や、天女様!
初めましてだねえ。
俺様は…って自己紹介いらないか。アンタ、旦那達の名前知ってたもんな。
竜の旦那の事も、右目の旦那の事も、西海の鬼やあの毛利に徳川石田…ああ数えるのめんどくさい。
とにかく皆アンタに骨抜きだからねー
お陰で最近戦もなくてなかなか暇なのよ俺様達。
…姿が見えなかった?
そりゃそうでしょ、俺様真田忍隊の長よ?
素人に見付かるようなヘマはしないわけ。
旦那の傍に居てナンボのお仕事ですから護衛はしてたけどねー。
何で私を好きにならないのかって?
冗談上手いよね天女様!
誰がアンタみたいな汚ったねーあばず…尻軽な醜女に…あ、怒った?ゴメンねー、でも本当じゃん。
最初は竜の旦那でしょ?それからウチの旦那、長曽我部に毛利の旦那、まぁ、ほぼ全員と同褥手前で『清らかな乙女ですぅ』とか言われてもちゃんちゃら可笑しいからね!俺様笑っちゃう!
…私が嫌いなのか?皆をたぶらかしたから殺しに来たのかって?
まさか!!
俺様はね、お礼を言いに来たの。
天女様…アンタのおかげで×××ちゃんが右目の旦那を諦めてくれたから!
あ、×××ちゃんって判る?
アンタが空から落ちてきたとき受け止めた男がいただろ、すっげー美人の。
髪が長くて、背が高くて、体つきが良くて、声も良い、男前の。
…え?名前が聞こえない?
×××ちゃんだよ×××ちゃん。
×××××××ちゃん。
アンタが来る前はさー、そりゃもう右目の旦那にベッタリだったわけ。
義兄弟とか、昔馴染みとか言ってさー、二人の世界作っちゃってさ。
途中から惚れた俺様の出る幕なんか無いって感じ。
竜の旦那も右目の旦那も悋気の虫でしょ?
とりつく島も無いってこの事だよね。
オマケに風魔の奴なんか×××ちゃんの忍気取り。
ホント嫌になるくらい。
ん?ぎゃくはーしゅってなあに?
皆から惚れられて、最強で?はーれむ?ほせい?
ごめん良くわかんないや。
ま、とにかく。
天女様に惑って終生番の誓いをアッサリ捨てちゃった右目の旦那の仕打ちに傷付いて傷付いて傷付いて傷付いて修復不能なまでに絶望したかわいそうな×××ちゃんを、俺様が見事に手に入れたってわけ!
×××ちゃんって、未来の言葉で何だっけ…めんたる?精神面が弱いから、そこ重点的に狙ってたんだけど決定打がなくてさ。
俺様もう本当にアンタに感謝してるんだから。
【ありがとうございました天女様!!】
にしても酷いよねえ、騙されたとか操られたとか騒いでるけど、そんなの全部自業自得じゃん。
現に俺様も×××ちゃんも平気だったし。
幻術が切れたからって、何もこんなところに閉じ込めなくてもねぇ…
最近×××ちゃんが右目の旦那を思い出すみたいだし、右目の旦那も右目の旦那で×××ちゃんを探してるようだし。
ねえ天女様、こっから出たら、また幻術使える?
俺様、どうしても×××ちゃんを返したくないんだよねえ。
他は全部あげる、あ、旦那以外にしてね。あの人いないとウチの国回らなくなっちゃうから。
その他は全部あげるから、×××ちゃんだけは俺様にチョウダイ。
ね、天女様!
(今にも泣き出しそうな顔で己を探す男に、ご機嫌な忍は穏やかな笑みを向けた)(逞しい腕の中、己以外目に入っていないかわいそうな男にお前しか居ないのだと囁かれ、ご機嫌な忍はもっとご機嫌になりましたとさ)