暖かい日は縁側で、晴れた日には屋根の上。
大抵どっかの日溜まりに落ちている、馬鹿一人。
気づかれぬ程度に息を吐き、磨かれた廊下に散らばる黒い髪を撫でた。
時たま遠くを見るように寂しげな眼差しを飛ばすこの男が、本当の弱みを己に見せる日が来る事は無いのだろう。
白い頬に手を伸ばし、躊躇いの後、親指で唇をなぞる。
掠れた吐息に胸が痺れた。
ーー…もっと触れたい。
この腕に閉じ込めて、どろどろに溶けるまで甘やかし、愛してやりたい。
誰一人知らない座敷の牢へ閉じ込めて、コイツを惑わすありとあらゆる外界の厄災から護ってやりたい。
そう考える度に、薄汚い欲が足下から這い上がり、絡み付いて離れなくなる。
清らな身体を犯して、侵して、穢して、汚して、泣かせて、啼かせて……――
(愛してやる、)
吸い寄せられるように両の手を喉仏へと掛け、ゆっくりと力を入れ、名を呼ぶ声で我に帰った。
「小、十郎…」
「……っ!!」
慌てて手を退けるものの、起きたわけではないらしい。
男はふにゃふにゃと微笑み、
「……馬鹿、あんま強く突くな……紫の汁出るって……ほら赤くなっただーが………うわ、臟腑出た…………ぷっ(笑)」
(何の夢だぁああああぁあああああああ!!!)
似非シリアス(笑)