「…………へぇ、太陽に月、星に魔術師のカードか。」
「素敵だねぇ。」
「絵柄がキレイ、ですわね。」
「ありがとうございます。
…………本来ならば人に見せるようなものではないのですが…………。」
「………まあ、そうだよね!?」
「ごめんね、無理言って。」
「………すみません、キレイとか言って…………。」
「………あ、いえ。それはとても嬉しいのですが……………。」
そこまで言いかけた時、4枚のカードが共鳴した。
「ど、どうしたの?」
「………………敵が……………。」
「………え、嘘!?」
「やっぱり、マグノリア王女を狙って…………?」
「と、とにかく家から離れない?」
「いや、これはまだ家から遠いところにいるようですが…………。」
「カードに探知能力でもあるの?凄いね!」
「…………………感心している場合!?」
「もう、勇花ちゃんは!」
「ご、ごめんごめん!とりあえず、家を出ようか!」
バタバタと4人は勇花の家を後にした。
「………………ったく、だりぃな…………。ホントにマグノリア王女は人間界にいるのか?」
かったるい様子でフレデリックは肩をならしながら、街を歩いていた。
「…………あー、めんどくせー…………。」
一般人と何ら変わりない服装をしているため、
誰しもがフレデリックがフォルトゥナ王国からやってきたとは思えなかった。
「………あ?」
「………段々反応が近くなってきました…………。」
「じゃあ、この近辺にいるってこと?」
「人目の多いところで戦闘とかはマジ勘弁して欲しいんだけど…………。」
「どうしましょう……………。」
「………あああああああああああああああああああ!?」
マグノリアの姿を見つけた途端、フレデリックは大声を出した。
それにマグノリアは気づいた。
「………あ、あの方…………!」
「何かいかにも目つき悪そうな感じの奴…………。」
「まさか、あいつが………。」
「とりあえず、人目のつかないところへ!!」
続く。
「……じゃあ、ここがマグノリア王女の部屋ね。」
「本当に綺麗なお部屋ですわね。………使ってもよろしいんですの?」
「もちろん。ここ元々死んだおばあちゃんの部屋だったから、使ってくれるとおばあちゃんも喜んでくれるし。」
「……………そうでしたか。」
「とりあえず、服とかについては智恵ちゃんのママが用意してくれるから。」
「えっへん。私のママはアパレルショップの店長でデザイナーだからね。」
「ええ、センスも素敵ですから問題はありませんわね。
…………で、本題に入りましょうか。」
「本題?」
「サタトスをどうするか、ですわ。
フォルトゥナ王国の継承の儀を狙ったということは、マグノリア王女を狙っているも当然。
遅かれ早かれ、人間界の日本という場所を特定して私達の家に襲撃を仕掛ける危険性もありますわ。」
「………た、確かに。」
「フォルトゥナ王国で王女の姿が見えなかったら、人間界にやってくるよね。」
「マグノリア王女、対策は何かありませんの?」
「………先代の王であった父はプリキュアと呼ばれる方々の力を借りて、
サタトスを封印したと、執事長が仰っていました。」
「………プリキュア?」
「はい。フォルトゥナ王国に伝わるタロットにちなんで最大で20人いたそうですわ。
サタトスはフォルトゥナ王国の言葉で悪魔を意味しますの。」
「…………悪魔と死神を除いて20人ってことか。」
「何で?」
「だって悪魔と死神ってマイナスなイメージが強いじゃない。」
「ええ、確かに。ちなみに死神のことをフォルトゥナ王国ではモルテといいます。」
「………………じゃあ、私達も20人近くのプリキュアを探さなくちゃならないの?」
「最大で20人だって話でしょ。
最小でも3人ぐらいじゃない。」
「………あ、なる。」
「…………ちなみにカードの大半はフォルトゥナ王国にありますが、4枚だけ城にありました。」
「見てもいい?」
「ええ、もちろんです。」
そういうと、マグノリアは4枚のカードを懐から取り出した。
続く。
「……………で、これからどうするの?滞在先だって決めないといけないし。」
「そうですわね。マグノリア王女、失礼ですけど何歳ですか?」
「今年で14歳になります。」
「あー………じゃあ、マンションとか借りるのは無理だね。」
「そだね。連帯保証人いないし。」
「………私らのうちの誰かんちで預かるってことにする?」
「それが無難かな。」
「そうですわね。………で、言い出しっぺの法則として勇花ちゃんが責任持ってください。」
「えぇ、私!?」
「当たり前です。」
「そんな殺生な。智恵ちゃんや仁美ちゃんの家でもいいじゃん。」
「3人の家を転々と回るのもちょっとね。」
「………それにおば様だってこの手の話には弱いじゃないですか。」
「う………確かに年頃の女の子が1人、困っていたら手を差し伸べるけど………。」
「決まりですわね。」
「じゃあ、そういうことで。」
「…………もう、2人とも…………。」
「とりあえず、おば様に説明しましょう。」
「善は急げって奴で。」
「…………というわけなんです。おば様、しばらくの間、マグノリアさんを預かってはくれませんか?」
「まぁ、大変だったわね。苦労したでしょう。
フォルトゥナ王国っていう小さい国からやってきて…………。」
櫻井家で美月は勇花達の話を真剣に聞いた。
「うちでよければ住むといいわ。」
「ありがとうございます、美月さん。何とお礼を言えばいいのか…………。」
勇花達は美月に、フォルトゥナ王国がクーデターに遭い、亡命してきたという話をした。
実際には闇の魔王が国を混乱と破滅に追い込んだのだが、あながち嘘を言っているわけではない。
騎士団との連絡が取れないのは事実だし、当面は安定した生活を送る必要がある。
「ちょうどお客様用の部屋が1つあるし、大丈夫でしょう。
日本は治安が良いから、ゆっくり休んで頂戴。」
「………ありがとうございます。重ね重ね、お礼を申し上げます。
フォルトゥナ王国は櫻井家への恩義を忘れませんわ。」
「…………まったく勇花もマグノリアちゃんを見習いなさい。こんな丁寧なお礼を言うんだから。」
「余計なお世話よ!」
続く。
「あ、貴女達は…………?」
「私、櫻井勇花って言います。こっちは二ノ宮智恵、篠場仁美。」
「よろしく。………えっとお名前、言える?」
「………滅茶苦茶警戒されていますね。」
「それは知らない人間が自分を介抱していたら警戒するのは無理ないって。
………でも安心して。」
「日本は治安がそれなりに良いから貴女を襲う人はいませんよ。………多分。」
3人の話にマグノリアは緊張が解けたのか、ホッとした様子を見せた。
「私はフォルトゥナ王国のマグノリアと申します。
介抱していただき、ありがとうございました。」
「いやいや、脈計っただけだし………。」
「気を失っていたけど大丈夫?」
「お腹とか空いていません?」
「お腹……ですか?」
仁美に聞かれたと同時にマグノリアのお腹の虫が鳴った。
「うちのお母さんが作ったサンドウィッチでよければ、どうぞ。」
「ありがとうございます。………頂きます!」
マグノリアは丁寧なお辞儀をするとサンドウィッチを口にした。
「美味しい………。」
食事が終わったのを見計らって、3人はマグノリアに気になることを聞きだした。
「ねぇ、マグノリアさん。」
「何でここに斃れていたの?」
「フォルトゥナ王国って聞いたことありませんが………。」
「フォルトゥナ王国は人間界の裏側にある異世界に存在する王国です。
私は継承の儀で女王になる予定でしたが、突如としてサタトスが現れて
王国を混乱に招いたのです。」
「………ファンタジー小説とかに出てくる、王国滅亡パターン?」
「じゃあ、マグノリアさんって王女様なんだ。」
「そのサタトスは悪い奴なのですか?」
「………ええ。そのあまりの凶暴さに昔、父が封印したと聞きましたが。」
「解けちゃったんだ。」
「めでたい時にとんでもないものが来ちゃったね。」
「………大変でしたね。」
「………はい。あの、お三方は私の話を信じてくれるのですか?
人間界で生きている者達はこういう話を信じないのかと思っていましたが。」
「いやだってさ。……真剣に話しているのに冗談ですって顔をしていないじゃん。」
「そうそう。ここで倒れていたのも事実だし。」
「相当ヤバかったのですね。」
「………お三方は優しいのですね。」
「………あ、でもさ。マグノリア王女がここにいるってことはフォルトゥナ王国、どうなっちゃったの?」
「騎士団の団長が人間界に通じるゲートを用意してくださったのです。
私は最後まで共に戦おうとしたのですが、皆さんが私だけでも人間界に逃げろと仰って………。」
「……では今どうなっているのかわからないのですね。」
「…………はい。」
続く。
…………そしてそれから数日後。地球、日本都内某所。
櫻井家。
「………勇花。いつまで寝ているの?もう朝よ!?」
母親である美月の声に勇花は一斉に目を覚ました。
「………え、嘘もうこんな時間!?」
「もうちょっと寝ていたい…………。」
「いい加減にしなさい。貴女、今日から中学2年生でしょ!?」
「お母さんのケチ!」
「ケチで結構。早く朝ご飯を食べてしまいなさい。」
「はーい。」
「今日から中学2年生って言う自覚がない…………。」
「そんなこと言わないの。来年は受験生でしょ?」
「げ、そうだった。」
朝食を食べた勇花は私立中学である仙道中学校へと向かった。
「………あ、智恵ちゃん、仁美ちゃん、おはよう!」
「おはよう、勇花!」
「おはようございます、勇花ちゃん。」
二ノ宮智恵と篠場仁美の2人と十字路で待ち合わせをして、勇花は一緒に歩いた。
「はぁ…………もう中学2年生か。早いね。」
「そのうち進路希望も出されると思うよ。」
「そうですね。………でもまだ将来の夢が決まっていませんし。」
「………そうだよねぇ。」
住宅街を通り抜け、公園に差し掛かった時、3人は園内に人が倒れているのを見つけた。
「………ねえ、智恵ちゃん、仁美ちゃん。」
「………何?………って人が倒れているよ!?」
「ちょっと行ってみましょう!」
「うん!」
公演に入った3人はマグノリア王女を視界に入れると、すぐに体を起こした。
「何か衣裳が古い時代の王様みたいな感じだね。」
「………うん、あ。心臓が動いている。死んでいるってわけじゃなさそう。」
「学校には連絡を入れておきますね。人助けをしますって。」
「お願い。」
仁美が学校に連絡をし、智恵は脈を計った。
「脈は安定しているみたい。」
「意識を失っているだけ?」
「そうみたい。でもこの様子だと…………すぐに目を覚ましそう。」
「う…………ううん………………。」
マグノリアが目を覚ますと、そこには3人の少女がいた。
続く。