付けば抱き締めていた。
あいしてるあいしてると繰り返し涙を流す男とは、なんと滑稽なのだろう。
しゃくりあげる己の背を抱き返す腕の確かな力、照れと困惑が入り混じったような声で囁かれた肯定の意に、ただぽろぽろと泣き続けた。





【飽和する感情】
(正しい愛の示し方なんて)(誰も教えてくれなかった)
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