僕は生れた時から“彼”で在る事を強制されていた。
“彼”は理科と英語とスポーツが得意で社会と数学は苦手だ。だから僕もその通りにした。
不思議だとは思わない。
だって、僕以外にもソウイウ生物は沢山、居るから。
僕らは、ニンゲンにこう、呼ばれている。
身代わり人形――クローン人間。
僕らの仕事は僕らレプリカに対するオリジナルであるニンゲンに必要なモノ……例えば臓器とか皮膚とかを提供すること。
僕の場合は、たまに“彼”に代わって“彼”の嫌いなコトをさせられることもあった。“彼”が嫌いなコトは僕も嫌いだ。でも、だからといって僕は“彼”の身代わりである以上、“彼”に逆らうことは許されないし、もともと僕は“彼”に逆らう気はない。
そんな“彼”は先程、交通事故に遭い、現在は意識不明の重体らしい。
僕がとるべき行動は自ずと決まってくる。
“彼”が死んでしまったら、僕はこれから一生、“彼”の代わりをしていくのだろう――。
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クローン人間の話を書きたかったんです。前回の非合理な人間の唄に続き、非似近未来話。
書いてみたかっただけですから。