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弟×ルキアSS


がくん、と世界が揺らぐ。
足音が遠ざかり、巻き上がる砂ぼこりが乾いた空に舞った。
甲高い笑いが己を嘲笑う。
無様に膝を付き、未練がましく足音の行方へ顔を向けた。



【after the festival】



「おい貴様、この兎は貴様のものだろう」


腰掛けていた大木の朽木から見上げるように声の主を探す。
天を仰げば眩しい日の光が当たり、厚く巻いた布の下で目を細めた。
そちらではない、と。
幼い少女の呼び掛けに白い杖を揺らす。
少女は短く息を飲み、幾分元気の減った声音ですまぬと頭を下げた。


「貴様、兎の根付けを持っていただろう。白い石で目に赤い玉がついている」
「…ええ、ですが」


先日、持っていかれてしまいまして。
目前に降り立った気配に交わらぬ視線を向ける。
声の出所からして座っている己と大差がない。
随分と小さい子供だと内心で苦く笑み、大切なものだったのですがと囁いた。
眉を垂らし少女へと唇だけの笑みを見せる。
少女は小さな手を己の手へと伸ばし、開いた掌へ静かに石の根付けを置いた。


「これで間違いないか」

握らされた兎は、少女の体温で微かに熱を帯びていた。指先で探るよう石の凹凸をなぞってゆけば、馴染んだものだとすぐ知れた。
俯いていた顔をゆるりと上げ、ありがとうございますと呟く。


「礼など要らぬ、あやつらが気に食わなかっただけだ」
「そうでしたか…しかし、これは私の宝物なんです。何度お礼を言っても足りません」
「そんなに大事なものなら、持ち歩かない方がいい。この辺りは物騒なのだ、よもや知らぬとは言うまい」
「はは…流石に、体当たりされたのは初めてでしたね」


傍らの杖を撫で、苦笑した。
本当に、慣れぬ事等するものではない。
少女はすたすたと歩み寄り、何の躊躇い無く隣へと腰を据える。
好奇を滲ませた視線に擽られ身動ぎをすれば、ばつの悪そうな雰囲気で貴様は死神かと尋ねられた。


「訳あってこのような成りですので、お情けで録を食ませて頂いておりますが、一応は」
「見えんな」
「よく言われます」


優男然とした風貌である自覚は有る。
もうそろそろ古参に数えられる歳だと言うに貫禄が一向に伴わないのは、最早家系であるのかもしれない。
まあ一番上が上だし、と。
乾いた笑みを口の端に浮かべれば、焦ったように少女が続けた。


「悪い意味ではないぞ!」
「ありがとう。私はユキト、雪の兎で雪兎と申します。差し支えなければ貴女の名を教えていただけませんか」
「雪兎…良い名だ。私はルキアと言う」


宜しくと笑って己と握手を交わすルキアの眸を布越しに見詰め、目を凝らす。
途端浮かび上がる、活動写真のような光景に安堵の息を漏らした。
一文字一文字を噛み締めるように少女の名を呼ぶ。


「ルキアさん、ですね」


赤い少年、墓、冷たい横顔、砕ける憧憬、甘草色が舞い、白壁が映る。
蛇の目、鳳凰、飛び散る赤、朱、紅!


「よろしければ、私と友達になっていただけませんか?」


物語の鍵と成り行く少女は、屈託のない笑みで力強く頷いた。




―――――――――――
ノマ組ファーストコンタクト
出会いはちみっこの頃、勿論偶然ではなく必然
先見の力を存分に発揮し、盗みの起きる時刻、ルキアが側に居ることを計算した上で根付けを盗ませた

とある目的のため盲目を装いルキアに接近
ハンデと言う免罪符をフルに使用しつつルキアの懐へ潜り込む
ロリコンではない。
段々ルキアに惹かれていき、終盤(原作付近)では罪悪感だらけ

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