遊具のない公園のような広場にいて広場を囲うように背の高い木が繁っている。出入口は一ヶ所でその対角の場所に10段以内の階段があり、その先に大きな両扉がある。なんとなくくすんだ朱色だと思った。ただ扉のすぐそばまで木が繁っているので扉だけぽつんとそこにある印象がある。多分奥には建物もあるだろうが木が邪魔で認識できない。
広場に優しそうなおばあさんがいて毎日ここにきては階段の掃除を行っているらしい。どうやらこの扉の先には神様がいて白いお姿をしているらしい。そのおばあさんはその神様が大好きでこうやって毎日掃除にきているそうで、一度だけお会いしたことがあるらしい。それからずっとだとニコニコしながら話してくれた。
別日(な気がした)、違うおばあさんと一緒に広場にきた。少し認知症が始まった方でそばにいないといけないので私が付き添いでここにきた。あのにこやかなおばあさんもいて「こんにちは」と挨拶をくれた。
おばあさんはゆっくり階段を登って扉を押した。扉はカギはとくにかかっておらず、誰でも入れるようでにこやかなおばあさんも時々中の掃除のために入ったりしているらしい。
初めて中に入ってぐるりと見渡した。確かにほこりっぽさは感じない。ただまぁ古い建物だなというのは否めない。木製の建物で大きな扉に合わせて天井が高い。床も板が敷かれているだけで土足でも構わないらしい。左手には板の引戸があり開けられたままだ。右手側は今は使っていないのもがとりあえず積み重なっている。ずっと奥、ぎりぎり開けた扉の光が届く位置に障子の貼られた襖がある。障子はとても綺麗だった気がする。
そう室内を見渡しているうちにいつの間にかおばあさんがどこかへ行ってしまっていた。慌てて探しに行こうとしたが中をずかすが入っていいのか分からずその場で「どこですかー!?」と声をかけていた。多分空いているこの左側の部屋の中へ行ってしまったとは思うけど…とちらちら中を覗いても物が四隅に置かれ光もないので奥は見えづらい。
ふと視線を感じて左の部屋から視線を外し奥を見る。綺麗な障子が貼られた襖が先ほどはぴったりしまっていたのに3/1開いている。そこから白い着物をきた白い腕が出ていた。光で中も見える。白い顔に白い烏帽子。あ、神様だと思った。
驚いて一瞬何かわからなくて恐怖し、思い当たった「神様」というものにおばあさん達の顔が浮かんで恐怖は喜びになる。いた!神様はいた!
すぐおばあさんに知らせようと声をかける。「◯◯さん!(多分、まな、まみのどちらか)どこですか!?」返事がない変わりに神様が腕を伸ばしたまま手首を左の方へ降る。おばあさんの場所がわかっているようだった。そちらへ目を向けてもやはり見えない。もう一度神様に向き合うと襖はすでにぴったり閉じられていた。
探しに行かなきゃと思うがでも同時におばあさんは神様のところへいったんだとも思っている自分がいる。神様もしっかり場所を指差したりはしなかった。もういいと手を振ったとも見える。
なんとなく神様のいる襖へゆっくり進んだ。半分くらい進んだところで右側に積み重なった物たちがぴきぴき壊れていっていた。神様のいる奥から扉に向かってゆっくりと。あ、壊れようとしている。と思ったら体は扉に向かってゆっくり引き返していた。
が、扉から誰かが入ってくるのが見えてとっさに扉の影に入った。女性だ。女性は中に入り私がそうしたようにぐるりと室内を見渡してゆっくり中へ入っていった。その隙に私は扉をくぐって外へ出た。
怖いとか逃げ出したいとかまったく感じず、ただただあの認知症のおばあさんは神様のところに行きたくて今日一緒にいったんだな、と思った。
広場を出ようと出入口に向かう途中、黒い犬を3匹連れた黒い人とすれ違った。犬は興奮しているのかヒモをぐんぐん引っ張る。なんだか犬も含め一緒にいる人も怖いと感じ、足早に広場を後にした。広場を出る前、ふと振り返ると犬をつれた人はあの扉の中へ入ろうとしていた。
後日、部屋にいたあの女性はあとからきた犬をつれた黒い人に殺されたらしい。犬たちに襲わせる手口でこれの数日前から似た事件があったらしい。なんとなく私は神様が助けてくれたのだと思った。おばあさんを連れていったお礼だろうか、それともたまたまだろうか。結局建物は崩壊していなかったのを見るに、わざと壊れる演出をしてこの部屋から出ろと言われているようにも感じた。あのにこやかなおばあさんもこの時いなくてよかったと思った。
この後も続きのような別物のようなものを見たけど曖昧なので割愛。
2022.2.16