大きな満月が近い。琥珀色の満月は、ある場所を照らす。
真っ赤な桜が咲き乱れる庭園にスポットをあてる。
金色にも近く炎の様な紅にも近い、カールがかった長い髪が宙を舞う。白き手が着物の袖から現れた。


「魅羽音(みはね)…」


「――…冬羅(とうら)」


彼女の舞う姿を静かに見ていた男性が声を掛ける。舞っていた手は止まり、彼の元へ歩み寄った。


「相変わらず、綺麗な舞だ」


「刹那に舞いたくなっただけです…」


「今宵は満月。そろそろ…欲しくない?」


「欲しい」


魅羽音は、冬羅の首筋に口を近づけた。
ギラリと口から見える尖った牙が、冬羅の首筋を貫く。深紅色の鮮血が垂れ落ちる。


「君は、俺から訪れないと…血を飲まない」

「肉親の血しか求められない体になってしまったのよ。本当なら、貴方の首筋に牙をたてたくないわ!」


月夜の明かりに照らされ露になる彼女の顔。色白く、血に濡れた唇は色気があり、切れ長の睫毛に…ルビーを嵌めた様な紅い双眸。


「美しき夜光蝶は…俺を困らせるのが得意の様だ…」


「そんな…吸血鬼姫に惚れたのは…何処の吸血鬼王かしら?」


クスクスっと、微笑する魅羽音。
夜を生きる吸血鬼。それが、彼女と彼の正体だ。

赤い桜が魅せる…

月夜に照らす吸血鬼夫婦の姿を…


††††


内容のイメトレ…

これは、高校の頃に考えた小説(笑)