妙なことになったものだと頭を抱えた。
眼前には自らのサーヴァントであるランサーが、死んだ魚のようなはちみつ色の目でじっと此方を見つめている。


『貴方はいつ、俺に自害を命じるのでしょうか、』


決闘場から帰還したマイルームの中で、ランサーは跪いたまま唐突にそう切り出した。
驚く此方を不思議そうに、けれど無表情に見上げている。

させるわけがないだろう。

苦く呟き眉を寄せれば、ランサーの肩がふるりと震えた。
…と言うか、サーヴァントに自害なんかさせる魔術師がこの電脳世界にいるのだろうか?
サーヴァントの死は、そのま自分の死に直結すると言うのに。
今はまさしく聖杯戦争中であり、しかも次は三回戦。
まだ自分の中で消化/昇華もできていないけれど、闘う意味を見つけなさいと言った老騎士の言葉を胸に前へ進もうと心に決めた矢先の、この、ランサーだ。
これから先、闘いはより苛烈なものとなるだろう。
サーヴァントとの信頼関係無しに勝ち進められるような物でもない。


真名も、宝具も、なにも知らないけれど、それは不甲斐無い最底辺魔術師である己の所為だ。
ランサーに思うまま槍を奮わせられないのも、闘いの度に苦戦させてしまうのも、全ては俺が至らない所為だ。
主とも呼べないような人間に傅かなければいけないなんて、騎士道の体現者とも言えるランサーには耐えがたいことなのだろう。


「そのような、ことは…」

俺を見てくれ、ランサー。


膝を折り、困惑した様子のランサーと目線を会わせた。
固く大きい両手を確りと握り締める。


へっぽこな主でごめん、ランサー。
まだ記憶も戻ってないような、からっぼな俺だけれど、ランサーの望む"主人"になれるよう頑張るから、だからもう少しだけ我慢してほしい。

「白野、殿…」

必ず、きっと、お前の力を取り戻して、ランサーが誇れるようなマスターになってみせる。
自害なんかさせるものか。
俺達は一蓮托生だ。
お前が死ねば俺も死ぬし、俺が死ねばお前も死んでしまう。
それは嫌だ。
死にたくないからって気持ちもあるが、それ以上に、選定の場で俺の手を取ってくれたお前に、俺を背に護り闘ってくれたお前に、そんなことはさせられない。
いつか、必ず報いるから、だから、もう少しだ、けっ!?


ぶわっと。
文字通りぶわっと、ランサーの瞳から涙が溢れた。
掴んでいた両手が引かれ、ランサーの頑丈な胸板に頭を押し付けられる。


「俺のあるじ…、俺だけのあるじ…、俺の、白野、殿」


嗚咽が漏れないように歯を食い縛るランサーの背を撫でながら、自サーヴァントのマトリクスが段階すっ飛ばしてEXTRAになった音を、信じられないような気持ちで聞いていた。
少しだけ、ほんとに少しだけ、これが献身的な美少女サーヴァントだったらな、と思ってしまったのは、俺が健全なオトコノコだからだろう。




【忠義(真)といっしょ!】
(主、お食事ができました!)
(ありがとうディル、出来れば調味料を使ってください)
(主、寝床を設えました。今日からこちらでお眠りください!)
(ハイジのベッドだ…何故隣に寝るんだディルムッド)
(護衛のためです)
(ソウデスカ)

(主!主!)
(犬だ、犬がいる…!)




クラス:ランサー
マスター:岸波白野
真名:ディルムッド・オディナ

筋力:A+
耐久:A
俊敏:A++
魔力:B
幸運:C+

レベル上げ大好きで凝り性のマスターが全アリーナ全エネミー行動パターン開示した結果、魂の改竄が酷いことになったよ!
まさかの幸運E脱出でランサー狂喜乱舞。

四次ループ槍が心折れた状態でザビ男に召喚される。
最底辺なマスターに失望しつつ、どうせまた自害だろ解ってるよと自暴自棄気味だったが、ザビ男のイケメン魂EXに傷心を撃ち抜かれた。
忠義(偽)の為望み通りの主人に光源氏しようとしたが、気がついたら忠義(真)に調教されていた。
あるじだいすきEX。


最後は勿論一緒に分解エンド。
凛の脱出、皆の電脳死取消&幸せをインプットしたザビ男、【永久にともに】と願ったランサーの所為でループ決定。