「…で、鼎の様子はどうなんだ?彩音」
御堂は彩音に聞いている。
「鼎は薬が効いたのか今は眠っているよ。私が来た時、鼎…『ネオメギドに対して実力が伴い』って言っててすごい悔しそうだった。あの怪人倒したの、ほとんど晴斗じゃない…」
「晴斗が二刀流になった時、力が増してたのはなんなんだ…?」
支部隣接・組織直属病院。
久留米は鼎がいる病室にいた。鼎は薬の作用で眠っている。
鼎のことなので白い仮面は着けたまま。
私、なんで紀柳院がいる病室にわざわざ来たんだろう…。それにしてもダメージ相当行ってるな…。見てて痛々しい。
前回は仮面割られたって聞いたけど、今回はそっちにはノーダメージなだけマシなのかな…。
久留米は何を思ったのか、ベッドに横たわる鼎に近づき彼女の仮面を外そうとする。
明らかに魔が差した瞬間だった。
鼎は眠ってはいるが、うわごとを言っている。どうやら仮面を無理やり外されることにかなりの抵抗がある模様。
「…やめろ、外すな!やめてくれ…。それは私の『身体の一部』だ」
鼎はこの状況をわかっているのかいないのか、うわごとを言いながら激しく首を左右に振っている。相当嫌がってる…。
久留米はこの悲痛な声を聞き、我に返る。
私…今、紀柳院の仮面を外そうとしてた…。彼女、相当嫌がってた…。
久留米は恐る恐る鼎から離れた。鼎本人は眠ってはいるが、戦闘の影響でうわごとが多いらしい。
久留米は自分の手を見た。
一体何やっているんだろう…私。怪我で抵抗出来ない人の仮面を外して何をしようとしたんだろう…。
紀柳院の素顔をはっきりと見たかったの?なんか違う気がする…。
久留米はしてはいけないことをしてしまい、罪悪感に苛まれる。
支部・隊員用休憩所。
久留米は罪悪感が残るまま、休憩所へ。囃はすぐさま気づいた。
「あれ?久留米どこ行ってたの」
「…なんでもない」
あの久留米がめちゃめちゃ凹んでる。久留米は休憩所にいた御堂と彩音に聞いてみた。
「御堂・駒澤、紀柳院について詳しいんでしょ。ちょっと聞きたいことがあって…」
「なんだよ、話してみろよ」
御堂、不器用に促した。
少しして。
「おいおいそれは御法度だぞ!?久留米は眠っている鼎の仮面を無理やり外そうとしたのかよ!?」
「…うん。魔が差して…。紀柳院のうわごとですごく嫌がっていたから止めた」
「久留米さん、それはやっちゃいけないやつ。仮面の呼吸穴を塞がれたら…鼎が苦しんじゃうよ」
「お前…素顔見たかったのか?」
「わからない…。衝動的だったから。今は罪悪感でいっぱいで」
久留米がめちゃくちゃやらかした感じになっている。
御堂はピシャリと言った。
「そんなことされたら誰だって嫌がるぞ。鼎からしたらあの仮面は飾りじゃねぇ、れっきとした『身体の一部』なんだよ。
あれがないと人前にも出られないし、あいつは火傷で目も深刻なダメージを受けている。仮面は目の保護も兼ねてんの。そんだけあいつからしたら大事なの」
久留米はさらにずーんと来たようだ。軽率だった。何をしてるんだ私は。
彩音は久留米に一声かけた。
「鼎は眠っていたからたぶん大丈夫だと思うけど…。無理やり外されるのが嫌だったんだと思うの。ものすごく抵抗するから」
そんなこと…知らなかった。
本部ではネオメギドについて宇崎から隊員達が聞いていた。
「ちょ!?きりゅさんがネオメギドで負傷したってマジですか!?」
時任、大袈裟なリアクション。宇崎は時任を落ち着かせる。
「時任、落ち着け。現に鼎はネオメギド相手に2度負傷している。あの発動が使える鼎ですらこの状況…。能力を使っても鼎はまだ使いこなせていないからな…。毎回発現しているわけじゃない」
「暁くんは?」
「晴斗は逆に力が増してるらしいんだ。晴斗のブレードと鼎のブレード、2つを使った時だけあり得ない力が出てる」
「きりゅさんが心配だよー」
宇崎は安心させようとする。
「敵のターゲットは晴斗と鼎だが、鼎に対しては殺意剥き出しってのが引っ掛かる。
だから今支部にいる本部隊員全員、鼎が回復次第本部に帰ってくるから大丈夫だ」
「私達のネオメギド攻略法、今のところないから苦戦してるのホントなの?」
「晴斗と鼎にばかり頼っていられないもんな。今、ゼノクで長官達が対抗措置をしてるところだよ」
対抗措置?
ゼノク・司令室。
蔦沼達3人はネオメギドについて協議してる。
「紀柳院が執拗に狙われてる。支部には伝えておいたけど、彼女の回復次第本部へ戻るように支部にいる本部隊員へは伝達済みです」
西澤が蔦沼に報告。蔦沼はこのネオメギドという強敵について悩んでいた。
「暁と紀柳院に頼っていたところはあったが、そろそろ脱却しないとね…。
現に紀柳院は執拗に狙われた上に、発動虚しく負傷しているからなぁ。相手は紀柳院を殺しに来ている…どうしたら」
「長官、戦闘データ出ました」
南は蔦沼にネオメギド戦のデータを見せる。蔦沼はデータ資料を受けとる。
「暁と紀柳院以外だと、鶴屋の活躍が際立つな…。月島も。護符と音撃…どちらも広範囲攻撃可能なものだね」
「敵は待ちませんよ!?対策どうするんですか」
「宇崎・小田原・北川とリモート会議する必要あるな…」
「会議ですか!?」
西澤、「そんなにもヤバいの?」といったリアクション。
「そ、緊急会議。異空間にいる鐡の報告次第では、対策は変わるかもしれないけど…」
「鐡は何やってるんだろうな」
異空間・元老院の館…の庭。鐡は鳶旺(えんおう)がない隙に庭へ侵入。
不気味な木が1本生えている以外は、イングリッシュガーデンっぽい。
鐡は木を見た。低い木だな…。木には禍々しい色の巨大な実が成っている。
これがネオメギドの元となる実か…。ひとつ、貰っていくぜ。
鐡は実をひとつ、頂戴した。不思議と実をもいでも何も起こらない。
この実…というかこの木、何かしらあるな。鐡は異空間を出た。
第40話(下)へ続く。