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sssトリポケ




なんとまぁ脆いイキモノなのだろうか。

散歩の途中に見つけた死にかけの子供を見詰め、ポッポは溜め息を吐く。
枯れ木の虚に縮こまり小さな身体を更に小さくする人間の子供は、時折ポッポの住処であるシロガネヤマにやって来る"人間"の印象とは大きくかけ離れていた。
ああこれが進化前の人間なのかとアタリを付け、ポッポは子供に近付いた。
進化前であるならば危険視することもない。


怯えの色濃い双眸、塩辛い涙の匂い、かじられた跡のある雑草が散らばっている。
可哀想に、腹が減ってその辺の草を口に入れたのだ。
この草は不味いばかりで、毒にも薬にもならない。
生まれたばかりの雛だって親に教わることだと言うのに、なんと無知なイキモノなのか。
さぞかし苦かったことだろう。可哀想に。



人間だろうがポケモンだろうが子供は子供。
大人は子供を守るもんさと一人ごち、目ぼしい餌を探すためにポッポは翼を広げ森の奥へと飛び立った。


はてさて、人間は一体何を食べるのだろうか。



○ポッポ♂Lv:56
○棲息地:シロガネヤマ
○NN:ラウムさん


sssポケトリ


激痛に目を覚ますと其所は何処かのベッドの上だった。
久しく見ていない"天井"に、寝ぼけ眼を擦る。
刹那、元の世界に戻ったのかと錯覚したが、枕元で丸くなる虫やら毛玉やらにどうやら違うようだと思い直した。
物の少ないシンプルな部屋、窓から見えるのは青い空の下ぽつぽつと存在する小さな民家と畑。
どうやら私は森を抜けたらしい。


気持ち良さそうにぴすぴすと眠るキャタピー、ピカチュウ、ガーディ、パウワウ…、激痛の正体は寝ぼけて傷へ擦り寄ったニドラン♂だった。
清潔そうな服の前をくつろげ、オニドリルに貫かれた肩を見る。
糸の代わりに白い包帯が巻かれ、何らかの処置がなされていた。

ポッポさんの姿が見えない、彼はどこにいるのだろうと辺りを見回した時、見覚えの有りすぎる人物が部屋のドアを開けた。


「目が覚めたようじゃな」


よかったよかったと笑う壮年の男性は、少し若い気もするが何処からどう見てもオーキド博士その人であった。
そしてその博士の肩に止まり、此方を一瞥して"仕様がねえ奴だ"と言いたげにぽぽーと鳴いたポッポは間違いなくポッポさんですありがとうございました。


「ポッポさ、ぃっ!」

遠目で見たところ怪我らしい怪我も見当たらない。
いつもの堂々としたその姿に嬉しさが込み上げ、つい両手を伸ばすと、有り得ない程の痛みが脳味噌を直撃した。


「キャター…」
「ぴか」
「ぎゃう…」
「くぅん…」
「パウワゥ…」
「ぽぽ」


いつの間に起きたのか、周囲に集まったエサ'sが一斉に小さく鳴く。
何て言ってるのかは解らない、解らないけどこれだけは言える。
たぶん今私バカにされた。
ポッポさんなんか鼻で笑ったし。

ばさりと静かな羽音が響き、怪我とは反対の肩が重みで下がる。
オーキド博士の元から離れたポッポさんは、先程とはうって変わった優しげな声音で私を労るように一鳴きし、艶やかで温かな羽毛を頬に押し付けた。
それを皮切りに小さな身体達がわらわらと私へ群がり、各々が私をあやすような仕種をするものだから、鼻の奥がツンと痛み涙腺が崩壊する。

怖かった、死ぬかと思った、死んだと思った。
ポケモンとは、あんなに怖い物だっただろうか。
一対一でも無い、ターン性でも無い、瀕死になるのは勿論、放っておけば最終的には死んでしまう。
幼い頃からゲームで知っていた世界は所詮ゲームなのだと思い知らされた。



【りあるわーるど】
(森で遭難していたと正直に話したら、オーキド博士に軽く叱られた)
(とりあえず嘘を吐く必要性が見当たらないので、戸籍がないことを証拠に異世界人だとカミングアウトしするとあっさり信じられて拍子抜けした)
(どうやらポケモン次第では有り得ることらしい)
(ポケモン世界まじパねぇ)
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