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sss実話混じり





美人が怒ると怖い。
そんな俗説を体感しつつ、政宗は痺れ始めた足をもぞりと動かし眼前に座する男の顔色を窺った。

黒い着流しを身に纏った男は切れ長の瞳を政宗に向けたまま、淡々とした口調で説教を続けている。
注意力の散漫から始まり生活態度から臣下への振る舞いまで、時に重箱の隅を突き、時に誰しもが気付いていながら指摘できなかった部分に至るまでを淡々と…ただ淡々と口にする男に政宗は泣きそうだった。
男とは長い付き合いになるが、困ったような顔で注意を受けたことはあれど、ここまで徹底的に駄目出し混じりの怒りを向けられたことは初めてだった。
最初こそ異国語で余裕も有った政宗だったが、一切表情を変えず己を叱る男に対し徐々に威勢が削がれ、今では小さく掠れそうな声でごめんなさい、もうしませんと頭を下げるだけである。



奥州筆頭伊達政宗は今、全力で叱られていた。



「ちょっと右目の旦那、…良いの?」
「猿飛か…今ウチにゃ有益な情報なんざねえぞ」
「や、大将がねー、独眼竜の旦那の動向を探りついでに手合わせできるか聞いてこいって…じゃなくて」


どうしたの、あれ。
お馴染みの笑みを張り付けた佐助に、小十郎は眉値を寄せた。
鍛え抜かれた体躯にばちりと走った蒼白い火花が、小十郎の機嫌の悪さを現している。
ほんとに何しちゃったの竜の旦那。
あの場に居るのが己じゃなくて良かったと、滅多に見られない男の無表情に佐助は脅えた。


「お、いらっしゃい佐助」
「來海ちゃんやっほー」


結局、男が本格的に啜り泣き出した政宗を解放したのはそれから二刻程後の事だった。
説教をする人間が男から小十郎に代わった所で、佐助は穏やかに微笑む男へ引き吊った表情を向けた。



【家出未遂二回目】


「で、結局旦那は何をしたの」
「小十郎を美少年と交換しようとしたんだよ」
「…は?」
「『景綱繋がりで、そっちの片倉小十郎と交換なら渡しても良い』…だってよ。彼方さんは断りの文句でそう言ったみたいなんだが…」
「のっ…たの、旦那は」
「ノリノリでな。即答した。小十郎も流石に切れて、大変だったんだぞ」
「そりゃ怒るわ」
「極殺状態で『やってられるか』って暴れてな、さっきまで出てくって言って凄かったんだぞ」
「だからあの正座ね」
「俺も久々にちょっと頭に来た」
「…自業自得だねぇ」
「全くだ」









―――――――――
史実らしいです。
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