Cさんは心霊動画を見るのが好きで、昼夜問わず暇さえあれば動画サイトで心霊動画を楽しむのが日課だったという。
その話を友人にすると、『そんなのを見ているといつか本物が来るよ』と警告されたのだが、当のCさんは心霊動画を見るのは好きであるが霊を信じているかと聞かれれば、そうでもないというような人だったので『はははっ。まさか』といった反応を返すだけだった。
それから暫く経ったある日の夜。
友人の警告などすっかり忘れていた彼がいつも通りPCで心霊動画を見ていると、音声に紛れて泣き声のような呻き声のような声が微かに聞こえてきた。
何処から聞こえてきているのかは分からなかったが、アパートに住んでいたCさんは何処かの部屋で子供が泣いているのだろうと特に気にもとめなかった。
『う〜う〜』
しかし、その声はいつまでも止む気配が無いどころか段々と大きくなっていく。
更に声が大きくなるにつれ、明瞭に聞こえるようになったのだが、ふとCさんはある事に気付いた。
あれ?これ子供の泣き声じゃない?
しかも、声が近付いている?
いつまで子供を泣かせておくんだと思いつつ放置していたCさんも、流石に気になり始め部屋の中を見回す。
当然、一人暮らしの彼の部屋には誰も居ない。
『う〜う〜う〜う〜う〜』
しかし、部屋中に響いている声は更に大きくなっていく。
不気味に思いながらも視線を段々と移していった。
玄関、台所、何かしらの死角になりそうな物影…。
狭い室内は、あっという間に目で確認する事が出来た。
そして最後に窓に目をやる。
『!?』
驚きのあまり声が出なかった。
外灯の明かりが射し込んでいる薄暗い室内を、覗き込んでいる人影が其処にはあった。
カーテンをしていたので姿はハッキリと見えないが、その人影は両手を付いて窓ガラスに貼り付いているように見える。
よりクリアになった先程から聞こえている声も、どうやらこの人影の仕業のようだ。
しかし、先にも云ったようにCさんは心霊動画は好きだが霊は信じていないという人だ。
驚きはしたものの、すぐに誰かの悪戯だろうと判断すると、文句でも云ってやろうとカーテンを思い切り開いた。
だが、其処には誰も居なかった。
そもそもCさんの部屋には人が立てるようなベランダは無く、隣の部屋とやや離れているので隣人が覗く事は出来ない上に、彼の部屋自体も二階にある為、誰かが外からそういった悪戯は出来ない筈だ。
大体、カーテンを開けた瞬間に隠れるなんて芸当は普通の人間に出来るわけがない。
だとしたら、あの人影は一体?
いつの間にか喧しかった声が止んでいる。
急に背筋が寒くなったCさんは一目散に家を飛び出し、漫画喫茶で一夜を過ごしたそうだ。
その日以降、彼が心霊動画を見る事は無くなったという。
2017-8-13 19:06
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