久々に文章書いてみた。
まぁリハビリですね。
BL要素は一切ない
(多分)ので悪しからず。











いつもの通学路を、いつもの友人と歩く。


もう2年近く通うこの道に、今更珍しいものも見当たらない。


他愛もない会話をしながら、ゆっくりと歩を進める――。




「――えっ?」




そんな、何の変哲もない日常の中で唐突に降って沸いた違和感に、佐藤は思わず声を上げた。


隣で欠伸をしていたクラスメートの友人は、驚いた様子で眠たげな眼を少しばかり見開いて、佐藤に視線を向ける。




「なん、急にどした」


「いや、何か、うーん」


「はっきりせい」




煮え切らない佐藤に、友人は訝しげな表情で話の続きを促す。


顎に手を当てて首を傾げる佐藤は、それでも暫く唸っていたが、友人の苛立ちを感じ取ってか、自信なさげに口を開く。




「何か、違和感が」


「何にだよ」


「おまえ」




目と鼻の先で指さされた友人は、自分に向けられたその指を握って引き剥がす。途中で聞こえた、いてて、という佐藤の悲鳴は完全にスルーされた。




「……、俺?」


「うん、そう……なんだけど……」




顔を顰める友人からどうにか解放された指を軽く振りながら、佐藤はそれでも首を捻ってしきりに友人を観察する。




「前髪、切った?」


「切ってねぇよ」




間髪入れずに否定したその言葉通り、伸びっぱなしの前髪は昨日となんら変わりはない。




「制服クリーニングに出したばっかり、とか?」


「なんでだよ……」




冬服になって数か月経った今、友人の制服も佐藤のものと同じく、若干くたびれた印象を受ける。


第一、週末でもない平日に替えのない制服をクリーニングに出す一般家庭があるのだろうか――そんな疑問が友人の頭を過る間も、佐藤は違和感の正体探しに夢中になっている。




「ネクタイの結び方がいつもと違う、か?」


「この結び方しか知らんわ」




そんな指摘をしながらも、実のところ佐藤はネクタイの結び方に複数あるかどうかさえ知らなかった。




「あ、スニーカーが新品! とか?」


「ねーよ」




体育の授業でも使っているのだろう、友人の履いているスニーカーは所々土で汚れていた。どうみても下ろし立てには見えない。




「うーん……」


「……はぁ」




文字通り天辺から爪先まで友人を観察しながら唸る佐藤に、友人は、付き合いきれない、と言わんばかりに大きく溜息を吐く。




「いつまでも突っ立ってねーで、さっさと行くぞ」




呆れたようにそう吐いて、ふい、と前に向き直った友人の目元で、太陽の光が反射する。




「あっ!」




途端、大きな声を上げた佐藤に、友人の肩がビクリ、と跳ねる。面倒そうな表情が、再び佐藤に向き直る。




「なん……」


「眼鏡だ!! 眼鏡、替えただろ?!」




友人の目元を飾る眼鏡は、佐藤の指摘する通り、昨日までのものとは違っていた。


正確に言うなら、ボストン型からウェリントン型のフレームへと変わっていたのだ。




「あーすっきりしたー」


「……いや、いやいやいや」




違和感の正体が判明し、清々しさに満ち溢れた表情をする佐藤の横で、友人は口元を引き攣らせて首を横に振り続ける。




「何だよ、何か間違ってるか?」


「そうじゃねぇよ、むしろそんな事じゃねぇ」


「何だよー眼鏡替えたんだろ、そうなんだろ」


「そうだよ、そうなんだけど……!」


「じゃあ良いじゃん、さっさと帰ろうぜー」




晴れやかに帰途に着く佐藤に肩を叩かれ、数歩遅れながらも歩みを再開した友人は、納得いかない表情で引き攣った笑いと共に呟く。




「おれ、朝からコレ掛けてたんだけどね……?」




その言葉は、少し前を上機嫌に歩く佐藤の耳に届くことのないまま、夕焼けの中に溶けていった――。













うーん……オチが弱い!!