「こんな夜更けにさぁ、俺様に一体何の用?」



ぐ…と喉元に突きつけられた刃物に面珍しい形だなと見当違いな事を考えつつ、ブラックは普段通りの表情で目の前の男を眺めた。
事の発端は、とある洞窟で使用したアイテムだった。

フレンドリィショップのセールを思い出した山籠もり中のブラックは穴抜けの紐と銘打たれた一本550円の商品で地面に円を作り、入り口に戻ろうとそこへ体を潜らせた。
そうしたら何故だか知らないがブラックは温泉に立っていて、どうしてだか解らないが全裸の男と鉢合わせ、本当に理解に苦しむが全裸の男に刃物を突きつけられたのだった。

のぞきだと思われたらイヤだな、と。
相変わらずズレた考えのイッシュチャンピオンは、首筋を伝う一筋の液体に気が付いた。
十代前半の白く華奢な指先でぬめりを拭うと、月明かりに映し出された手に赤い血が良く映えた。


「あ…痛い」
「え、少し刺さってるから…って違う、危ないでしょ何で動いてんの!?そりゃ切れるよ、刃物だもん!」
「…刃物は危ない」
「何をそんな当たり前な…!そんなことはいいから、君、一体誰。気配もなくこの場所に近寄るなんて…」
「俺は覗いてません」
「そっちかよ!?」



【もうなんなの、結局、今日は特売行けなかった】
(ここ何処ですかお兄さん)
(どこって…武田信玄公が治める甲斐だよ)
(タケダシンゲンコウ?カイ?…知らない)
(…ねぇ、君どっから来たの?忍じゃないみたいだし…もしかして迷子?)
(お兄さん、だれ?シノビってニンジャ?)
(あ、ダメだこの子迷子だ。俺様は猿飛佐助、坊の名前は?)
(ブラック。……サスケお兄さん寒くないの?)
(あ、服着てなかった…べくしっ!)


**********************
佐助は未だに全裸です
刃物に馴染みがない&ピンチには慣れっこなチャンピオンは無表情が相成って肝が座っているように見えるけど実はぼんやりとしてるだけ。
バトルになればイキイキと闘います。
だってイッシュの王者だし。
イッシュ地方で一番強いトレーナー…、戦国で通用するのか?