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sss聖杯



淡く光を纏い現れた人影に、一人の魔術師は膝を折り頭を垂れた。
大柄ながらも引き締まった体つきの人影は、漆黒のサテンを翻し魔術師を見下ろす。


「懐かしい…ひどく懐かしい顔だ。そうは思わないかな、私のトーヤ」
「はい、マスター。此度は不肖の弟子の為、御足労頂きありがとうございます」
「そう畏まるな。せっかくの再会だ、顔を上げなさい」
「はい、マスター」


くつくつと笑む影に、魔術師は口の端を緩めた。
ベルベットを想わせる滑らかで美しい人影の声に、とろりと瞳を潤ませながら。




【おうまいだーてぃ!】



サモワールでお湯を沸かしながら、己は頭を抱えた。
見慣れた…と言うよりも住み慣れた地下洞窟に表し様のないノスタルジアを抱きながら、カウチに腰掛け各種書籍を読み漁る男を盗み見る。


「トーヤ、今日はロシア式にしておくれ」
「はいマスター。御茶請けは俺が焼いたスコーンで宜しいですか?」
「私の可愛い桜の妖精!またお前の手料理が食べられるなんてね」
「マスター、お願いしますから可愛い妖精はいい加減ホントに止めてください俺もう良い年なんです、成人してるんですよ…!!」
「そう怒らないでおくれ、私の可愛いトーヤ」
「マスター!!」


勘弁してくださいと頼み込んだところで、この人は止めない。
むしろ火に油を注ぐ勢いで己をからかい倒すのだろう。
湯気のたつティーカップにジャムを落とし、溜め息を吐いた。


事の始まりは何だと問われれば、首を捻る。
己がマスターと呼び慕い敬うこの人影は、多重転生を繰り返す初期に出逢った【九十九十八】の師、正しく先生(マスター)だった。
時代は明治、鬼子として外国に売り払われた己は、冬のパリで彼に拾われたのだ。
白い仮面から、見世物小屋の檻を酷く嫌悪した眼差しで睨め付ける、オペラ座の怪人に。

それからの日々は実に目まぐるしかった。
時期的にはオペラ座が完成した辺りだったろうか、怪人は十を少し過ぎただけの己へ、有りとあらゆる教育を施した。
初めは言語から、意思疏通が可能になってからは所作や常識、料理、建築、音楽、奇術、殺人術。
未来のトリックや彩文の技術を持っていたとはいえ、もともと【手品師】程度だった己を、【奇術師】にまで造り上げたのがオペラ座の怪人である。
まぁ、頭なんて上がるわけないよね!!


「先生、現代社会に適応しすぎじゃないですか?」
「見なさいトーヤ、まったく、時代と言うものは恐ろしいな!」
「俺はパソコンを使いこなす貴方が恐ろしいですよ、O・G(オペラ・ゴースト)。っていうかパソコンが大丈夫なら電気ケトル買いましょうよ!」
「嗚呼、嘆かわしい…。可愛い弟子にあんな物で淹れた紅茶を飲ませられるなんて!」
「良いですよ要らないですよきちんと淹れますよ!」


初心者とは言えない手付きで複数のキーボードを叩き、発売されたばかりのタブレット端末を弄る師に出るのは苦笑ばかりである。
おいでおいでと白い手袋が手招きする隣へ腰掛け、モニターを覗き込む。
何かの掲示板のようだ。


「お前と同じ転生者達のスレだな。ご覧、今回の戦争を纏めたwikiまであるのだからな」
「スレってなんですかマスター」
「なんだって!?トーヤ、お前は冬ちゃんの掲示板も知らないのか!」
「知りませんよ!」


呆れたようにマウスを動かす嘗ての師へ、己は乾いた苦笑を漏らすしかなかった。








マスター
・九十九 十八(ツクモ トウヤ)
・25歳
・185cm
・ゆっるい魔術師の18代目当主なので、回りからは下に見られがち
・転生歴三桁後半のチート、強くてニューゲーム
・期限は隠匿と創造
・魔術回路は受け継いでない、ファンタジー世界を積み重ねたのが引き継ぎされているため最初から4桁本。開くとき痛みに死にかけたが、35まで死ねない呪いのため死ななかった
・原作知識なし、掲示板から情報を引っ張ってくる日々


サーヴァント

キャスター、もしくはイレギュラー
・真名はオペラ座の怪人
・相性召喚された音楽の天使

弟子として造り上げた十八に育ての親として惚れ込んでいる。
似た者師弟。
と言うよりも、十八が前世から怪人クラスタ。
鱒充鯖充してる音楽陣営奇術師が気障なのは間違いなく怪人の教育の所為。
弾丸論破夢の主人公と同一。



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