おかしい、と気付いたのはいつからだっただろう。

それなりに大団円を迎えた一周目、泣き出しそうな眼をした赤い外套の武人に、ほんのすこし未練を抱いた。

インターバルなく始まった二周目、前回敵だった筈の赤い暗殺者とそれなりに意気投合した。

休憩を挟まず三周目、目が死んでる緑色のイケメン槍兵と電子の海に心中した。

休む暇なく四周目、兄貴と呼びたくなる青い槍兵とモラトリアムを駆け抜けた。

そろそろ疲れた五周目、まさかの赤い暗殺者がおかわりされていた。

いい加減磨耗してきた六周目、まさかの赤い外套がおかわりされていた。

労基法が気になり出した七周目からずっと、おかしい。
労働組合を作ろうと決意した八周目、時間外手当てとかあっても良いんじゃないかと思い始めた九周目、ここまで来たらボーナスを引き出すしかないと決心した十周目、以下エトセトラ、エトセトラ。
お月様、どうやら、サーヴァントを選ぶ選択肢がバグっているようです。



【赤い外套の武人】一択ってどういうことなんだ。

現れて間も無くドールを灰塵と化したアーチャーは、薄れ行く意識に崩れた俺の体をいとおしげに抱き留めた。


「私だけのマスター、もう離しはしない」


なんとなく、
詰んだ気がした。