*関ヶ原の戦い後死ネタ*
*史実無視の 大 捏 造 ^^←*
色々駄目な妄想甚だしい捏造注意
自らも鉛の玉をくらって、それでも本陣へ、あの人の元へ走った
「殿―、っ」
痛みを堪え辿り着き、目に入った悲惨な戦場
本陣を守っていた味方が次々倒れていく
その中で一人、ああ戦慣れしてないあんたが何で戦っているんだ
色素の薄い美しい赤髪は赤黒くべたつき、華奢な身体は今にも折れそうにそれでも精一杯立っていた
細い足が震えているのは恐怖ではなく彼の体力の限界を表していた
殿、殿。
俺の護るべき人。
護りたい、人。
――嗚呼、修羅が出てくる
「殿ォォァアア!!」
††
「ここまで来れば、大丈夫ですよ…殿」
小早川のぼっちゃんが寝返った時点で西軍の敗北は決定付いたと言っていいだろう
だから俺は敵の海から殿を助け、本陣を棄て敗走した
殿はここにいる
そうだ、殿さえ生きていればいいのだ
「さこ…ん、んンっ」
「あまり喋らないで下さい、身体に障ります」
俺の腕の中で殿の綺麗な顔は苦痛に歪み青白くなっていた
はッはッと細かく息を吐き出す俺に対し、殿の口からはひゅうと空気の漏れるような音しかしない
「っは、さこ…俺が死ねば西軍は敗北…だから俺の死は隠せ…そして、家康の首を……あとは幸村や兼続、が…」
「殿!いい加減にして下さい!あんたは俺の殿だ、左近がいる限り死なせやしません」
怒りと不安と、自分の無力からか、いつのまにか殿を怒鳴り付けていた
普段の殿なら大袈裟に肩を揺らし怯えた目で俺を見上げてくるところなのに、何故ですか、何故そんなにも穏やかに笑うんですか
「と、」
「左近…最期まで迷惑をかけたな…感謝、している」
「何言ってんですかあんたらしくない!」
穏やかに微笑む殿とは対照的に俺の顔はきっとひどく歪んでいるのだろう
視界がぼやけていくのが判った
視界も、思考も、霞がかかったようにはっきりしない
…そうだ、
「そうだ殿、逃げましょう」
「逃げる…?」
「ええ、逃げて、そこで養生しましょう。左近が必ず護ります」
だから、ね。
その先は何も言わない
するとふっと殿が笑った
「もう逃げているじゃないか」
「違いますよ、もっと遠くに、です」
そうもっと遠く、ずっと遠く、
いっそ戦のない別の世界まで
それを求めた戦で傷ついたこの人を、そんな世界に連れていってあげたかった
繋いだ細い手を引いて、もう二度と離さないように握り締めて
それはいいな、と殿は笑った
そのまま目を閉じ、会話は終わる
おやすみなさい、ゆっくり休んで。あんたが起きた時にはきっと。
動かなくなった殿を抱き締めた
あんたは俺が護る、死なせやしない。
そう決意したはずなのに涙は溢れ、俺はその場から動けなかった
きみと、きみの描いたすばらしい世界へ(きみがいるだけで僕は何もこわくはないのに)(なかった、のに)