裁判を次の日に控えた夜。
久しぶりに鷹さんから電話があった。
「これが最後の電話、かな。」
「なんか、濃かったな、この半年は。」
もう、電話があった時点で泣けてしまって
泣き声を押し殺す相槌しか打てなかった。
「しばらく、こんな綺麗な星空を見ることもできなくなるんだなー」
「…そんなセンチメンタルなこと、言えるんですね…」
「やっと話したと思ったら、何だよ、その返しは。」
いつもの用に笑う鷹さんにつられて、私も思わず笑う。
「…お前の誕生日、祝ってやれなくてごめん。…色々ありがとな。」
「頑張れよ。苦しいことは絶対ある。でも、お前は大丈夫だ。負けるなよ。」
最後の言葉みたいで、また聞いてるのが精一杯になる。
やっと言えたのは
「…鷹さんがいたから、私は幸せだった。大好きでした。」
それだけだった。
「知ってる。俺も愛してるよ。」
そう言って電話は切られた。
初めて、吐くくらい泣いた。
次の日、初めて短大を休んだ。
でも一日だけ。
ずっと落ち込んでる私を、鷹さんは望んでない。
初めて鷹さんに会ったとき褒めてくれた、笑顔で毎日を過ごそう。
いつもの笑顔でいよう。
それから数日、思いもよらぬ人から
着信があった。
“鷹さん”
着信画面を疑った。
恐る恐る電話を取る。
「ただいま。」
一番聞きたかった声がする。
「あんな最後っぽい電話したくせに、帰ってきちゃったよ。」
けたけた笑う声は、間違いなく鷹さんだった。
「な、何でですか?めっちゃ泣いたのに!涙返してください!」
訳もわからず、テンパったまま言った私に
「泣いとったんか?バカだな。」
優しい声だった。
「でも、懲役は確定だな。」
「上告して、オーナーが保釈金払ってくれたんだよ。だからここにいれる。」
オーナーは、私のバイト先の店を建てた、明らかに堅気ではない人。
見た目は本格的なヤクザだけど、店のスタッフにはすごく優しくて、私は好きだった。
オーナーは鷹さんの接客の力を認めて、別の店から鷹さんを引き抜いた張本人。
鷹さんの能力を誰よりも評価してた。
「懲役になることこと分かってて控訴したり、上告したり、なんかダサいけどな。でも、それでもう少しここにいられるんなら、俺はまだ仕事もしたいし、スタッフに仕事を教えていきたい。」
鷹さんの仕事に対する熱意は、いつも変わらない。
「空野さんで足りなくなったら、また俺が話聞いてやるよ。」
電話越しに鷹さんの笑顔が頭に浮かんだ。
でも、当たり前だけど、空野さんはそれをよく思わない。
そりゃ、彼氏よりもバイト先のスタッフの方を頼るなんて、いい気分しないことなんて分かってた。
私は、やっぱり鷹さんが好きだった。
でも空野さんだって、私のとっては大切な人。
鷹さんがいなくなった時、支えてくれたのは空野さんだった。
鷹さんと過ごした半年間に比べれば、浅い関係なのかも知れないけど、これから一緒に過ごすのは空野さん。
空野さんを裏切ることはできない。
それに、いつまでも鷹さんに甘えてたら私はまた頼りきってしまう気がした。
私は、鷹さんとの連絡を断ち切った。
その時の会話が、夢で見た
この記事の会話です。
その後、空野さんとは3年近く付き合って、人としてもすごく尊敬できたし、結婚も意識してたけど、最終的に私はなーくんを選んで、今に至ります。
もし、なーくんと出会う前に、空野さんがプロポーズしてくれてたら私は受けてたのかもしれない。
でも今は空野さんにプロポーズされなかったことを、良かったと思ってる。
一緒にいて落ち着くことも大事だけど、
一緒にいてはしゃげる相手が、私は欲しかったんだと思う。
喜怒哀楽すら、穏やかな人も良いけど
私は喜怒哀楽がハッキリしてて、私の前で大声で笑ったり、泣いたりしてくれる人が良かった。
ここらへんの好みは、多分鷹さんの影響だな…と思う。
就職してから、職場の人を信用できなくて、陰口が怖かったときも
「自分のことをよく思ってないやつなんて、無限にいると思え。みんな敵だと思えばいい。でもな、自分だけは自分の味方なんだよ。」
「誰を信じられなくても、自分だけ信じてやれ。自分には優しくしてやれ。そしたらちょっとは心に余裕が生まれる。少しずつ周りが見えてくる。その時、信用できるやつを見つけろ。周りが見えないときは、下手に動くな。」
鷹さんのこの言葉を思い出して、冷静になれた。
完全に、ほぼ敵だったけどね(笑)
でも、その中で、信頼できる人も見付けられた。
「でも今のお前は自分に優しいんじゃなくて、自分に甘いんだよ。それは少しずつ直すように!」
そんなことも言われたよなーって思い出すと、なんだか笑える。
今は笑顔で話せる、大切な思い出です。
長々と、最後まで読んでくれた方、
本当にありがとうございます。
まさかこんな長くなるとは、自分でも思ってなかった(笑)
さてさて。
これから、また、ただのダイエッターに戻ります(笑)
変わらず仲良くしてもらえたら嬉しいです(*^ω^)
BookMark*購読
最後まできちんと読ませて頂きました(^_^)
鷹さんもきっとがぁさまと同じ気持ちだったと思いますよ。お二人はほんとに、お互いのことを想い合っていたんですね。きゅんきゅんしつつ、でも少し泣いてしまいました。
お話きけて、よかったです。
今の彼をもっと大切にしたいなって気持ちが増しました。(笑)
がぁさまがこれからなーくんさんと、末永く幸せになれることを、心からお祈りします。
がぁさんにとっても鷹さんにとっても、
ずっと一緒にいるわけではなくても、
お互いに大切な存在なのだと思いました。
ちょっと泣きそうになりました
がぁさんがずっと一緒にいると決めたなーくんさんとこれからもずっと幸せに過ごしてほしいです
影ながら祈ります゚