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sss隊小

※ひたすらちゅっちゅするだけ





ちゅくちゅくと濡れた水音が耳を犯す。
小十郎の後ろ頭に回した手で髪を撫でれば、窺うように開かれた片方の目蓋が細まり、背にしがみつく腕の力が強まる。
ん、ん、と洩れる吐息ごと唇を貪り唾液を啜った。
舌を絡ませ、熱い肉の滑らかさと弾力性を味わう。
表面のざらつきを小擦り合わせ裏面を撫でれば、飲みきれない唾液が口内から溢れ落ちた。
どちらともなく遠ざかり、柔らかな微笑を口許に浮かべる。


「足りねえな」
「同感」


互いの袖で己を拭えば視線がかち合い、そしてまた互いの頭を引き寄せ固定した。
唇を合わせ、ちゅうと啄む。
侵入ってきた舌に上顎を舐められ、男はんんと肩を揺らした。
凹凸を丁寧に往復し、小十郎は男の歯列をなぞる。
頬肉を掠め、舌の根を擽り、戯れるように弄ぶと、反撃だとでも言いたげに男が深く入り込むから堪らない。
堅固に瞑られた小十郎の目蓋の縁が、熱を帯びたように赤くなった。
愛惜しげに小十郎の耳をいじる男の眼には、艶っぽい色が浮かんでいる。

男の手が肉置き豊かな小十郎の尻へと伸びた。
固すぎぬ筋の手触りに夢中で撫で回せば、負けじと小十郎が男の白い太股を揉みしだく。


「褥、行くぞ」
「も…良いだろ、此処で」
「背中痛めるよ小十郎」
「…てめぇの所為で腰が抜けたんだよ」
「…正直俺も抜けた」
「…どうやって褥まで行くつもりだったんだ」
「お前こそ」


【そんなの相手頼みに決まってるだろ】
「張り切りすぎた」
「歳を考えろ阿呆」
「お前それ諸刃の剣だぞ…」

ss迷鬼、若小と隊長




ぬかるむ土を踏みながら、小十郎は何の気なしに隣を歩く男の横顔を見た。
前を見据えるその顔に心中を読み取ろうと凝視するも、何の感情もない面の皮からは到底答えなど導くことはできない。


先日、何故己が雷なのかと問うた小十郎に、男はふざけた様子で口喧しいからだと茶を濁した。
言いたくないのか言わずとも良いと判断されたのかは知らぬが、子供扱いしやがって、と。
小さな苛立ちを胸に、わざとらしく右足を水溜まりへ下ろし、小十郎は男の袴へと泥水を引っ掛けた。


「…冷たい」
「悪かったな」


土色に濡れそぼる踝から目を逸らさずに、口先だけの謝罪を投げる。
気にするなと言う男に、己とて足袋が濡れたんだ馬鹿と内心で毒付き、小十郎は唇を噛んだ。
こんなことをするから余計に子供扱いされるのだと理解しては居るのだが、男の困ったような微笑がどうしようもなく小十郎の神経を逆撫でる。
親が子を見るような、兄が弟を見るような、そんな目が欲しいのではない。


「お」


ふと男が立ち止まり、番傘を斜めに空を仰いだ。
いつの間にか、番傘をぼつぼつと叩く雨粒の耳障りな音が消えている。
晴れたなぁ、と。
眉を垂らした男が笑う。
暗雲の晴れた空の色が、水溜まりできらきらと輝いた。

小十郎は番傘を奪い取り、己の手より固くて大きな男の手を強く引く。
よろめく男の前を歩きながら、悪戯めいた声音で『俺が神鳴りならあんたは稲だな』と呟いた。


「え、俺の何が稲なんだ」
「教えねえ」
「何だよ気になるだろ」


ぶうぶうと唇を尖らせる男の右肩を盗み見、小十郎は眉根を寄せた。
己の乾いた肩とは対照的な、水を吸い色を変えた男の羽織が風に翻る。
小十郎はひらりと揺れた其れを軽く睨み、近い将来必ず肩を並べて歩いてやるからなと繋いだ手に力を込めた。



【いなづまのわるつ】
(神鳴りは稲妻とも言うんだよ)




―――――――――――
対等に見られたい若小(16)と保護者気分な隊長。

sss迷鬼、隊長と若小




何やってるんだ馬鹿と悪態を吐かれ、男は群青の双眸を細めた。
止まることを知らぬ雨粒に身体を打たれる中、ふと空を見上げれば刹那白い光が視界を焼いた。


「雷だ」
「良いからさっさと傘に入れ!」


大きな獣の唸りのような雷鳴に、男は薄らと口の端を上げる。
濡れるがまま突っ立っていた事に立腹している小十郎の手から番傘を取り上げ、男はさも嬉しげに微笑んだ。
小十郎は片眉を跳ね上げ、男に問う。
神鳴りが怖くはないのかと。
男は小十郎の肩を抱き、傘の中へ引き寄せた。
髪から伝う雫がぽつりと落ち、小十郎の頬を滑る。


「似てるから、か」
「何に」
「お前に」


真っ直ぐな焦茶の眸に『何処がだよ』と詰め寄られ、男はほんの少し考える素振りを見せた後、からかうような口調で『ごろごろと口煩いところかな』と応えた。
口煩くて悪かったなと怒り出した小十郎に男が膝蹴りを貰ったのは、言うまでもないことである。



【春雷】
(心に焼き付いて離れぬ、鮮烈なお前の美しさ)(まさに荒ぶる雷電その物だ、なんて)(言える訳もない)



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