「この最悪の結末は,あんたたち自身が招いたんだ.
沼田家は,壊れるべくして壊れたんだよ」
先生によって仕掛けられたトラップにどれだけ引っかかったのか,その答え合わせがされた今回.
その罠にことごとく引っかかって自滅していった沼田家.
先生がいくつも用意していた回避ルートを無視して,自らバッドエンドへと突き進んできたことで,彼らの本来の姿が見えてきました.
「まだメンツ.まだ遠慮.まだ演技.まだ変わらない」
ある意味,先生が沼田家を繋いで,支えていた存在なのかもしれないとも思いました.
家族や周囲には仮面をかぶっていましたが,先生に対してはそれぞれが本来の姿を見せていましたからね.
何とか形を成していた家族は,先生が出て行くことで音を立てて崩壊していきました.
相手を思いやることなく,それぞれが自分の立場で自分の意見を主張する,まさに自分本位であることが露呈しました.
ずっとため込んでいた本音をここぞとばかりに吐き出す沼田家.
その光景は,異様というよりもあまりにも滑稽で.
清々しさすら感じたのは,ようやく本来の姿を見れたからなのかもしれません.
現実に直面して,すべてを吐き出した沼田家の人たちは,執着していた見えや肩書きの象徴を壊すことで,そこから解放されようとしているように見えました.
すべてがどうでもよくなった,その状態の表れかもしれませんが,何も失うものはなくなった沼田家が今度はどう立ち上がっていくか.
ただ崩壊させるのが目的ではなく,本音でぶつかり合う機会を与えて,本来あるべき家族の姿に導くことが先生の目的だったのではないでしょうか.
人がそう簡単に変われないのは翌日の沼田家の人たちの態度を見れば分かりますが,どん底だからこそ見えるものがあるのだと思います.
ふとした瞬間に先生の言葉が甦って,それがきっかけになってくれるのではないかと,僅かな希望も持っています.
茂之くんにあのタイミングで「お前が家族を救え」と伝えたこと.
最後に「やっぱりお前は駄目駄目な生徒だったよ」と言い残したこと.
期待していた分の失望感は確かにあったでしょうが,茂之くんの弱さも,そして家族が崩壊することも見越しての言葉だった気がします.
だからこそ,最後に発破をかけるような言葉を茂之くんに残したのではないでしょうか.
自分で考えて行動しろという,先生からの最後の試練だったように感じました.
先生がいなくなって,崩壊した家族を前に茂之くんがどういう行動をとるか,僅かな希望を先生は託したのかもしれません.
そして,慎一くんが学校辞めることも,この崩壊を見据えていたから賭けを持ちかけたのかもしれません.
先生の意図はまだ見えてきませんが,すべてを見透かしているのは確かでしょうね.
そして,沼田家を出て行った先生.
未だに謎の多い立花真希.
2人の関係も明らかになりましたね.
「色々ありがとう」
「これからどこへ行くんですか?」
「お元気で.
また会えますよね?
田子先生」
「俺は吉本荒野だ」
「私には…中学校にいたころからずっと田子雄大先生ですよ」
「さようなら」
あの雲ひとつない青空に先生が溶けて消えてしまうのではないかと思うほど,澄みきった青空が寂しさを滲ませていました.
彼女が先生に言った「さようなら」.
慎一くんに言った「バイバイ」とはまた違った,すべてを悟ったような「さようなら」に聞こえました.
先生と彼女の関係が教師と教え子であったこと.
彼女は,先生の計画も覚悟も本当の姿も知っている,唯一の理解者だったのですね.
先生と彼女が抱える過去が明らかになったとき,ようやくすべての計画が明らかになる.
「立花家には女の子はいなかった」
この言葉の意味も,そして彼女が調べた先生の情報の真実も明らかになりそうです.
次回予告からですが,名前だけでなく“吉本荒野”の言葉すらもコピーしていた先生.
しかし,同じ言葉であっても使い方や言う相手が違うだけで意味が変わってくるのが分かります.
そして,真田くんに対して言っていた言葉を茂之くんに対しても言っていた先生は,吉本荒野と名乗りながらも田子雄大として接していた瞬間もあったのかなと思いました.
突拍子もない言動をする先生で,何が嘘で何が真実か分かりませんが,茂之くんに対して言っていた言葉に偽りはなかったのかもしれません.
吉本荒野としての人生が始まった,8年前の真実.
この物語の鍵を握る“真田宗多”という少年.
すべては彼から始まったストーリー.
何を憎み,何を裁こうとしているか.
何を悔いて,何を償おうとしているか.
先生が抱えている闇がようやく明らかになりそうです.
しかし,過去が明らかになっても先生が過去から解放される日は来ないのかもしれません.
沼田家に再生の道が選択肢のひとつとして用意されていたとしても,先生はこれからも過去と向き合いながら生きていくしかないのでしょうね.
あと2話.
どう着地するか,心して見たいと思います.