2日後。御堂が住むシェアハウス前。
「なんで彩音と梓も来てるんだよ!お前らは呼んでねぇ!」
御堂は鼎を連れ、家の中へ入ろうとしたとたんにこれ。
「はぁ?あたしは悠真の警護で来たんだけど」
梓はイラッとしてる。
「ごめんね鼎。勝手に来ちゃった」
彩音は申し訳なさそうに謝る。梓は相変わらずだ。
「私は構わないよ。人数が多い方が楽しめるかな…って」
若干無理しているように言う鼎。
「鼎がそういうなら…。ここから入ってけば共同スペースあるからそこに行ってろ。リビングみたいな広い部屋、あっから」
御堂に言われてシェアハウスにお邪魔した3人。鼎は久しぶりの御堂の家への訪問となる。
シェアハウス・共同スペース。そこには逢坂がいた。
「鼎ちゃん久しぶりね〜。ねぇ、鼎ちゃん…大丈夫なの?無理して来なくていいんだよ?」
逢坂はオネエ口調混じりで話しかけてきた。
「あの配信を見たのか…?」
鼎は恐る恐る聞き返す。
「この共同スペースのテレビが何者かにジャックされたのよ。1ヶ月くらい前にね。
ちょうど全員ここでご飯食べてた時間帯だから、全員があの『イーディス』とかいうやつの配信を見てしまったわけ」
「逢坂、それ本当かよ!?」
御堂は動揺してる。ハッキングの範囲、広くないか!?
「本当だよ。なんならそこの稲ちゃんと中垣に聞いてみたら?今、樋口はバイトに行ってるからいないけど」
共同スペースには住人の稲本と中垣もいた。
「あれ…ハッキングだったんですか…。ひどくないですか?なんで紀柳院さんを公開処刑するの…?」
中垣は深刻そうに聞いてる。彩音は答えた。
「本部でもハッキングの範囲を調べたら、組織の施設以外にも都内の街頭モニターは全てやられていたと聞きました。
まさかこんな小規模なところまで…やられていたなんて」
「あ、紀柳院さんそんなにも落ち込まないでください」
中垣はなんとかしようと必死。
「悪いのはあいつらだ…。わかってはいるが…。影響が大きすぎるだろ。
だからバッシングがなかなか鎮静化しなかったのか」
「ねぇ鼎ちゃん。何か食べたいものある?あるから来たんだよね?」
鼎はうなずく。
「……逢坂…お粥やリゾットが食べたい。優しい味のもので。あの騒動以降、食欲がなかなか出なくてな…。人目も怖くなった。
外出出来るようになったのは最近なんだよ」
「オッケー!鼎ちゃんのリクエストで優しい優しいリゾットを作るわね。胃に優しいものが欲しいんでしょう」
逢坂は台所へと消えた。
「俺達もさぁ、心配していたんだ」
そう切り出したのは稲本。
「理不尽すぎだろ!?なんであんなやつに公開処刑されなきゃならないんだ。
俺達シェアハウス住人は同じ住人の御堂と繋がりがあるくらいの仲だけど、あの配信見てしまった時…樋口がものすごく怒ってた。樋口もあいつに公開処刑されてるから…」
あいつ=イーディスに住人の樋口も過去に公開処刑されたらしい。本人は多くを語らないが、理不尽にやられたそうな。
「稲本それ初耳…」
御堂も動揺してる。
「だからあいつをなんとかしてくれよ!」
「わかってるって。イーディスは鼎と因縁があるやつだ。鼎…ちょっとは落ち着いてきたか?」
御堂は鼎に気を配る。
「少しずつ落ち着いてきたよ」
よ、良かった…。
某所。
「イーディス、早く行動しなよ。なんで動かないのさー?」
そう聞いてきたのは矩人(かねと)。
「あなた、明莉様が倒されたのに冷たいのね」
「うわべだけの付き合いだったからね〜。
あんなガキ、ヨイショするのは疲れるぞ。イーディスがなかなか動かないのは紀柳院が気になるから?」
「そうだとしたら?」
「さっさと始末しないと當麻様がどうするか…」
「私、警察に行こうか迷っているのよ。當麻様に消されるくらいなら…いっそ」
「君らしくないよね〜。イーディスはそんなやつじゃないでしょ。
もっと好戦的な人でしょ、あなたは」
「矩人、邪魔しないでよ」
イーディスもとい、六道は彼を突っぱねた。
「じゃあ俺が本部潰しに加担しますよ。イーディスは紀柳院と接触するのか考えな」
そう言うと、矩人は行ってしまった。
御堂のシェアハウスでは仲良くランチタイム。
「鼎ちゃんのリクエストのリゾット出来たよ〜。食べれる?チキンブイヨンと野菜スープで仕立てたんだけど」
鼎は恐る恐るリゾットを口に運ぶ。食事用マスクを着用してるため、一口が小さい。
「おいしい…!」
鼎、嬉しそうな声を上げる。
「鼎ちゃん、熱々だから気をつけてね」
逢坂の料理は癒してくれる。鼎は食べながらわけもなく涙が出てきていた。
「ちょっと席外すね…」
「鼎、どこ行くの?」
「わけもなく涙が出てきたんだよ…。ストレスかな…。安心したのかな…わからない」
鼎は涙をふきに行ったんだ。人前では常に仮面姿の鼎はそういう意味では不便。
「み、みんな気にしないでね。鼎は繊細だから。人前では常に仮面姿だから色々弊害があるの」
彩音はなんとか取り繕う。
シェアハウス住人はナチュラルにいる、眼鏡姿の女性・梓が気になった。
「つかぬことをお聞きしますが、あなたはどちら様ですか?」
稲本は梓に聞いた。
「鼎の用心棒、梓だよ。鼎の幼なじみ。ちなみに彩音は鼎の親友だ。
あたしらも仲良くなったけどね。全ては鼎の縁だ」
よ…用心棒!?つまりSP!?
「SPって言うな。用心棒の方がしっくり来る。
このところ、鼎は危険な目に遭ってるから用心棒になったんだよ。てめーらが思っているSPとは全然違うからな。時々怪人倒す任務にも駆り出されるし」
思ってたのと違いすぎる…。ゼルフェノアの用心棒って、怪人倒せるスキルがないとなれないもんなの!?
解析班。
「畝黒(うねぐろ)が止まったわね〜。これ、一時的に活動停止してるんじゃ。
ゼノクで異形の娘を撃破したって聞いて以降、進展なしよ!?」
「残るはイーディスこと、六道と當麻か」
神(じん)が冷静に分析してる。
「畝黒コーポレーションにあるという、地下研究所…まだ見つからないってさ」
矢神が付け加える。
「長官がスパイを潜入させた話…本当なんだ…」
「スパイに関しては長官しか詳細知らないから、そこは長官に任せましょうよ」
矩人は本部の下見に行っている。
「へー、ここがゼルフェノア本部か〜。でっかいな〜」
これは壊しがいがありそうだね。イーディスがやらないのなら、俺が…ぶち壊す。
全ては畝黒家のため、當麻様のために。
矩人は密かに武器を携帯していた。彼は単独、襲撃しようとしていた。
その頃、鼎は共同スペースへと戻ってきた。
「お前、本当はまだ無理してんじゃないのか?」
「和希にはバレバレか…」
鼎の声に張りがない。
「鼎ちゃん、デザート食べる?作っておいたのあるよ〜」
空気を読まない逢坂。逢坂は御堂にアイコンタクトをした。
あたしに任せなさい☆
御堂は察した。逢坂はスイーツ作戦実行する気だ!
彼の予想通り、冷蔵庫から出されたものは昔ながらの固めのプリンとエッグタルト。
逢坂、タルトも作れたの!?…い、意外すぎる…。
御堂、逢坂のレパートリーの多さにおののく。
鼎はプリンを一口、口にする。なんだろう、緊張がほぐれていく…。
「プリンは多く作りすぎちゃってね。鼎ちゃん、美味しそうに食べてるよ」
「そ、そうか…?」
逢坂のスイーツ作戦は人を幸せにする。鼎は逢坂のスイーツに完全に魅了されていた。
これでプリンアラモード作ったら最高なのに。
ゼノク。二階堂は研究施設にいた。
「ごめん、二階堂。君用の戦闘兼用義手のスペア、まだ完成してないんだ。
だから当分の間、通常の義手で我慢してくれないかな…。本当に申し訳ない」
西澤は謝った。二階堂は複雑になる。修理出来ないほど義手がダメージを受けていたことに。
「い、いえ…大丈夫です…。あの…憐鶴(れんかく)さんは?」
「憐鶴は退院したが、まだ復帰出来ない状態だよ。ゼノクは痛手を喰らったな…」
畝黒の目的って一体なんだろう…。
畝黒コーポレーション。諜報員の高槻はついに地下研究所を発見する。
それは地下6階にあった。
『地下研究所、発見しました。6階にあります』
『内部は?』
『よく見えないですが、マキナが入っていたカプセルが見えます。…ん?』
『どうした?』
『マキナが入っているカプセルが見えます…2つほど…。戦闘員クラスのものじゃない』
『高槻、退避しろ。長官命令だ、今すぐ地下から出ろ!!』
高槻は急いで地下を脱出する。眠りについてるマキナが近くにいる恐怖と戦いながら、高槻は情報をなんとか入手した。