スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

#手折る指先(慶孫)

俺のことが好きだと言ってのしかかってきた金色獅子は俺が嫌だっつってんのにも関わらず更に抱き締めようとしてきやがった

「離せ、離せっての慶次!」

「照れなさんなよ」

「照れてねーよっ、嫌だって言ってんだろ」

「いいじゃないか、何でそんなに嫌がるんだい」

「暑いし重いし、何より野郎にのっかられ抱き締められそうなこの状況に耐えられねェんだよ!」

「あんたはもう少し我慢ってもんを覚えた方がいい」

「あんたに言われたくないね。それにこれは我慢じゃなくて、俺の上に乗っていいのは女性だけっていう…うあ?」

俺の腰あたりで格闘していた俺の手と慶次の手
慶次の手が突然俺の手を握り返してきた

驚いて動きが止まった俺の一瞬の隙をついて、慶次が首筋に顔を埋めた

「う、わわっ、やめ、やめろって慶次!」

抵抗しようにも俺の手はがっしり握られてるわけで
慶次の力に対抗出来る奴なんか、多分本多のおっさんくらいなわけで

それをいいことに慶次は俺の首筋を舐めてくる
女性なら大歓迎なのに、生憎この厚く大きな舌は正に獅子そのもので

「けぇじぃ…」

自分でも気持ち悪い甘ったれた声で名前を呼ぶしか出来なかった

「なんだい?」

「…くすぐってェ」

苦笑混じりにそう言うと、更にべろりと舐められる
優しく丁寧に舐めてくる舌先とは裏腹に握られた手はきつくきつく掴まれて

(ったく、)

俺のことが好きだと言ってのしかかってきた金色獅子が執拗に舐めている俺の首元を食い千切るのはいつなのだろうと考えた





黒い羽も優しく折って、大きな手で捕まえてて(離さないで)










―――――
何気に初獅子×鴉(なのにちょっとバイオレンス)^^←



#かけおち、きみとばからしい空想をつれて(左→三)*

*関ヶ原の戦い後死ネタ*
*史実無視の 大 捏 造 ^^←*

色々駄目な妄想甚だしい捏造注意










自らも鉛の玉をくらって、それでも本陣へ、あの人の元へ走った

「殿―、っ」

痛みを堪え辿り着き、目に入った悲惨な戦場
本陣を守っていた味方が次々倒れていく
その中で一人、ああ戦慣れしてないあんたが何で戦っているんだ
色素の薄い美しい赤髪は赤黒くべたつき、華奢な身体は今にも折れそうにそれでも精一杯立っていた
細い足が震えているのは恐怖ではなく彼の体力の限界を表していた

殿、殿。
俺の護るべき人。
護りたい、人。

――嗚呼、修羅が出てくる

「殿ォォァアア!!」



††



「ここまで来れば、大丈夫ですよ…殿」

小早川のぼっちゃんが寝返った時点で西軍の敗北は決定付いたと言っていいだろう
だから俺は敵の海から殿を助け、本陣を棄て敗走した
殿はここにいる
そうだ、殿さえ生きていればいいのだ

「さこ…ん、んンっ」
「あまり喋らないで下さい、身体に障ります」

俺の腕の中で殿の綺麗な顔は苦痛に歪み青白くなっていた
はッはッと細かく息を吐き出す俺に対し、殿の口からはひゅうと空気の漏れるような音しかしない

「っは、さこ…俺が死ねば西軍は敗北…だから俺の死は隠せ…そして、家康の首を……あとは幸村や兼続、が…」
「殿!いい加減にして下さい!あんたは俺の殿だ、左近がいる限り死なせやしません」

怒りと不安と、自分の無力からか、いつのまにか殿を怒鳴り付けていた
普段の殿なら大袈裟に肩を揺らし怯えた目で俺を見上げてくるところなのに、何故ですか、何故そんなにも穏やかに笑うんですか

「と、」
「左近…最期まで迷惑をかけたな…感謝、している」
「何言ってんですかあんたらしくない!」

穏やかに微笑む殿とは対照的に俺の顔はきっとひどく歪んでいるのだろう
視界がぼやけていくのが判った
視界も、思考も、霞がかかったようにはっきりしない
…そうだ、

「そうだ殿、逃げましょう」
「逃げる…?」
「ええ、逃げて、そこで養生しましょう。左近が必ず護ります」

だから、ね。
その先は何も言わない
するとふっと殿が笑った

「もう逃げているじゃないか」
「違いますよ、もっと遠くに、です」

そうもっと遠く、ずっと遠く、
いっそ戦のない別の世界まで
それを求めた戦で傷ついたこの人を、そんな世界に連れていってあげたかった
繋いだ細い手を引いて、もう二度と離さないように握り締めて

それはいいな、と殿は笑った
そのまま目を閉じ、会話は終わる
おやすみなさい、ゆっくり休んで。あんたが起きた時にはきっと。
動かなくなった殿を抱き締めた
あんたは俺が護る、死なせやしない。

そう決意したはずなのに涙は溢れ、俺はその場から動けなかった





きみと、きみの描いたすばらしい世界へ(きみがいるだけで僕は何もこわくはないのに)(なかった、のに)



#ふさいだ耳から嗚咽(ロイ→←ラガ)

どこか行こうか。

と、彼は独り言のように呟いた
だから俺は独り言だと判断し、無言のまま愛用の剣の手入れを続けた
するとそいつは今度はこちらを向いてはっきりと口にした

「どこか行かないかい?」
「どこかってどこだ?」
「どこかはどこかだよ」

俺はその答えに苦笑し、するとラガルトもつられてか、笑った
だが目は真剣なままだった

「どこか、ないの?行きたいところ」
「俺は、特に思い当たらないな。お前は?」
「ロイドが行きたいところ」
「そうか、なら俺はラガルトが行きたいところに行きたい」

これではまるでイタチごっこだ
ラガルトも「それじゃあ二人ともどこにも行けないじゃないかい」と笑って言った

「俺はお前さんがいるところにいたい」
「なら別にどこにも行かなくていいじゃないか」
「…ロイド」

笑っていたラガルトの顔が歪む
今にも泣きそうな彼の顔に目を見開いた
ラガルトが俺の肩を掴む
その力は強かった

「ロイド、どこかに行こうぜ、一緒に」

どうしてそこまで頼み込むのか、謎だった
いくら気分屋の彼でもここまで性急ではない
ここでもいいじゃないか、俺達は今まで通り何も変わらない
ソーニャは正直好きではないがニノはいい子だ
お前もニノは好きだろう?

「連れていってよ」

俯いたラガルトの表情は長い淡紫の髪で見えなかった

「ラガル、」
「悪いね、何でもないんだ、忘れてくれ」

そう言って笑ったラガルトの表情はいつもと変わらなかったから

「ラガルト」
「ん?」

手を離し、離れていく彼に何気なく言っただけだった

「また明日」

一瞬の間、影、真剣な表情、しかしすぐに彼はまた綺麗に笑って言った

「ああ、またな」

翌日、ラガルトが牙を抜けたと親父から聞かされた



『それじゃあ二人ともどこにも行けないじゃないかい』



記憶の中のラガルトが泣きそうに言った(その時確かに彼は笑っていたのに)





(嗚呼俺達はどこにも行けないのか)
(連れていってほしかったのか?)(連れて行きたかったのか?)
(そんなことを昨日の彼に尋ねても彼はただ笑うだけ)

気付きたくなかった(気付くのが、遅すぎた)。



前の記事へ 次の記事へ