久々BL小ネタ小説。閲覧注意。

 むしろリハビリ。



 唐突に始まり、唐突に終わります。










「やだー、澤田ってば冗談っしょ」

「んなワケねぇじゃん? 俺、優しいだろ?」

「ちょ、マジウケるー」


ゴミ箱を抱えて廊下を歩く俺の耳に、弾んだ声が飛び込んでくる。

――あぁ、またアイツ……。


「澤田は優しいってより節操ナシだよねぇ」

「そうそう、アタシらみーんなにイイ顔してっし、誘われたら断んないし?」

「あ、何ソレひっでぇの。流石の俺だってそれは傷つくよ?」


教室から聞こえてくる耳障りな会話に、俺の眉間に皺が寄っていく。それに比例するように、歩くスピードも上がっていく。

俺がゴミ捨てに行ってる間に、アイツはまた、女子達と楽しくお喋り。誰にでも笑顔振りまきやがって……いい加減にしろよ。


「澤田っ!!」


教室の引き戸を怒り任せに引き開けて、ほとんど叫ぶようにアイツの名前を呼ぶ。


「おー、深津。オツカレー」


ゴミ箱を片手に肩を怒らせる俺に返ってきたのは、厭に間延びした澤田の声。


「ってゆーか、ゆーじ何怒ってんの?」

「むしろ、いっつも怒ってんよね、ゆーちゃんって」

「ゆーじって、笑ってたらモテると思うんだけどなー」


澤田に続くように、その周りを囲う女子達も好き勝手に口を開く。

誰のせいでこんな顔してると思ってんだバカ。お前らがアイツとベタベタしてなきゃそれで万事解決だっつの。

思っても言えるわけない言葉を奥歯で噛み殺すと、諸悪の根源である澤田を睨みつける。けど、アイツは特に気にしたふうもなく、何、深津?、と首を傾げるだけだ。……無自覚って手に負えねぇ。


「ゆーじ、そのカオ怖いってばー」

「ねね、笑ってみてよゆーちゃんっ」

「楽しくもねぇのに笑えるかっ!」


いつまでもベラベラと喋り捲る女子達に八つ当たりみたいに怒鳴れば、ソイツらは一瞬、ぽかんとした表情で俺を見ていたが、次にはゲラゲラとバカみたいに笑いだす。

何が可笑しいのか、俺にはさっぱり理解できねぇよ。


「ゆーじチョー硬いー」

「ほらほらぁ、笑って笑って」

「何す、いひゃ、いっひぇへ!」


それどころか、俺に近づいてきた女子達は、俺の頬を摘んで引っ張り出す。……完全に遊ばれてるが、多勢に無勢、勝ち目はねぇ。

くっそー……アイツに怒ってたはずなのに、なんで女子達を相手にしなきゃなんねぇんだよっ! 大体澤田も助けるなりなんなりしてくれてもいいじゃねぇか!! そんなとこで笑、って…――え?


「そろそろ帰ろっか、深津?」


唐突に、腕を引かれて女子達の間から引っ張り出される。


「今日、カラオケ行くんだろ?」

「え、あ……そ、だけど……え?」


相変わらず笑ってる澤田に腕を掴まれたまま、教室を後にする。いつの間に持っていたのか、俺の鞄は澤田の肩に掛けられていた。……ってか、女子にサヨナラしなくていいのかよ? ってか腕離してくんねーの? てか、てかさ、


「澤、田……?」

「うん?」


『なんか、怒って、る?』


そんなこと聞ける雰囲気じゃないような気がして、何でもない、と慌てて首を振った。そうしたらアイツは、深津、今日ヘンだな、と笑って……嗤って、腕を、離しては、くれなかった。

――ヘンなのは、オマエの方だろ。


「今日は何歌う?」


聞いてくる声はいつもと変わらねぇのに、なんとなく、少しだけ、俺は澤田に違和感を覚えた――。







おまけ。


「……ねぇ、澤田って、さ」

「うん、ゆーじ大好きだよね」

「あれ、無自覚なのかな?」

「愛されてるよねー、ゆーじ」








 つまりは、どっちが嫉妬してんの、って話。




 てかこういうのじゃなくて、最近久しく書いてないえろを書きたい。(笑)