ねこのゴロゴロ玉は骨を丈夫にするというのは有名な話だが、ぐれちゃんは痛いところと反対側の肋骨に顎枕をして体内を振動が伝って患部に届くことを知っていて肋骨折った時は添い寝してくれる子だった。
ぐれちゃんの顎くらいで死にゃしねェのに、患部に直接重量をかけることを嫌って必ず反対側の肋骨を顎枕にして添い寝する。
音は振動であることをきちんと理解している、賢く優しく、おしゃべりとお歌の上手な子だった。
何もそこまで気配り上手にならなくても、と思うほど周囲が本気で心配しすぎて衰弱する前に静かに息を引き取った。
うちでシーバを好むのは彼女だけだった。
シナモンには先に逝った近所の仲良しのれおちゃんと分けるようにと小分けのカリカリをたくさん持たせた。
お寺さんに止められないものは貴金属の塊でも着けてやった。
これはわたしが作ったネームプレートで銀地に金箔を焼き付けて合金化している、この子が最期までお気に入りで下げていたものです。それを取り上げるなんてとんでもない!
………………………半ば強引に持たせた。
800℃は何時間もかければ融解はしても貴金属が完全に消滅する温度ではないはずだが、お骨を拾った時にはなかったので、大事にしてくれすぎてしっかり持って逝ったのだろう。
大好きなシーバと、シナモンの時にはまだなかったちゅ〜るを持って行きなさい。
ロイヤルミルクティ色のおじさんが一緒にいると思うが、そのひとはシナモンのお友達だから、みんなで分けるんだよ。
知らないおっさんに会ったら親父に土産は特にねェとお母さんとおねえちゃんに言われたと伝えればよい。
ぐれちゃんの大好きな深紅の赤身も持たせたいところだが、人間も食べるものはクソ親父と狂犬叔母に巻き上げられては、この子達の疑うことなき無限の優しさに傷がつく。