善か悪か.
敵か味方か.
そういうのでは判断できない,ましてや“不気味”という一言では片づけられない人物だと思いました.
家庭教師という枠からはみ出し,言動が常軌を逸し,何が目的なのか分からない.
世の中の常識という物差しで測るのなら,異質な存在であるのは確か.
しかし,言っていることは誰よりも正論で,一番まともなのかもしれないとも思いました.
人間関係が希薄になり,家族でさえも“家族ごっこ”をしている状態.
人が抱える心の闇だけでなく,現代社会が抱える闇をも見抜く洞察力.
どんなに取り繕っても,その矛盾点をズバリ見抜く彼には本来の姿が見えているのかもしれません.
沼田家にとって一番関わり合いたくない厄介な人物が家庭教師として来たわけですね.
今回母と一緒に見ていたのですが,冒頭の沈黙のシーンのように2人とも黙って食い入るように見ていました.
気がついたら終わっていた,そんな感覚.
まばたきするのも惜しいぐらい,荒野先生の一挙一動に引き込まれていました.
まさにヒリヒリ感を味わいながら見るドラマでした.
ふっと笑える瞬間もあって,ただ不気味というキャラクターではない,荒野先生の愛らしさも垣間見ることができました.
あと,毎回登場するというサウナシーン.
いいねえ(笑)
お父さんと契約書を押しつけ合う場面が面白くて,コミカルな部分がほどよく差し込まれているので緩急はもちろん,気を張らずに見れました.
とんでもない言動に目がいってしまいますが,もしかしたら本当は優しい人?と早くも翻弄されています.
後半の茂之くんを組み敷いた場面での言葉.
「こんな世界にも希望はある.確かにある.
でもな.
現実はお前が思っているより,よっぽど残酷なんだ.
だから.強くなれ」
何を思い出していたのか,見ていて胸が締めつけられる表情でした.
茂之くんを騙して学校へ行かせた理由.
真意は分からないけれど,辛い現実から逃げて閉じこもっていては真実は見えない.機械越しからではもっと真実は見えない.
自分の力で立ち上がって,自分の目で見なければ何も分かりはしないのだと.
残酷な現実に立ち向かうために,あえて逆撫でするようなことを言って,俺に向かってこいと,その気持ちで向かっていけと,壊すことで変えようとしているのかな.
先生の真意とは別に,強いメッセージが含まれているように感じました.
まだ1話.
この段階で分かることなんてないのかもしれないし,予測不可能な先生なので,私たちの考えている上を行っているのかもしれませんが,翔くんが雑誌のインタビューで応えていた「強い信念」「揺るがない強い意志」があるのは感じることができました.
前作で描かれることのなかった吉本の過去も今回は描かれるということでそこも期待.
ドラマ冒頭の森でのシーン.
字幕ありで見てみると,(雄大の叫び声)とありました.
吉本荒野は一体何者なのか,過去に何があったのか,この謎が回を追うごとに解明されていくと,突拍子もない言動の理由も明らかになっていきそうです.
「人,殺したことあんだよ」
衝撃の一言からのエンディング.
鳥肌が立ちました.
楽曲とドラマの雰囲気がピッタリでしたね.
はやくCDを手にして,じっくり歌詞を見てみたいです.
予告でも「殺したよ」と言っていましたが,その言葉の真意とは.
本当に人を殺したことがあるのか,それとも殺したのは“自分自身”なのか.
今後の展開がますます気になりました.
本当にあっという間の90分で,見応えのある内容に大満足!
いまだに余韻に浸っております.
教えるというのは見捨てないこと,教えようとする側があきらめないこと,翔くんの言葉の通り,荒野先生は茂之くんと向き合い続けるのだと思います.
そして,翔くんもまた吉本荒野という人物と向き合っていくのだと思いました.
荒野先生,翔くんに出会えて良かったね.