カム・カムヒアー!0

《カム・カムヒアー!》

こっちへおいでよ!と手招(てまね)きする影(かげ)がゆらめく。

『……来い……こぉおぉぉいぃぃ……』

地の底から響(ひび)いてくるような、ゾッとする声で怖いはずなのに。
なぜだろう……?引かれてしまうのは。

心の隙間(すきま)に心地(ここち)よい、郷愁(きょうしゅう)のようなものがフワッと浮かんではその正体を掴(つか)めずに消えてしまう、そのもどかしさを。
あそこに行ったら解消できる……掴めて隙間を満(み)たして埋(う)められる気がする。

『……来い……こぉおぉぉぉいぃぃぃぃ……』

影がゆらめいて、何重にもなった手が招く。

それはカム・カムヒアーの魔物。
心の中に棲(す)んでいる、寂(さみ)しがり屋の魔物の名前だ。

※※これはフィクションです※※


道に迷った魔女〜アバプリ撮影ミッション〜0

《道に迷った魔女〜アバプリ撮影ミッション〜》

「あいつめ〜、私が実は方向音痴なことを利用して隙をついて逃げ出すなんて……やるじゃない!
ますます逃がすわけにはいかないわ。
えっと〜、こっちの方から気配が感じられるわね」

「ウウゥゥ〜、ワン、ワン!(そっちには行きたくないワン!わざと気配を残した場所に罠が仕掛けられているパターンだワン!)」

「シーーッ!静かにして?じゃないと向こうに気づかれちゃうわ?」

※※これはフィクションです※※

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