ぱらぱら、ぱらぱら、



透き通るような青空から降り注ぐ銀色の雨は、尽きることがない。


浸食されていく地面を確かめるように踏みしめた青年は、銀の粒をビニル傘で受け止めながら、透明な膜越しの空を見上げる。

お気に入りのテトラパックに突き刺したストローを銜えながら、茫洋とした双眸で遥か遠くを見つめる。


「こんにちは」


不意に、青年の背後から声が掛かる。


「今日は良い雨模様ですね」


振り返った青年の瞳が、漆黒のフードを目深にかぶった一人の男を映す。

フードの男は降り注ぐ雨粒を気にも留めず、唯一覗く口元に軽薄な笑みを浮かべる。



「……」




ぱら、ぱら、ぱら、


次第に弱くなる雨脚に、青年は差していた傘を閉じて、片手に持っていたパックの中身を一気に飲み干した。

 

瞬間




大気が大きく動き、激しい風を生む。


男のフードがバサリ、となびく。


揺らめく布地の奥に、二つのレンズが光を反射する。


地面が傾ぐ感覚に、文字通り足元を掬われる。

 



嗚呼、もうじきに






世界が 反転する。








(――愛を込めて、砂時計の中から)