『うっわ、すっかり遅くなっちまったな……』

 星も見えない真っ暗な空を見上げ、少年は一人ごちた。

(さっさと帰ンねぇと……8時から見てぇ番組あったんだよなぁ)

 カバンを肩に引っ提げて、少年は首に巻いたマフラーに顔を埋めるようにして帰り道を足早に歩きだす。



 ――コツ…コツ…コツ…



 途端、聞こえてきた自分以外の足音に、少年は一瞬だけ足を止めるが、次には先よりスピードを上げて歩きだす。



 ――コッコッコッ……



 しかしその足音は案の定、少年と同じく速度を上げて追い掛けてくる。

(ッマジかよ!? 何、もしかしてストーカー?!)

 少年の鼓動は早鐘のように打ち鳴らされ、その歩調はもはや競歩並み。額には冷や汗を滲ませ、その顔に恐怖を浮かべる。



 そして、僅かずつではあるが次第に近づく足音に、少年が駆け出そうとした刹那。





『おい、おま…――』

『うわぁああぁあぁッ!!?』

 肩に掛けられた手と己を呼び止める声に、少年は無我夢中でカバンを振り回す。

『うぉっちょ、ヤメ……ぐはッ!』
 どこかにヒットしたのか、不審者が怯む。その隙に逃走しようと一歩踏み出した少年は何かに気付き、その態勢の儘ピタリと止まり顔だけを後ろに向ける。



『そ、その声……って、先輩?!』



 そこには少年の先輩にあたる人物が、頬を押さえて座り込んでいた。

『ったく……先輩に向かってイキナリ鞄を振り回すバカがいるかよ』
『いや、あの……スミマセン』

 先輩はブツブツと文句を言いながら立ち上がると、焦りまくる少年に掌を差し出す。その上に乗っかるヒトツの鍵を見て、少年は、あっ、と小さく声を上げる。

『それ俺のカギっ』
『落ちてたから届けてやろーとしたのに逃げるから』

 少年に手渡しながら仕様がないと云ったふうに溜息を吐く先輩に、少年は申し訳なさげに眉根を寄せた。

『スミマセンっでも暗やみで追い掛けられるってストーカーっぽくて恐いんですけど』
『実際、ワザとストーカーの真似したし? ま、攻撃されるなんて思ってもなかったけどな』

 謝る己に悪怯れなくそう言い切る先輩に数秒固まった少年は、次には俯き肩を震わせ。顔を上げて強く先輩を睨み付ける。



『っ、それは自業自得だ!!』
 ―――――

 まぁまたようわからんのん作ってしまったけど、いつもと同じやけん、気にしんといてくれたらいーよ?