厄介な事この上ない。
若さ故の傲慢が見え隠れする青年を前に、小十郎は小さく苦笑を漏らした。
青年は整ったかんばせを歪ませ、小十郎をはたと睨み付ける。
小さく開かれた唇の隙間から、青年の吐息とも取れる声が小十郎に何故だと問うたが、問われた所で素直に答える男ではない。
悔しがる青年を適当にあしらい、小十郎は今此処には居ない話の種に思いを馳せた。


矜持が高い癖に甘えたで、寂しいと声は出さずに己へ縋る。
寒がりで、気が多く、何時も誰かを求めていて、そのくせ誰も内へは踏み込ませない。
途方もない化け物で、笑えるほどに人間臭い。
独りが好きで、独りを嫌う。
欲しがりの、与えたがり。
面の皮だけが抜群に良い、子供好きの大馬鹿野郎。


当人が聞けば三日三晩落ち込むような言いようだが、事実そうなのだから仕方ない。


「諦めな」


あの馬鹿に付き合えるのは俺ぐらいなもんだ。


【あげないよ】
(なにもかもを許された)(唯一無二の男が笑う)
(お前にゃ無理だと)
(微笑う)(嘲笑う)