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season3 第13話(1)

「紀柳院・北川、落ち着いて聞いて欲しい。ゼノク隊員は全滅に近い状態だ」

全滅――?


西澤から来た連絡は信じられないものだった。音声にノイズが混じっている。
西澤の背後はどこか慌ただしい。司令室ではない場所から連絡している模様。

鼎は動揺を隠せないでいる。


ここでいう「全滅」とは、7割以上戦闘不能ということを意味する。
ゼノクは本部・支部に比べて隊員の人数が少ないため、今現在のゼノクは壊滅的とも言える。

研究施設襲撃により、施設にいる研究者も負傷したと聞いた。
研究者の負傷者自体は少ないが、特に被害が大きい1階・2階の研究員はほとんど避難に間に合わず襲撃に巻き込まれた。


「室長と陽一さんは無事なのか!?」
慌てて聞く鼎。

「今必死に畝黒(うねぐろ)を捜索中。2人が着いた頃には研究施設は破壊された。破壊と言っても、ゼノク研究施設は要塞みたいなもんだから壊されたのはほんの一部だ」


ここで鼎が意を決して切り込む。

「西澤室長…お言葉ですが…。悠長にしていられませんよね?
負傷者多数で長官まで負傷したとなると…ゼノクは誰が指揮しているんですか?」
「俺も負傷者の手当てに回っている。憐鶴(れんかく)と二階堂は重傷だ。指揮なんて到底出来ない。指揮者は不在なんだ。
こっちはそれどころじゃないからね。…そこでだ」


――そこで?


「紀柳院・北川、君たち2人に一時的に指揮権を譲ることにする。
長官負傷・憐鶴も負傷した今、ゼノクをゼルフェノアを委ねられるのは本部にいる君たちしかいない」

それはつまり、一時的に全権を本部に移すということを意味しているのか?


「東京に出現した怪人は全て殲滅したようだね。御堂達は優秀だよ。
今から本部のモニターをゼノクのライブ映像に切り替える。研究施設の惨状にショックを受けるかもしれないが…これが現実だから…。
要塞化と防衛システムを持ってしても、畝黒に破られてしまった。宇崎と陽一だけでは持たないかもしれない。宇崎は研究者だ、戦闘に不向きなのはわかっているよね」


少しして、モニターが切り替わった。そこには目を疑うような光景が映し出された。
ゼノク本館を始めとする、メイン施設はノーダメージなのだが研究施設に関しては1階・2階部分が激しく損傷している。


北川は画像を拡大した。

「こりゃあひどい…。1階の被害が甚大だ。
畝黒の威力は畏怖すらも感じる…。どうやったらこんなことになるんだ…」
「…北川さん、私達でゼノクの指揮も出来るのでしょうか…」


鼎は不安そうな声を出す。

ゼノクの指揮まで西澤から委ねられるとは。状況が状況なだけに受け入れるしかないが、心の整理がまだ出来てない。


そんな中、御堂から通信が入った。
「鼎!怪人殲滅完了したぞ!次はどうしたらいい!?」

「……今から高速輸送機を出す。晴斗と共にゼノクへ行って貰いたい。他に戦力が必要なら人員を増やしても構わないよ。
室長と陽一さんは先にゼノク研究施設へと到着した。
……ゼノク研究施設は今現在、指揮が回らないほど大変な事態になっている」


「何が起きてんだよ!?説明しろって!!ゼノクで何があったんだ。…畝黒か!?やつは何を…」

「ゼノク隊員は畝黒怪人態の猛攻でほぼ全滅状態。長官は負傷。憐鶴と二階堂は重傷だと聞いた。
研究員も負傷者多数で指揮どころじゃない」
「ゼノクもカツカツじゃねーか!わかった。至急向かうことにする。輸送機って…あれか?」


御堂は上空を見た。そこには小型の高速輸送機が。これなら垂直離着陸可能なため、滑走路がないゼノクでも本館屋上のヘリポートで離着陸出来る。

輸送機はゆっくりと着陸した。


御堂は早速乗り込む。囃(はやし)と鶴屋は見送ったのだが。


「囃は乗らないのかっ!!」
ぶっきらぼうに言う御堂。

「俺って必要か?邪魔にならないかねぇ」
すっとぼける囃。
「お前のブレードの威力を試す時が来ただろうがよ。蛟(みずち)の発動…あれ100パーじゃないよな」


ちっ。和希にはバレてたか…。
そうだよあれは100%じゃねぇ。発動100パーは消耗半端ないから滅多に使わないんだよ。


囃は渋々乗り込んだ。やがて輸送機は晴斗を乗せるべく、次の地点へ向かった。



輸送機がくる間、晴斗もこのことを鼎から聞いていた。淡々と通信する2人。
晴斗は明らかに動揺している。


「鼎さん、至急ゼノクへ向かえって…。うん、わかったよ。
ゼノクの状況…聞いてたら胸が痛くなってきた…。指揮どころじゃないって…。精鋭全員戦闘不能ってヤバいんじゃ…。長官もやられたの…?」

「晴斗の力がどうしても必要なんだ。和希も輸送機に乗っている。もしかしたら囃もいるかもな。そこは和希に任せたから…」


ゼルフェノアの全権を西澤室長が一時的に鼎さんと北川さんに移行した話は衝撃的だった。
西澤室長も手一杯なんだ。

ゼノクの被害が深刻なためだが、鼎さん…平静を装おうとしてるけど声が震えてる…。


「室長と陽一さんが研究施設で畝黒を探してるんだ。今のところ通信は入ってない。
輸送機が来たらすぐに乗って欲しいんだ。畝黒の威力は尋常じゃない。高速輸送機を手配したのはそのためだ。地下の最高機密にアクセスされたら…全てが終わる」


めちゃめちゃヤバいじゃないか!!
地下の組織の最高機密にアクセスされたら全てが終わるって…。噂に聞いてるあの部屋なのかなぁ。限られた人しか行けない、あのフロアのことだよね…。


「晴斗、陽一と共に戦う形になるな」
「父さんが来たってことは、北川元司令もいたりする?」

「司令室にいるよ。本部のサポートをしてくれている」
「…よ、良かったぁ。鼎さんだけかと思っていたから…」


「そんなはずないだろうに。私だって全権いきなり委ねられてプレッシャーが半端ないんだ。
緊急とはいえ、前代未聞だからね。北川さんがいなかったら…私は重圧に押し潰されてたよ」



やがて輸送機が到着。晴斗は輸送機に乗り込んだ。御堂と囃が機内にいた。


「桐谷さん・神(じん)さん、行ってくるよ」
「生きて帰ってきてくださいね。私はそれしか言えませんから」

「紀柳院も戦ってるんだ。応えてやれよ」
神の珍しく優しい言葉。神なりの優しさらしい。


高速輸送機はゼノクへと向かう。



この様子を見ている隊員達がいた。上空のどこかへ向かう高速輸送機を見つめるのは彩音と梓。


「あれ…高速輸送機だ。どこへ向かうんだろ」

「方向からしてゼノクじゃないか?東京の怪人は全て殲滅したと報告が入ったな。
…ラスボス様のところへ向かったのかもしれないぞ。ちょっと前にうちの組織のヘリもゼノク方向へ飛んでいたじゃないか」

そこにいちかが。
「このシェルターの手当て、一段落しましたっす!」
「いちか、ありがとね。助かったよ。一段落ついたから本部へ戻ろうか」



霧人達バイク隊も救護応援が一段落ついた模様。


「東京の怪人は全て殲滅したんだと。あらかた市民の手当ての応援は落ち着いたし、あとは救護隊に任せて撤収するぞ」
「救護隊…少しは落ち着いてきたんですか」

「周りを見てみろ。そこそこ落ち着いている。
俺達は救護隊員じゃないし、人手が足りないから応援に来てただけだろ。本職はバイク隊だからな。パトロールしながら本部へ戻るぞ」
「渋谷隊長、了解です」


バイク隊はパトロールも兼ねながら撤収を開始した。



新人隊員を引率しながら本部へ撤退した氷見は疲れていた。
急とはいえ、副隊長はムチャブリをする…。

なんとか本部へ到着した新人隊員の一部と氷見は解析班の朝倉に迎えられた。
「おかえり。よく頑張ったね。ほらほら今のうちに休んで。こっちはもう大丈夫だと思うけどさ…」
「えーと、朝倉チーフでしたっけ。どういうことですか」

朝倉は複雑そうな表情を見せた。
「君たち新人隊員に言うのも躊躇うんだけど、『ゼノク』という長官がいる場所…あるでしょう。
そこが桁違いに強い怪人1人によってめちゃめちゃにされて大変なの。ごめん…。言わない方が良かったかな…」

「そ、そんなことないですよ…。過酷なんですね…怪人と戦うのは…」
「解析班の私が言っても説得力…ないよね…」



桐谷と神も撤退。組織車両内はどこか気まずい。

「晴斗くん、行ってしまいましたね」
「健闘を祈るしかないだろう。あのブレード…ただのブレードじゃないと聞いたが」


「対怪人用ブレードは稀に、例外的な力を発揮するものもあるんですよ。
晴斗くんのブレードと鼎さんのブレードはそれに該当します」
「補佐って戦えないのに、ブレードはそのままあるんだ…」

「鼎さんのブレードは例外中の例外なんです。御堂さんと晴斗くんがなぜか発動を使えますから。
どうやら鼎さんと繋がりが深い人だけ、それが出来るみたいです。
…不思議ですよね。…ブレードは基本的に本人以外は使いこなせないように出来てるのに」
「それ、聞いたことある。対怪人用ブレードは刀鍛治と科学技術の融合で出来てるとか…」


そう、対怪人用ブレードは謎テクノロジーで出来ている代物なのだ。
刀鍛治と科学技術の融合で出来ている、奇跡のような装備。詳細は明かせないが、ブレードにはそれぞれ銘も付いている。

実は全てのブレードは発動することが出来るのだが、使い手によっては消耗に個人差があるため、発動を使わないで戦う隊員も多い。


発動すると通常時から特性が変わるものもある。

例として、仁科の澄霞(すみかすみ)は発動すると使い手は高速移動が可能となる。
囃の蛟も発動するとひと振りで広範囲攻撃が出来るようになる。これは衝撃波が拡大するため。



研究施設。宇崎と陽一は慎重に捜索中。


「陽一、エレベーターは生きてるようだな。2基とも生きている」

2基あるエレベーターのうち、ひとつは最高機密のある地下5階へと直結しているが、パスワードがないと行けないシステム。
パスワードを3回間違うとロックがかかってしまい、24時間解除は不可能。


「宇崎。階段で行かないか」
「階段ねぇ」

階段では地下5階へは行けないはずだが…。しかし、やつはどこにいる?



ゼノク隣接組織直属病院。


病院では野戦病院のような修羅場と化していた。次々と運ばれる怪我人。病院もギリギリな状態だった。

西澤も手当てをする。



とある病室の特別室。そこには長官がいた。長官は激しいダメージを受けた左腕の義手を見つめている。
右腕の義手もかなりのダメージを受けている。

戦闘中、気づいたら血まみれになっていた。爆破の影響もあるのだろう。致命傷は免れたが。


ベッドの横には南がいた。

南は頭と腕に包帯が巻かれていた。彼も畝黒によって負傷したひとり。


「長官…ゼノクに……ゼルフェノアに未来はあるんでしょうか…」
「希望を持つんだ。こんな状況下でも諦めずに戦っている隊員がいるだろう。諦めてはいけない…」

長官は辛そうだ。



高速輸送機はゼノクへと到着した。晴斗は研究施設の惨状に戦慄する。


――なんなんだよ、これ…。

「晴斗、これまでのラスボス様とは明らかに被害状況が違うだろ。覚悟は決めたよな」
御堂は普段通りに話しかける。

「……うん」


season3 第12話(4)

畝黒(うねぐろ)怪人態は粂(くめ)にじわじわと手をかけようとしている。恐怖で涙が止まらない粂。


畝黒は彼女の腕をギリギリと左手でものすごい力で締め付け、動けなくしている。彼の右腕は刃へと変化していた。
「もっと恐怖するがいい…」
「やめてよ!!」

痛みに悶える粂。腕が折れる音がした。


彼の右腕が彼女の体を貫こうとしたのだが、寸前で苗代と赤羽が飛び道具を使いなんとか救出する。

「大丈夫か!?」
苗代は粂の怪我を見た。左腕が折られている…。粂は恐怖で震えている。戦意喪失状態だ。


苗代と赤羽は次のターゲットにされてしまう。

「1人ずついたぶろうと思っていたのにねぇ。最後は義肢のお姉さん、お前だな。
さて、いつまで持つかなぁ。隊員だけでは私には勝てないのにね。差がありすぎるよ」


畝黒は触手を同時に展開、苗代と赤羽を締め付けた。かなりの力がかかっているのか、簡単にはほどけない。
触手の先は2人の首をじわじわと狙う。

これには憐鶴(れんかく)も見ていられなかった。
「苗代!赤羽!」
「れ…憐鶴さん…。俺達のことはいいからこいつを倒して…」

苗代は苦し紛れに言った。
赤羽もなんとか触手を振りほどこうとするも、ただただもがくばかり。

……苦しい…!俺にはまだ憐鶴さんと一緒にやることがあるのに…!


赤羽は意識を失いかけているも、まだ諦めてはいない。だが動けない。
苗代も触手の脅威に晒されていた。


苗代と赤羽は憐鶴からしたら、付き合いの長い仲間である。
特殊請負人として活動し、数年間共に過ごしてきた。

苗代と赤羽は場を和ませる存在でもあったため、彼らは憐鶴を知らず知らずのうちに救っていたのである。


2人を助けなければ…!
二階堂や上総には厳しい状況。ここは私が行くしかない…!


苗代は目線を憐鶴に向けた。ギリギリの状況。

「早く九十九(つくも)を使って…。俺達は怪我してもいいから…致命傷は勘弁だけど…。…ぐわっ」
触手がさらに力を増したらしく、苗代が苦しんでいる。赤羽は気絶しているのか、返事がない。


「仲間を助けるか?見捨てるか?」
畝黒の容赦ない台詞。触手は2人の体にぎっちりと巻きついている上に、首にまで巻きついている。助けるかは時間の問題。


苗代は「九十九を使って」と言ってくれたが…。憐鶴に迷いが生じる。
二階堂はそれでも諦めなかった。

誰だろうが、隊員を助けようと孤軍奮闘してる。力が及ばなくても。二階堂も消耗し始めていた。


「憐鶴さん!いつもの勢いはどうしたんですか!!」
「…二階堂……」

憐鶴は対怪人用鉈・九十九を見つめた。今こそこれを使わないでどうするんだ…。
二階堂、なんでそんなにも必死なの?


畝黒は苗代と赤羽にとどめを刺そうとした。
「終わりだ」

そこに突撃したのは憐鶴だった。九十九に雷を纏わせ、レールガンのように一気に放つ。原理は不明だが、九十九にはこのような使い方も出来た。

雷を纏った九十九は発動状態。辺りは眩い光に包まれる。


あの強力な攻撃で苗代と赤羽はギリギリ救出されたが、負傷。
苗代が「九十九を使ってくれ」と言ったがために、この2人は九十九の影響を受け軽傷を負った。赤羽は触手から解放され、咳き込んでいる。危うく窒息するところだった。


触手に苦しめられた2人はかなりキツそうだが、憐鶴に礼をした。


「あ…ありがとうございます」
苗代はなんとか声を出す。

「安全なところに逃げてください。粂も連れてあげて。彼女、骨折してるでしょう」
「憐鶴さん…戦力だいぶ減りますよ!?たった3人で戦う気ですか!?」

「今はそうするしかないんです」


苗代・赤羽・粂は撤退を余儀なくされた。粂は怯えてしまっている。



晴斗は対怪人用ブレード・恒暁(こうぎょう)を発動させ、強化された怪人5体相手にまとめてかかる。


「うりゃあああああ!!」
晴斗は知らず知らずのうちに発動している間だけ、広範囲攻撃が可能となっていた。
広範囲攻撃が可能となったことでまとめて打撃を与えられる。

「まだまだぁ!!」
晴斗は他の場所もなんとなく気になっていた。御堂さん達は大丈夫なの?鼎さんは?


桐谷と神(じん)は晴斗の援護。特に桐谷はマシンガンとロケット砲という荒業。神は対怪人用銃を使い、牽制。

「暁、本領発揮してる…すごい」
神は対怪人用ブレード発動を初めて目の当たりにした。



御堂達はというと、御堂と囃を主体として怪人5体と交戦中。鶴屋は援護。
鶴屋が張った護符の結界内でのバトルだが、敵はしぶとい。


「鶴屋、結界2重にしといて!これだと破られんぞ」
「了解」

囃(はやし)と鶴屋は連携しているが、御堂とも連携していた。


御堂は鼎の対怪人用ブレード・鷹稜(たかかど)を発動させる。刀身が赤く光った。

「囃の蛟(みずち)もはよ発動させろ」
「うっせぇな〜」


囃も自分の対怪人用ブレード・蛟を発動。彼のブレードは野太刀型なため、通常の日本刀型ブレードよりも長く重い。そして強度が並み以上。

発動した蛟は攻撃力特化型。囃はブレードを斬るよりも叩きつけるスタイルなため、発動するとさらに攻撃力が増す。
発動した蛟はひと振りで広範囲攻撃が出来る。


「和希、ちょっと離れてろ。危ねぇぜ」
「何する気だ?」

「蛟は暴れ馬なんでねぇ。滅多に発動なんて使わないわけよ」


そう言うなり、怪人5体相手に一気にぶっ飛ばす囃。
「暴れ馬」ってそういう意味だったんかい…。

囃のブレードは強度が並み以上なため、元々スペックが高い。叩きつける的な意味で。


御堂も鷹稜で怪人を撃破していく。



研究施設では畝黒に異変が起きる。何も攻撃してないにもかかわらず、ダメージを受けたのだ。


二階堂と憐鶴・上総(かずさ)は一体何が起きたのか、わからなかった。

今、流血したよな…?勝手に。何が起きてんだ?
それも立て続けにダメージ受けてる…。


畝黒はぼそりと呟いた。


「ちっ、撃破されたか…」

撃破された?


ある場所で解析班と連携している三ノ宮はこのことを本部に報告。
畝黒が二階堂達から攻撃を受けたわけでもないのに、勝手に流血したと。



解析班の朝倉は三ノ宮の報告を受け、確信した。

「やっぱり東京に出現した色違い怪人は畝黒の分身だったのね!
じゃないと主が流血なんてしないから」
「チーフ〜、撃破したのは暁みたいです。御堂と囃も撃破しています」

マイペースな話し方の矢神。彼は副チーフ。


「仁科副隊長のエリア、大丈夫ですかねぇ。新人隊員連れてるからかなりキツいはずですよ」
「何言ってんのよ、矢神。副隊長のブレードをお忘れのようね。
あれを使った副隊長は惚れるくらいにカッコいいんだから」


朝倉は仁科のブレードについて何か知っているらしい。



そんな仁科達4人も怪人5体相手に本気モードに。


「八尾と吾妻はそこの2体を同時撃破して!撃破出来なくてもいいからダメージを与えればいいから。音羽は銃で牽制出来るか?」

あの温厚な仁科副隊長のキャラが少し変わったように見える…。


新人隊員3人は必死。仁科は抜刀した対怪人用ブレード・澄霞(すみかすみ)を発動。

「それじゃあ行くね」
仁科はにこやかに笑った。
彼は高速移動でまとめて斬り刻む。なんという早業。


あまりにも鮮やかすぎて見とれてしまった3人。
怪人5体は仁科1人で倒してしまった。


副隊長…すごい……!



研究施設では畝黒が再びダメージを受けていた。これが好機だとばかりに3人で立ち向かう。東京の怪人は確実に撃破されている!

3人は自然発生的に動いていた。


九十九は発動状態なため、攻撃力が増している。

二階堂も右腕の戦闘兼用義手の隠しモードを展開させた。これは蔦沼が「万が一のことがあったら使うんだよ」という、注意事項もある装備。
それは対怪人用ブレードと同じ素材で出来た仕込み刃。発動も可能だが、消耗が激しい諸刃の剣。

それを腕から刃を展開させる。普段の仕込み刃とは刃の色が違う。漆黒だ。
「あまり使いたくないのですが…使います。諸刃の剣ですが」


二階堂は少し無理していた。上総も自分の忍者刀型ブレードを発動させる。
彼の対怪人用ブレード・忍蔓(おしかずら)は忍者刀という特性上、素早さが特徴。


「二階堂、『それ』使うのか?やめとけよ…。リスクありすぎだろうが…」
止めようとする上総。だが、二階堂は決めていた。

3人はほぼ同時に畝黒怪人態へと挑む。触手をなんとか避けるものの、ギリギリ。
特に二階堂はずっと戦闘しっぱなしなため、疲労の色が見えている。そんな中、あの隠しブレードを使うとか…正気じゃねぇ!!


畝黒怪人態は少しずつダメージを受けていた。分身が撃破された影響もある。


二階堂は義手の隠しブレードで近接戦に持ちこんだ。攻撃を受けたら良くても重傷、下手したらTHE・エンドだというのに。

「二階堂、バカ!離れろ!!」
上総は思わず叫ぶ。彼女は隠しブレードを発動させた。死ぬ気か!?


それを阻止したのは憐鶴だった。
「気持ちはわかりますが、もう少し仲間を頼ってくださいよ」

憐鶴はものすごく落ち着いてるが、めちゃくちゃ流血してる…。しかも右腕から血がだらだら流れてる。利き腕なのに。
黒い仮面も一部は割れてるし、相当な衝撃を受けたんだ。左目付近が割れているせいで、素顔の一部が見えた。


憐鶴は穏やかそうな目をしていた。


畝黒は容赦ない攻撃を繰り出す。3人はダメージを受け、吹っ飛ばされる。
残されたゼノク隊員3人はぼろぼろだった。戦意喪失寸前なのは二階堂。

腐れ縁の上総がなんとか奮い立たせようとするも――彼女の心は折れていた。


そこにじわじわと迫る畝黒。もはや絶望しかない。



ヘリでゼノクへ移動中の宇崎と陽一は、この数分後にゼノクへ到着した。

2人はゼノク全体の惨状を見る。防衛システムは起動していた。
ゼノクの本館含むメイン施設は被害なし。だが…研究施設はひどい有り様だった。


「…なんてひどい有り様だ…。堅牢な研究施設がいともあっさり破壊されるなんて――」
陽一は複雑そう。

研究施設は瓦礫の山と化してした。施設の一部の損傷が激しい。畝黒の威力がとんでもないことを物語っている。
宇崎はある場所でゼノク隊員3人の姿を見つけた。3人は傷を負い、立てない状態。


「――おいっ!大丈夫か!?しっかりしろ!!何が起きた!?」
宇崎が声を掛けたのは二階堂。二階堂の右腕の戦闘兼用義手はめちゃめちゃに破壊されている上に、額から流血している。

二階堂は力ない声で答えた。
「畝黒は危険すぎます」


陽一も上総と憐鶴に声を掛けた。上総は軽傷のようだが、二階堂と憐鶴は明らかに重傷レベル。


ゼノク隊員が全滅した―
実際はただ1人、三ノ宮が残っているのだが→彼は恐怖と戦いながら本部に解析データを送り続けていた。


宇崎と陽一は3人を病院に搬送するように本館へ要請。
2人は畝黒怪人態を捜索することとなる。


三ノ宮は宇崎と陽一の姿を見て安堵した。

「宇崎司令、来てくれたんですね」
「お前…ずっと物陰からデータ通信してたのか。もう隠れてやる必要はないよ。本館へ戻って。
――ゼノク隊員は全滅したよ。もう戦える隊員はいない」


――えっ!?





第13話へ。


season3 第12話(3)

「作戦変更だ。いちかと梓は彩音に合流するか、本部へ戻れ」
御堂から突如作戦変更が。敵の数に対して戦力過多だと判断した模様。


現に敵の数は5体のままだが、御堂達は計8人と大所帯。ほとんど御堂と囃が戦っているため、いちかと梓を撤退させようとしたわけだ。
囃も仲間の支部隊員をチラ見した。

「戦力過多だな〜。一気に減らすか。和希の作戦変更にこっちも乗るぞ、いいな」
支部隊員達もこれには異論もなかった。人数が多ければ的にされてしまう。敵の思うつぼだ。


支部精鋭で残ったのは囃と鶴屋。鶴屋の護符はバリエーション豊かなため、トリッキーな戦闘スタイル。攻撃範囲も自在。

都内某所Aは御堂・囃・鶴屋の3人で戦闘続行することとなった。残りの支部隊員は一時撤退。いちかと梓は彩音に合流、救護に当たることにした。



都内某所Fも大所帯である。怪人5体に対し、新人隊員10人と仁科副隊長という内訳だ。
新人隊員でもこの状況下で、音羽のように何かに目覚める者とそうじゃない者に分かれる。

仁科はその新人隊員で誰をここに残すか、決断を迫られていた。八尾と音羽は自然と連携している。


「副隊長!どうしたんですか!?なんで戦わないの!?」

八尾は激しい格闘をしながらも聞いている。器用だな…。
それにしても…八尾は天然なのか、ナチュラルに攻撃力が高い。なんなんだ、あのパンチは…。


「氷見、残りの隊員を引き連れて安全なところへ一時撤退して貰えるかな。怖じけづいて戦えない隊員も複数いる。
…ここは俺と吾妻・八尾・音羽の4人で行くからね」


氷見は残りの新人隊員の引率を任された。安全なところへ撤退するにしても、重大任務。プレッシャーがかかる。


この新人隊員の中で戦闘経験者は元自衛官の吾妻と元警察官の氷見だけ。
八尾は天然なわけで戦闘経験は少ないものの、攻撃力は高くのびしろはある。

音羽はこの一連の戦闘で突如、何かに目覚めた。最初は怯えていたのに今や急成長。銃の扱いも慣れてしまっていた。意外なのは機動力である。

吾妻を残したのは彼は肉弾戦特化型。格闘に関しては強い。元自衛官なだけあるが…八尾とタッグを組めば、とんでもない化学反応が起きそうだ。


仁科は本気モードとなる。

「今までの怪人とは強さが違う。これの出番だね」
彼は自分の対怪人用ブレードを静かに抜刀した。



都内某所E。晴斗は何かに気づいた。
対怪人用ブレードを使うと怪人は弱体化するのか、一時的に弱まる。しかし、怪人5体はまだ1体も撃破出来ず。

「桐谷さん・神(じん)さん、もしかしたらこの色違いの怪人の攻略法…わかったかもしれないよ」


霧人達バイク隊は空気を読んだ。

「じゃあ俺達は撤退するよ。撤退というか、救護が追いついてないみたいだから応援に行ってくる」
「渋谷隊長、3人に任せていいんですか!?」

「いいんだよ。人数多くて足手まといになるよりかは、別の方に回った方がいいだろ。効率もいいし」


霧人はぶれない。



本部司令室――


解析班から分析結果が出た。

「補佐、取れますか?色違いの怪人について分析しましたよ」
「何かわかったのか?」

「計15体の色違い戦闘員についてですが…畝黒(うねぐろ)怪人態と密接に関係してることがわかったのよ。
ゼノクの三ノ宮とも連携してるんですが、三ノ宮によれば、東京に出現している怪人のダメージがある程度畝黒に返ってくるらしい。まだ推測だけどね。
もしかしたら色違い怪人は畝黒の分身のような存在かも」


予想を裏切るとんでもない分析結果だ…。
畝黒の分身説。まだ確定ではないが、やはりリンクしてるのか。



少人数となった御堂達は一気に攻勢を畳み掛ける。


「囃ィ!ブレードで叩っ斬れっ!!そのブレードは強度半端ないんだろ!?」
「俺の『蛟(みずち)』を舐めてんのか」


鶴屋はそんな2人をよそに、護符で結界を広範囲に展開。
「囃、結界張り終わったよ」
「仕事早すぎ」


そんな3人の元に、上空から日本刀型ブレードが飛来してきた。ものすごい勢いで。


「うおっ!?なんか飛んできた!?…ブレード!?」
思わずオーバーリアクションをする囃。御堂はそのブレードをキャッチ。

「囃、驚くなよ。これは鼎のブレードだよ」
「鼎…今司令補佐してんだっけ…。戦えなくなったとは聞いたけど、マジだったんか…」


「和希、聞こえるか?」
鼎から通信が入った。

「どうした」
「私の鷹稜(たかかど)を使ってくれないか。解析班の分析結果も出た。
今いる色違いの怪人は畝黒の分身の可能性がある。…まだ確定ではないが」

「ありがたく使わせてもらう。発動させてもいいんだろ」
「当たり前だ。鷹稜は久しぶりの戦闘で血が騒いでいるみたいだよ」


人間態での想像がしやすいよな〜、鷹稜…。
あいつ、ずっと戦闘の機会がなかったから…。


「鷹稜!大暴れするぞ!!」
御堂は鷹稜を勢いよく抜刀した。



彩音と合流したいちかと梓はというと。


「あやねえ!」
「いちか、梓…どうしたの」

いちかはもやもやしながらも正直に言う。
「たいちょーから撤退しろと言われたっす。人数多いから。だからあやねえのところに来たんだけど…」

「このシェルターはほとんど手当ては終わってるよ。次の場所に行こうか。
人手が足りなかったんだ。次の場所はここからちょっと離れてる。そっちはまだ救護が追いついてないみたい…」
「彩音、あたしも力になるよ」

「頼もしいんだね、梓は。鼎…大丈夫かなぁ。彼女からしたら長丁場だから…過酷だと思う。身体のこともあるからね」


彩音はなんだかんだ気にしているようだ。親友のことを。鼎は補佐とは言えども、それ以前に2人は親友同士だもんな…。
あたしの知る悠真はあの事件で姿が変わり果ててしまったが、今では仮面姿を受け入れている。あいつからしたら仮面なしでは人前には出られない。…正直辛い。


「梓、どうしたの?険しい顔して」
「あ…いや……なんでもないよ」

「鼎のことが気になっているんだね」
「あやねえ、きりゅさんは大丈夫だと思うよ…。仲間たくさんいるじゃんか」



北川と陽一は本部へと到着。
これに驚きを見せたのは宇崎だった。


「北川と陽一!?呼んでもいないのになんで来たの」

この問いにあっけらかんと答える北川。
「本部のピンチだからね。ヒーローは遅れてくるだろ?それに紀柳院も気になっていたんだ」


鼎からしたらこれは予想外の展開。北川さんが来るなんて。


「紀柳院。これからは安心していいよ。俺がいるからね。
長丁場は相当キツいだろうに…。見たところ調子はあまり良くなさそうだな…」

北川は鼎の不調を見抜いた。来て数分しか経っていないのに、なんという洞察力。


瀬戸口は鼎の不調に気づかなかった。顔が見えないゆえにわかりにくいのもある。

「北川」って…ゼルフェノア最初の北川司令!?OBが来るとかなんなんだ、この展開。
「陽一」は暁陽一だよね…?えーとゼルフェノア黎明期の隊長だった人だっけ。


なんだかすごい面子…。


「宇崎、本当は戦いたいんじゃないの?君も自作の対怪人用ブレード…作っていたんじゃないのかい」
「き…北川!なんでわかったんだよ!!」


実は宇崎、自分用の対怪人用ブレードを作っていた。

まだ出番はないのだが、かつての同僚にあっさりと見抜かれてしまう。北川には到底勝てない。


陽一は司令室のモニターをずっと見つめていた。
「宇崎。ゼノクの状況を教えてくれ。場合によってはゼノクへ行かないとマズイぞ…!」

鼎は西澤から聞いた戦況を2人に話した。西澤と綿密に連絡していた鼎は宇崎よりもゼノクの状況には詳しかったわけで。
それを聞いた陽一は突拍子のないことを言い出す。


「…ゼノクに行ってもいいですか。ヘリで」
「ちょ…ちょっと待て陽一!?唐突すぎるだろうが!!何の計画もなしに行くのかよっ!!危険すぎる!!」

慌てふためく宇崎。


そこに鼎が口を挟んだ。

「研究施設はゼノク隊員だけで畝黒と交戦している。
長官は負傷したと報告が入った。秘書の南もだ。戦況は劣勢。
畝黒怪人態に関してはまだ情報が少ないが…人間態の倍、威力はあると聞いた」


「宇崎、お前もゼノクへ行けば?陽一と一緒に助っ人として。ゼノク隊員はピンチなんだぞ。
本部は俺に任せなさい。俺と紀柳院で回すから」


司令北川、一時的に復活。

北川の計らいで、宇崎も陽一と一緒に急遽ヘリでゼノクへ行くハメに。



研究施設ではギリギリの攻防が続いていた。
畝黒怪人態は触手を使い、同時攻撃をする。これがなかなか厄介な代物でギリギリと締めつけていく。

「蔦沼にも及ばないな」
二階堂は右腕の戦闘兼用義手を展開し、なんとか触手を切ることに成功するも仲間はまだ触手の餌食になっている。
自由に動けるのは二階堂と憐鶴(れんかく)のみという状況。


憐鶴は対怪人用鉈・九十九(つくも)を発動させようとするも、このまま発動すれば畝黒の触手を介して仲間が感電してしまう。

発動が使えない。


畝黒は触手のひとつを伸ばし、地下へ侵入を試みる。
すかさず二階堂が戦闘兼用義足の仕込み刃を使い、蹴りでぶった切る。


「…侵入させません」

「ずいぶんとお疲れのようだねぇ。義肢のお姉さん。その義手、長官と同じようなものかな?
破壊したら面白そうだ」


憐鶴は九十九を発動せずに触手を次々ぶった切る。だが、触手はすぐさま再生。

仲間達は助かったものの、すぐにまたピンチが訪れる。


二階堂と憐鶴はだんだん追い込まれていた。

どうしたらあの触手を攻略出来る…?地下に侵入されたらアウトなのはわかってる。
触手は再生するのが厄介すぎる…!


畝黒の魔の手が迫っていた。三ノ宮は物陰で本部に怪人態の解析データを仕切りに送信している。
三ノ宮は畝黒にバレたら終わりだとヒヤヒヤしながらも、ノートPCをひたすら打ち込む。

三ノ宮からもたらされたデータは本部に活かされている。


畝黒は触手を収め、隊員をひとりずつじわじわといたぶる方法へと変えた。
彼の冷酷かつ、残虐さが際立つやり方で。怪人態ゆえに恐怖が増している。

最初のターゲットは粂(くめ)。


「い、いやあああああ!!」
粂の悲鳴が響き渡る。二階堂達は見ていられなかった。このままだと死人が出てしまう…!


season3 第12話(2)

このまま行けば相討ちになってしまう。長官いくらなんでも無謀すぎだろ!!


緊迫した研究施設内部。上総(かずさ)はどうすることも出来ないでいる。
畝黒(うねぐろ)は人間態であれほどの威力があるなんて。怪人態になったらどうなってしまうんだ…!


蔦沼は帯電した左腕の義手を見た。十分すぎるくらいにエネルギーは溜まっている。
南も嫌な予感がしたらしい。

あのチャージ…通常よりも長い。最大出力で雷撃2発目を撃つとか、もはや正気の沙汰じゃない。


畝黒も再び攻撃の構えをした。
「どうしても例の部屋…アクセスを拒否するのか」

蔦沼も構える。
「君にアクセスされたらたまったもんじゃないね」

畝黒はそんなことお構い無しに攻撃を仕掛けたとほぼ同時に、蔦沼も雷撃を放ちながら一気に突っ込む。端から見たら相討ちだ。


蔦沼は寸前で畝黒の懐に入り込み、最大出力・ゼロ距離雷撃を浴びせた。
不意を突かれる畝黒。畝黒の手元が狂ったのか、攻撃は不発に終わる。

蔦沼の消耗は増すばかり。
やったか!?


畝黒は怪人態へと変貌していた。禍々しいその見た目は畏怖すらも感じる。
人間態ですら桁違いに強いのに――

こんなやつ相手に倒せるの!?
二階堂は状況把握していた。長官は最大出力で雷撃を2発使い、かなり消耗している。さらには負傷も。
秘書の南さんがいなかったら、致命的なダメージを受けていたに違いない。


研究施設は絶望の淵に突き落とされる。畝黒怪人態の登場によって。



畝黒怪人態の影響は、都内某所3ヶ所で戦っている隊員達にも及んでいた。



御堂達と囃達の本部支部精鋭隊がいる都内某所Aでは、あれだけ湧いていた怪人の出現が一掃されて以降、完全に止まったかのように見えた。


「たいちょー、怪人出なくなったみたいっすよ」
いつも通りの話し方のいちか。

「油断するな。なんだか嫌な予感がするんだよ…!梓も感じないか?気味悪いんだよ…」

「和希も薄々感じているんだな。この戦い、まだ終わってない」
囃も何か感じている。



都内某所Eでも異変が。ここは御堂達がいる特異点ではないにしろ、異常に戦闘員が出ていた場所。
ここでは仁科副隊長率いる、新人隊員達が交戦していた。ここでも怪人が一掃されて以降、不穏な空気が流れている。


「…おかしい。殲滅したはずなのになんなんだこの違和感は…」
仁科は辺りを見渡す。怪人は確かに全て殲滅したはずなのだが、気味悪い。



都内某所F。ここでは桐谷・神(じん)・晴斗と後に合流した霧人率いるバイク隊の連合隊。バイク隊は少人数。少数精鋭部隊だ。
この場所も特異点ではないのだが、怪人が異常出現していた。


晴斗の活躍により、怪人は一掃されたが不穏な空気がずっと流れている。

「桐谷さん・霧人さん…なんか不気味じゃない?うまく言えないけど…」
「晴斗くんも感じているんですね。私も気味悪いですよ。これはまだ…何かありそうですね」

桐谷が不安げな表情を見せた。神も辺りを見ては何かをしきりに気にしてる。
「怪人は完全に殲滅したわけではなさそうだぞ…。嵐の前の静けさかな」



「――長官、逃げてください!これ以上戦ったらもう体が持ちませんって!!左腕の義手…雷撃2発撃ったからオーバーヒートしてますよ…。最大出力使ったから…」


蔦沼は南に指摘され、左腕の義手を見た。
あぁ、もう使い物にならなくなってしまったか。西澤にまた怒られるな…。


「ここから先は私達が行きます!長官と南さんは逃げてください!!」
そう言ったのは二階堂だった。憐鶴(れんかく)もうなずく。


隊員だけで畝黒に立ち向かう気か!?それも怪人態。
蔦沼は南に支えて貰いながらなんとか研究施設を脱出する。

「後は君たちに任せた」



本部司令室――


「やったのか!?」
鼎と宇崎はモニターを見つめる。都内3ヶ所のライブ映像には怪人の姿はない。

宇崎はあることに気づいた。現場にいる全員に呼び掛けた。
「お前ら油断するな!新たな怪人が出ているぞ!!戦闘員…にしては色が違う。一体何が起きてるんだ!?」


「朝倉取れるか!?」
鼎は急いで解析班と通信。

「今出現している怪人の分析を早急にしてくれ。戦闘員にしては何かおかしい…」
「了解よ!補佐、本当に大丈夫なんですか?体調とか…」

「まだ若干不安だが、幾分回復したよ」
鼎の声が少し明るくなってる。
「うちの瀬戸口を司令室に送るから、彼は救護出来るの。だから彼に頼って。補佐と瀬戸口は顔見知りなんですよね」

「…そうだ」
「解析班は最悪私と矢神だけでもなんとかなる。この事態を共に切り抜けましょう。今こそ組織全体が一丸となるときなんだからね!」



少しして、瀬戸口が司令室に来た。


「紀柳院さん、なんなりと言ってください。組織の救護隊はフル稼働なんで、人手が足りてないんですよ。民間組織も駆り出されてますからね」
「瀬戸口…お前救護出来たのか。知らなかった」

「俺はマルチタイプな隊員…らしいです。解析と救護は珍しいと聞きました」


今現在、本部に残っている隊員は少ない。
解析班はデータ分析のために人員が必要なため、動けないのだが→朝倉曰く、最悪チーフの朝倉と副チーフの矢神がいればなんとかなる。

司令室は元々鼎と宇崎の2人体制。
補佐の鼎はあの事件で負った火傷のダメージと今までの戦闘によるダメージのせいか、戦えない身体となっている。最近まで調子は良かったのだが、この長丁場で疲労もあるのかどこか調子が悪そう。

朝倉はそれを危惧して救護出来る瀬戸口を司令室へと送った。鼎と瀬戸口は顔見知りだ。



都内某所3ヶ所でほぼ同時に異変が起きた。それはこれまで出現していたタイプとは異なる怪人の出現。
見た目は戦闘員とは変わらないが、色が違う。


御堂達がいる特異点では倒しても倒しても怪人が湧いていたのだが、この新たな怪人は数が少なく新たに湧いてくることもない。
その色が異なる戦闘員は5体いた。

これは他の場所も同じである。



「紀柳院取れるか!?俺だ!西澤だ」
突如入ってきた西澤室長の通信音声。ゼノクからだった。

「ゼノクは今絶望的な状況に追い込まれている。畝黒が怪人態になった」


怪人態!?


「長官は無事なのか!?」
「負傷したがなんとか離脱した。うちの病院に搬送されたよ。かなりのダメージを受けている。こちらも厳しい状況だ」
「都内で異変が起きた。これまでとは違う怪人が出現したんだ。現在都内3ヶ所で交戦している。
やつの怪人態と関係しているんだろうか…。早急に朝倉達に分析して貰っている」

「ゼノクは本部以上にギリギリだよ。長官が負傷するなんて。
今は憐鶴と二階堂を主体にしているところだよ」
「西澤室長は行かないのですか」


少しの間。

「ゼノクには怪人被害の後遺症に苦しみ、治療している入居者がいる。入居者と職員は東館と地下シェルターに避難させたが…。
被害は研究施設だけ。畝黒の狙いは研究施設のみでメイン施設は眼中にない。司令室を空けるわけにはいかないだろ」


いちかの兄や七美は無事か…。


「ゼノク隊員だけで畝黒と戦う構図になっている。
怪人態を攻略出来ればいいのだが…相手が桁違いに強すぎて、歯が立たないんだ」



都内某所3ヶ所では新たな怪人5体相手に攻撃を仕掛けていた。


「戦闘員にしちゃあ強すぎる!!突然変異かよ!?」

囃、野太刀型ブレードで容赦なく叩きつけるもまるで効いてない。パワー系の囃が軽くあしらわれるなんて。



鼎はある決断をした。司令室の片隅には自分の対怪人用ブレード・鷹稜(たかかど)をさりげなく置いてある。
戦えなくても愛刀は大事な相棒だった。


「鷹稜、出番だよ。和希のもとへ行って欲しい。今まで待たせたな」

――鼎さん、行って参ります。


鼎は優しい声で鷹稜に話しかけた。鷹稜は宙を舞い、一直線に御堂達がいる某所へと向かう。


「鷹稜を使う気か」
宇崎は窓の外を見ながら呟いた。

「あのパワー系の囃ですら効いてないんだ。
対怪人用ブレードの中でも、人間化出来る特殊なブレードなら…勝算はあるかもしれない。九十九(つくも)はゼノクだが、他は全て都内にある」
「燕暁(えんぎょう)も人間化出来たよな?晴斗の父親のブレードだよ!
今から陽一に出撃要請…どうするよ?」


「陽一よりも北川さんにお願いしたい」

北川とはゼルフェノア名義では最初の司令である。
ゼルフェノア黎明期・ファーストチームから在籍していた人のひとり。鼎からしたら居場所をくれた恩人で、彼女は慕っている。



某所。北川と陽一はプライベートでも仲がいいため、この事態にも気づいていた模様。

晴斗の父・陽一もゼルフェノア黎明期に活躍していた元隊員…もとい元隊長。


「陽一…出撃要請出てないが、本部行く?明らかにマズイでしょうよ」
少し軽い言い方の北川。
「北川さん、若い隊員達に任せればいいのでは」

「緊急でしょう。本部はカツカツみたいだし、助っ人として行くべきだろう。紀柳院のことも気になってはいるんだよ」


一時的に怪人はかなりの場所に出現していた。
今はだいぶ落ち着いてきているようだが、完全に殲滅出来たとは言い難い。


北川はそそくさと出かける準備をしている。

「…行くんですか!?」
「陽一、燕暁を持って行け。かなりめんどくさいぞ今回は」


北川元司令と暁元隊長、参戦。



「なんか強くなってる!?なんで!?」


都内某所Eでは八尾が怪人相手に格闘中。戦闘スタイルなにそれな八尾ですら、この怪人には四苦八苦していた。
この一連の戦闘の中で、新人隊員の一部にだんだん頭角を現す者が出始める。

新人隊員の最初の覚醒とも言うべきか…。


音羽は何かに目覚めたようだった。最初はあんなにも怯えていたのに、今は銃を使いこなし持ち前の機動力を駆使している。
これには仁科も驚く。


音羽が急成長してる…!


「八尾ちゃん!私が牽制するから任せてよ!」
「音羽、ありがとね」
「よそ見しちゃダメだってば!!」


音羽がいなかったら、八尾は攻撃を受けていた。


season3 第12話(1)

「ここからは選手交代だ、和希達は一旦休んでな。お前達ヘトヘトだろ」

御堂達の元に来た援軍が、まさかの支部隊員精鋭5人という展開。
その中には御堂の同期の囃(はやし)もいたわけだが、彼は知らないうちに隊長になっていたわけで…。


「囃…いつの間に隊長になっていたんだよ…」
御堂はゼイゼイ言いながら囃に聞く。

「話は戦闘後だ。こんだけ怪人がうじゃうじゃいたらキリないでしょうが。
っつーわけで月島・鶴屋、音撃と護符で一気にやっちゃって。ババーッとな。
久留米と高羽は好きなように暴れていいぞ。シールドシステムのおかげで爆破させても建物被害は最小限で済むからな〜」


囃の指示、ざっくりしてる。雑というか、元々こんな感じだったっけ?

いちかと梓も御堂同様、一旦休むことに。近くにはシェルターがある。



そのシェルターでは彩音が怪我人の手当てをしている。
組織の救護隊はフル稼働なため、救護には民間組織も応援に来ているようなてんてこ舞いな状態。

「大丈夫ですか!?今止血しますからね!」


彩音は今の状況を重く見ていた。民間組織まで駆り出される状況って…相当ヤバいよ…。
救護が追いついてないんだ…!


「あやねえ!」
「いちか…どうしたの?」
彩音はシェルターに現れたいちかを見る。

「支部の人達が来てくれたの。囃たいちょーに一旦休めって言われたけど、何か出来ることない?
指をくわえて黙って見ていろなんて無理だよ!」


いちかは必死だった。あやねえの足手まといかもしれないけど、何かしたいんだ。


彩音は冷静だった。

「簡単なことなら出来るよね?新人研修で習った救護、あれならいちかでも出来るから。
負傷者…市民はほとんど出てないのが幸いしてる。鼎のおかげだよ。シールドシステムのおかげで被害が少ない。でも死傷者は出てるから…。隊員に犠牲者が出てる」
「死傷者出てるって…嘘!?」


この同時多発的な怪人出現、人知れず犠牲になっている隊員もいるのも事実。
今回は敵の数が異常に多いため、数の暴力に負けてしまう隊員も少なからずいる。

救護に当たる彩音は救護隊と連携しているため、情報が続々と入ってくるらしい。



囃を始めとする支部隊員達は鮮やかに殲滅していたのだが。


「囃さん、これ絶対おかしいです!音撃で一掃しても数がなかなか減りません!」
そう叫んだのは月島。鶴屋も前代未聞な状況に困惑している。

広範囲で一掃してもなんでこの怪人は次々湧いてくるんだ…?
一定数を保っているのが気になる。だから御堂さん達は疲弊してたのか。



本部司令室。鼎はあることに気づく。

「和希達がいる場所だけなぜ怪人が減らない?カラクリでもあるのか?
他の場所は綺麗に殲滅されているのに…」


鼎は解析班チーフの朝倉へ通信した。

「朝倉取れるか?」
「補佐、なんでしょう」
「御堂達が交戦している場所について調べて欲しい。ここだけ怪人を倒しても倒しても次々湧いてくる。
カラクリがあるはずだ」


少し間があり返事が来た。

「了解しました。
……補佐、無理してませんか?気持ちはわかりますが…少し休んだ方がいいですよ。
……紀柳院司令補佐!?」


鼎は慣れない状況とプレッシャーに押し潰されそうになっていた。
宇崎は鼎の様子がおかしいと気づく。


「鼎!おいっ!しっかりしろ!頼むからぶっ倒れるな…!」

このバタバタした状況に気づいた朝倉は宇崎に聞く。


「何かあったんですか!?」

「朝倉…鼎のやつ、慣れない状況とプレッシャーでかなりの負荷がかかっているみたいだ。少しは自分の心配しろよ…。
お前の言う通り、少し休ませるから。倒れたら本末転倒だろ」

鼎は息を切らしている。仮面で顔は見えないが、明らかに辛そうだ。


「室長…すいません。少し休みます」
鼎の声に力がない。

「悪い。お前にプレッシャーをかけてしまったかもしれない…。
身体の調子、あまり良くなさそうだな…。鼎はあのダメージで健康体ってわけじゃないんだから、休み休みやればいい。独りで抱え込むなよ」
「すいません…」

「謝らなくてもいいよ。今は俺が指揮するから、ちょっとだけ寝てきなさい。
じゃないと体、持たないでしょ」


鼎は無言で司令室を出た。
少しふらついてる。ずっと立ちっぱなしだったのもあるのかもしれない。

彼女に長丁場は過酷だろうに…。



本部救護所。鼎はベッドの上に座っていた。
まだ動悸がする。プレッシャーのせいなのか、まだ少し気持ち悪い…。


突如、鼎のスマホに着信が入った。晴斗からだった。


「鼎さん?俺だよ晴斗だよ」
「…晴斗か?」

「俺、桐谷さん達と一緒に戦ってるよ。今は移動中なんだけどね。
鼎さん…無理してない?なんとなく気になってたから…」


鼎は沈黙する。…というか、なんて言ったらいいのかわからなかった。


「…あ、ごめん。気…悪くしたかな…」
「そんなことないよ。少しだけ元気出たよ」

「そう…良かった……」
晴斗の安堵の声。


晴斗との通話で少しだけ元気が出たらしい鼎だが、まだ司令室に戻れるような気力が戻っていない。
思っていたよりも消耗しているな…。確かに倒れたら本末転倒。



朝倉は鼎のことが気になっていた。分析を急ピッチで終えた後、バタバタと救護所へと向かう。

本当に大丈夫なんだろうか…。補佐は顔が見えないぶん、異変に気づきにくい。


「補佐、入ります」
「どうぞ」

鼎は朝倉の姿を見た。なんで朝倉がここに…?


「司令補佐…休んでいたんですね。良かった…」
「なんでわざわざここに来た?」

「そりゃあ心配しているからですよ…。うまく言えませんが…」
「分析は終わったのか?」

「終わりました。それの報告も兼ねまして。
御堂達がいる場所は特異点だと判明しました」


特異点!?


「さらに分析したところ、この場所は畝黒(うねぐろ)本人とリンクしています」

「つまり…」
「畝黒當麻を撃破しなければ、永遠にあの場所は怪人が湧いてくるんです」



朝倉のこの報告は宇崎にも知らされた。


「畝黒とあの場所がリンクしてる!?畝黒本人を撃破しないとあのままなのか!?」
「だからそうなんですってば」

「畝黒はゼノク研究施設にいると西澤から報告が上がっている。長官と畝黒が交戦中だとも聞いてるんだよ…」
「ゼノク隊員も駆り出されてるわよね!?」


「既に出撃済み。指揮は憐鶴(れんかく)がしてるというが…彼女なら戦うだろうな」



そのゼノク研究施設周辺では。憐鶴と二階堂が連携し、研究施設へ突入を試みていた。

「二階堂さん、義手の出力上げれますか」
「やったことはないですが…試してみます」


二階堂は右腕の戦闘兼用義手の出力をじわじわと上げる。二階堂の義手も雷撃が放てるようにアップデートされていた。

憐鶴はというと、対怪人用鉈・九十九(つくも)を発動させていく。
九十九は帯電し始める。


この様子を粂(くめ)達は見守るしかなかった。今現在、ゼノク隊員で攻撃力が高いのはこの2人だけ。
2人の強力な雷撃で研究施設に突破口を作ろうとする作戦。



研究施設内部。蔦沼は2発目の雷撃を放とうとしていた。
南は制止しようとする。

「出力上がっていませんか!?マズイですよ!!」


畝黒はニヤリと笑った。爆破する気だ!
彼は手のひらを翳し、派手に爆破させた。爆破の規模は大きい。爆風に煽られる蔦沼と南。かろうじて2人は致命傷を免れたが負傷してしまう。

それでも立ち上がる蔦沼。
再び雷撃するべくエネルギーを左腕に溜め始める。


憐鶴と二階堂は同時に雷撃を放った。届いて!!
2人の合体雷撃は研究施設へ突破口を作った。隊員達は研究施設へなだれ込むように突入。


研究施設内部は一部、瓦礫の山と化していた。堅牢な研究施設が破壊されている!?
あの爆破の後だ。長官は!?


長官はなんとか立っていた。両腕の義手もダメージを受けている。
秘書の南も負傷していた。


「…君たち、来たんだね」
そっけない反応。どう見ても負傷してるのに…。

蔦沼の左腕は既に帯電していた。二階堂は察した。
長官は最大出力を使うつもりなんだと。見た感じ、雷撃は既に1発使っている…。

雷撃は消耗が激しい。長官はこの雷撃に全てを込めるつもりなんだ。


「…君たち下がってて。これは僕と畝黒の戦いだから…」
「そんなこと言われても…」

戸惑いを見せる二階堂。憐鶴はさりげなく二階堂を長官の側から離した。


「これは長官にとって、最後の戦いになるかもしれないんです」
憐鶴は小声で隊員達に言った。



憐鶴は事前にある事を西澤から聞いていた。
それは蔦沼が長官を引退するかもしれないということ。それがいつになるかはわからないが、彼は区切りをつけようとしている。

西澤が憐鶴に一時的に指揮権を移行したのは憐鶴の能力を見るため。
予想外なのは二階堂である。いつの間にか現場を指示する隊長的なポジションへとなっていたからで。
それも自然となっていたから気づかなかった。


「長官に見せ場を作ってあげて下さい。お願いします」
憐鶴が隊員を制止したのはそういう理由だったのか。


畝黒の容赦ない攻撃はゼノク隊員をも巻き込む。だが、あくまでも蔦沼に花を持たせたくて。
この間にも蔦沼はエネルギーを溜めている。

最大出力、それもチャージ時間が長いとなると長官の身体の負荷は半端ない。
捨て身の攻撃になるのは誰が見ても明白だった。



その頃、本部では――


「室長、ありがとうございました。あれから調子は幾分戻っています」


鼎は司令室へと戻っていた。

「鼎、朝倉と連絡していたんだな。お前が休んでいる間に和希達に伝えたよ。
特異点のこと。畝黒とリンクしてる事実を告げたら全員驚いてたよ」
「……誰も予想つかないだろう。ラスボス本人と場所が繋がっているなんて――。
……ところで、和希達の状況は?」


「支部の囃達が援軍に来たから戦力倍増。休憩していた和希達も改めて交戦中。
新人隊員達は2つに分かれていたが、今は合流して別な場所で交戦中。
晴斗達は別なところで交戦中。つまり今現在は3ヶ所で交戦しているわけ。霧人のバイク隊も合流するでしょうな」


3ヶ所にまで絞られたか――

一時期、10ヶ所以上あった怪人出現エリアが今や3ヶ所となった。
隊員の死傷者は出ているが、建物被害は少ないと報告が上がっている。市民の負傷者も少ないらしい。


シールドシステムをあの段階で起動させて正解だったんだ。


「いよいよ正念場だな。鼎、西澤と通信しておけよ。
ゼノクとの連携で戦局は大きく変わるかもしれない。希望を持て」
「諦めたら終わりということか」

「今こそ士気を上げるべきじゃあないかい。
指揮権はお前に戻すよ」
「支部も加勢している時点で、この戦いは総力戦だと思いますが」


「そうだったな」


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