・豊臣全盛期
・ハメられてピーチ姫中
・豊臣軍はだいたい友好的
光のない夜である。
月は隠れ、星は隠され、松明もなく、闇が身体を包み込む。
伸ばした手が漸く目に映るような暗がりで、來海は此処には居ない誰かの名を小さく小さく口ずさんだ。
断続的に紡がれる誰かの名は、やがて聞き取れるほどに大きくなり、そして唐突にぱたりと止んだ。
大きな城の広い座敷牢の隅で膝を抱えてうずくまる男は、酷くちっぽけで。
普段の彼を知る者から見れば、死んでいるのと変わりない、そんな姿だった。
どたどたと足音が響き、暗闇に慣れた網膜がちらちらと刺激を受ける。
何とは無しに騒がしい気配を感じ、來海はぼんやりと顔を上げる。
今や虚と成り下がってしまった群青の瞳が、鮮やかな朱に塗られた格子の向こうに佇む一人の男を捉え、微かに揺れた。
「蝋燭も点けずにそんな端っこで何してるんだお前さんは」
男は眉を垂らし理解不能だと言う雰囲気を全身に漂わせながら、手に持っていた燭台と盆を足下へ下ろし、扉の錠前に鍵を差し込む。
持ってきた荷を再び手にした男は足で扉を押し開け、牢に入るや否やぎょっとした面持ちで來海を見詰めると、溜息をこぼして唇をひん曲げた。
「小生はお前さんに泣かれると、どうして良いのかわからん」
燭台から備え付けの行灯に火種を移し來海の傍に腰を下ろすと、來海の監視役である黒田官兵衛は己の着物の袖でごしごしと來海の顔を拭った。
涙の跡が消えたことに満足気な笑みを浮かべる官兵衛につられ、來海の双眸がとろりと溶ける。
「や、なんか人恋しくて」
「餓鬼じゃああるまいに」
「発作みたいなモンなんだよ。寂しい、悲しい、人恋しいって穴の空いた心が泣くのさ」
「厄介だな」
「全くな」
いつの間にか手に持たされていた猪口へと注がれた酒を胃に流し込む。
喉から下に焼けるような熱さが広がり、來海は思わず息を吐いた。
隣で鼻歌交じりにいそいそと手酌する官兵衛の肩へ頭を預け、腕に腕を絡ませる。
ぎゃあと喚いた官兵衛の顔を見上げると耳が赤くなっていたので、満更でもないのだろうなと憶測し、來海は官兵衛の胡座の上へと座る位置を変えた。
「おおおおおい白雪、」
「小僧っ子は冷たいし、蝶々は言うこと成すこと棘だらけできっついし、ゴリは素っ気ないし、虚弱体質は嫌味ばっかだし……しょうがねぇからお前で我慢してやる……から、俺に構え」
肩口にぐりぐりと額をこすりつける來海に、羞恥の色濃い様子で何度も首を縦に振る官兵衛の姿があったとか無かったとか。
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寂しがりは標準装備。
官兵衛の身長が225だと風の噂で聞いて思わずたぎってしまった。
穴熊DEKEEEEEEEEE!!!!
來海は195なので、かないません。
ちょっとこれなら甘えられんじゃね?
息抜ける安全地帯になれるんじゃね?