※ループの先
擦れ違う白衣の医者/同胞が霊子となって溶けた。
安堵に崩れそうになる膝に力を入れ、駆け寄ってくる凛に不出来な笑みを向ける。
泣きそうな/嬉しそうな凛の表情を心に刻み付け、サーヴァントを振り返る。
傷だらけの従者は、静かな鋼色の瞳でこちらを見ていた。
階段の先の筐体を見上げる。
その先に広がる母なる海へ思いを馳せる。
夢は、終わってしまったのだ。
アーチャー
「何だね、マスター」
頼みがあるんだ
「内容如何によるが、言ってみたまえ」
皮肉げな答えには、隠し様の無い激情が滲み出ていた。
未だ砕けない夫婦剣を握る拳がぎちりと音をたてる。
選択肢を間違えたら、なんて考えたくもない。
凛、最後の最後で一人にしてごめん。
アーチャー、つれていくから。
>【令呪をつかう】
ばしゃん、と。
夫婦剣が足元の水溜まりに落ちた。
唖然と目を見開くアーチャーの手を取り、頬に手のひらを宛がう。
練鉄の英霊、俺だけのサーヴァント、俺だけのアーチャー、俺の【無銘】。
「マス、ター」
ごめん。でも、嫌がっても駄目だ。引き摺ってだって、つれていくから。
「この期に及んで嫌がるとでも?やれやれ、とんだ薄情者だと思われていたようだな…私は悲しいよマスター」
……そう、なのか?
呆れたように当たり前でしょと溢す凛へ苦笑する。
そうか、これが人間の当たり前なのか。
赤いあの子に感謝と別れを告げ、赤い従者の腕を引く。
靴音だけが響く空間に、小さな声で愛してるよと呟いた。
絡め繋いだ指先に力がこもる。
無銘は、俺も、と。
浅黒い肌を朱に染めた。
【これが最高のバッドエンド】
願わくば、また。
この愛しい名も無き英雄が、この手を選んでくれますように
令呪使用時に凛ちゃんを助けて的な事を口にした瞬間ザビ男の胸から剣が生えます。
やっと俺のものになった、と笑いながら、死体に唇を寄せる安定の拗らせヤンデレな紅茶さん。