ねこのゴロゴロ玉は骨を癒す周波数だというが………

ねこのゴロゴロ玉は骨を丈夫にするというのは有名な話だが、ぐれちゃんは痛いところと反対側の肋骨に顎枕をして体内を振動が伝って患部に届くことを知っていて肋骨折った時は添い寝してくれる子だった。


ぐれちゃんの顎くらいで死にゃしねェのに、患部に直接重量をかけることを嫌って必ず反対側の肋骨を顎枕にして添い寝する。


音は振動であることをきちんと理解している、賢く優しく、おしゃべりとお歌の上手な子だった。


何もそこまで気配り上手にならなくても、と思うほど周囲が本気で心配しすぎて衰弱する前に静かに息を引き取った。


うちでシーバを好むのは彼女だけだった。


シナモンには先に逝った近所の仲良しのれおちゃんと分けるようにと小分けのカリカリをたくさん持たせた。


お寺さんに止められないものは貴金属の塊でも着けてやった。


これはわたしが作ったネームプレートで銀地に金箔を焼き付けて合金化している、この子が最期までお気に入りで下げていたものです。それを取り上げるなんてとんでもない!


………………………半ば強引に持たせた。


800℃は何時間もかければ融解はしても貴金属が完全に消滅する温度ではないはずだが、お骨を拾った時にはなかったので、大事にしてくれすぎてしっかり持って逝ったのだろう。


大好きなシーバと、シナモンの時にはまだなかったちゅ〜るを持って行きなさい。


ロイヤルミルクティ色のおじさんが一緒にいると思うが、そのひとはシナモンのお友達だから、みんなで分けるんだよ。


知らないおっさんに会ったら親父に土産は特にねェとお母さんとおねえちゃんに言われたと伝えればよい。


ぐれちゃんの大好きな深紅の赤身も持たせたいところだが、人間も食べるものはクソ親父と狂犬叔母に巻き上げられては、この子達の疑うことなき無限の優しさに傷がつく。

享年18歳

気高く咲いて美しく散ることを選んだレディは、一昨日から何も食べないので点滴の一本も打ってもらおうと病院に行く途中眠るように旅立ったようだ。


断末魔ひとつあげずに、最後に聴いた声はいつも通りのむーむー。


つい金曜日に病院に行ってきたばかりだと聞いたのはわたしが診察から戻ってからだったが、その前夜にいつもと異なる挙動をしていたので気になっていたことはあるので、獣医さんに行くならわたしが診察に行く前に言っといて欲しかったかな………。


そんなわけで明日の朝葬儀が入った。


わたしの予定ではわたしの葬儀を挙げるのはうちの猫又達になる予定だったのだが、気高く咲いて美しく散るレディにいなくなられると、くさむらに名も知れず咲いている草しか残らない。


どのくらい名も知れず咲いているかというと、『おい、足元チョロ男!』とか『おい、ヒモ男!』とか言われるくらいだ。


ヒモというヒモというかチラチラするもの全てにねっころがったまま不精ったらしくちょっかいをかけているか、行く先々で足元をチョロチョロして足払いをかける。


あとカニ女。


このメンツしか残らないのは正直絶望的だが、籠に敷いたペットシーツの上で眠るように静かに旅立つ貴婦人の嗜みには敬意を表する。


シナモンを亡くした時の嘆きを彼女は覚えていたのだろう。


わたしを哀しませないために絶対に散り際を見せなようとしなかった気高く心優しい淑女。


大好きなシナモンには逢えただろうか。


共倒れしてしまわない程度に少しくらい介護をさせるのも、名残を惜しむ大切な時間なのだとシナモンは教えなかったか。


本当に何ひとつ煩わせずに逝くつもりなのか。


わたしの肋骨全治2ヶ月を2週間に短縮した回復術のスペシャリストが、わたしには本当に何も世話をさせないつもりなのか。


どんなに鬱を悪化させても、足元チョロ男とカニ女の栄養管理をしなければならない奴隷に追い腹は許されない。キミがそれを知らないはずはないと思うが。


わたしは本当に大切なものを亡くした時しか涙は流さない。


たとえそれが世間的には悲しむべき時だとしても、悲しくないものは偽らない。


ずいぶんたくさんの人間を見送ってきたが、ニンゲンには遂に誰一人成し得なかった。


栄誉ある三柱目の氏神だ。


おそらくわたしが獲得すべき器に人間は一人もいないのだろう。


それだけの刺激、嘆き、慟哭を伴う死に直面するのは、たぶんねこしかいない。


だがあまりにもあっさり逝かれすぎると、キミを最後に抱っこした瞬間を、20年先まで覚えていられるか………。


後ろは振り返らないことにしています。


どんなにかけがえのない者でも、いない者はいない。


量子力学的には、分子になっても彼女という存在がこの宇宙から消えて無くなるわけではない。


キミを構成していた分子を、存分に呼吸することでキミを忘れずにいられるなら、スーハースーハーしますとも。


ただシナモンの命日11月1日と違って今バカみたいに暑い。


気ィ遣いィのぐれちゃんはお盆で菩提寺が慌ただしいシーズンをを巧く避けたようだが、全体的に暑いのでスーハーしたら腐敗を早める。


お腹だけは明日の朝まで冷やしておくように菩提寺に厳重注意を受けた。


ぽんぽスーハーしてる場合じゃない!


とりあえず今のうちに最期の添い寝をしておくか。明日早いし。

巻き貝と水晶のレイピア

うしろの水牛のスプーンは気にしないでください。


この巻き貝の断面が護拳になっていて先端にレーザー水晶を嵌め込んで威力を高めているレイピアがずっと気になってたんです。


紐をつければネックレスにもなる強力な魔除けの聖剣。主にレーザー水晶部分が聖剣。


気に入っているのは柄と護拳ですが。


この聖剣が欲しかったので、1本100円の水牛のスプーンは聖剣の値段から決めようとしたところ、天神さまに賽銭放り投げていて小銭がなかったので(それでも庭先で好き勝手遊ばせてもらう以上お詣りは欠かさない)、10本一袋の中から一番綺麗な鼈甲色の一袋を丸ごと買い取ってジャスト2,000円に合わせた。


汁かけ飯でやりすごすくせに永いことカレースプーンが見当たらなくてさ、しばらくコンビニのプラスチックのスプーン洗って使ってたからちょうどいいのがあるならお釣りが出ないように余分に買っても使うし。


天然素材だからねこたちにスープ飲ませても安心だ。


聖剣は首から下げるが、来月は糸魚川のラベンダー翡翠を下げなければならない。


わたしが一目惚れした糸魚川ラベンダーの断面は、切断してみた反対側はもっと美しいラベンダーなのだそうだ。


『今日は暑くて着の身着のままですけど、銀行行っとかなきゃならないんで、来月どのくらい用意してきたらいいか言っといてください』って言ったら『あれは片手くらいは見といてもらわねェとなァ〜』って言われたんで、5ならまだ手持ちの糸魚川ラベンダーで一番気に入っているのと見比べて10倍の価値がある色かどうかを判断するだけだから簡単だ。


国産鉱物の5は特別高いわけじゃない。要は実物を見てそれだけの価値がある色が出てるかどうかだ。


俺のは全ラベナチュラル糸魚川の5,000円だが、その質量は所詮首から下げる質量。


握り拳のラベンダーには当然10倍以上の質量はある。


あとはそれだけの質量の中には当然斑模様が入るので、その斑の出方だ。そこにペンダントの10倍の価値があればその程度のことは迷わない。


だっていくら比重が重くても握り拳大の翡翠くらいなら《持ち帰れる5万》だから。


プルーム入ってる珪化木のテーブルくらいの丸太とかコンテナ代込み搬送にそれ以上のコストはかかんない、気軽に撫で回せる5万。


高崎Gメッセの陣に3日間通ったら10万くらい吹っ飛ぶんだから、高崎の傷が完全に癒える前なのは痛いっちゃ痛いが、いざとなったら年末の池袋をカットすればいい。
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